パーキンソン病で筋力が落ちる原因とは?病気の進行だけではない5つの理由

パーキンソン病のある方のなかには、「以前より立ち上がりにくくなった」「脚に力が入らない」「歩くとすぐに疲れる」と感じる方も少なくありません。こうした変化があると、病気が進行して筋力が落ちたのではないかと不安になることもあるでしょう。
しかし、パーキンソン病で感じる「力が入らない」という症状は、筋肉そのものの筋力低下だけが原因とは限りません。無動や動作緩慢によって素早く力を出しにくい場合や、筋強剛によって身体が重く感じる場合もあります。
また、歩行障害や転倒への不安から活動量が減ると、筋肉を使わないことで起こる廃用性筋力低下につながります。さらに、加齢によるサルコペニア、低栄養、体重減少などが重なることで、実際に筋肉量や筋力が低下する可能性もあります。
大切なのは、筋力が落ちたように感じる原因を「パーキンソン病の進行」と決めつけないことです。原因によって必要な運動や対策は異なるため、身体の動かし方、活動量、栄養状態などを総合的に確認する必要があります。
この記事では、パーキンソン病で筋力が落ちる5つの理由と、筋力低下と無動・筋強剛の違い、気づきやすいサイン、予防のための基本的な対策について、わかりやすく解説します。
パーキンソン病で感じる「力が入らない」は筋力低下とは限らない
パーキンソン病のある方が感じる「力が入らない」「身体が重い」という症状は、筋肉そのものの筋力低下だけが原因とは限りません。無動・動作緩慢や筋強剛によって、動き始めにくい、素早く力を出しにくい、身体を滑らかに動かせない場合もあります。これらは同時に起こることもあるため、症状の原因を分けて考えることが大切です。
筋力低下は筋肉が発揮できる力そのものが弱い状態
筋力低下とは、物を持つ、椅子から立ち上がる、階段を上るといった場面で、筋肉が発揮できる最大の力が弱くなった状態です。パーキンソン病では、活動量の減少、加齢、サルコペニア、低栄養などが重なることで、実際に筋力が低下することがあります。下肢筋力の低下は、歩行や立ち上がりなどの生活動作にも影響します。
無動・動作緩慢は力を素早く大きく出しにくい状態
無動・動作緩慢は、筋肉の力が必ずしも失われているわけではなく、動作を始めたり、十分な速さと大きさで力を発揮したりすることが難しい状態です。そのため、歩き始め、立ち上がり、寝返りなどで「力が出ない」と感じることがあります。パーキンソン病では、筋力と動作速度の両方が低下し、筋パワーが落ちる場合があります。
筋強剛は身体がこわばり動作が重く感じる状態
筋強剛とは、筋肉の緊張が高まり、関節を動かしたときに抵抗を感じる症状です。身体がこわばることで動作に余分な努力が必要となり、「腕や脚が重い」「力を入れにくい」と感じることがあります。ただし、筋強剛と本当の筋力低下は別の問題です。自己判断せず、筋力・動作速度・筋肉のこわばりを総合的に評価する必要があります。
パーキンソン病で筋力が落ちる5つの理由

パーキンソン病の筋力低下には、病気の症状だけでなく、活動量、姿勢、加齢、栄養状態など複数の要因が関係します。一つの原因に決めつけず、生活全体を確認することが大切です。
①脳から筋肉への指令が変化し、十分な力を発揮しにくい
パーキンソン病では、筋肉そのものが弱くなくても、脳からの運動指令の変化によって、力を素早く立ち上げにくくなることがあります。そのため、歩き始めや立ち上がりで「力が入らない」と感じる場合があります。
②無動や歩行障害で活動量が減り、廃用性筋力低下が起こる
無動、小刻み歩行、すくみ足などで外出や運動が減ると、筋肉を使う機会も少なくなります。パーキンソン病のある方は、同年代の人より身体活動量が少ないとの報告があり、活動不足が続くと筋力低下につながります。
③筋強剛や姿勢の変化で筋肉を効率よく使えない
筋強剛や前かがみ姿勢があると関節の動きが小さくなり、同じ動作にも余分な力が必要です。その結果、身体が重い、疲れやすい、筋力が落ちたように感じることがあります。
④加齢とサルコペニアで筋肉量・筋力が低下する
加齢に活動量の低下が重なると、筋肉量と筋力が減少するサルコペニアを併存することがあります。サルコペニアが加わると、歩行や立ち上がり、バランス能力がさらに低下しやすくなります。
⑤低栄養や体重減少によって筋肉を維持しにくい
食欲低下、嚥下障害、食事量の減少などで、エネルギーやたんぱく質が不足すると筋肉を維持しにくくなります。意図しない体重減少が続く場合は、低栄養や別の病気も考え、早めに主治医へ相談しましょう。

パーキンソン病の筋力低下に気づきやすいサイン
パーキンソン病による筋力低下は、日常生活のちょっとした変化から気づくことがあります。ただし、無動・動作緩慢、筋強剛、バランス障害でも似た変化が起こるため、一つの症状だけで判断せず、以前との違いを確認することが大切です。パーキンソン病では筋力や筋パワーの低下が、歩行速度や転倒と関係することも報告されています。
椅子から立ち上がるときに手を使うようになった
以前は手を使わずに立てたのに、肘掛けや太ももを押すようになった場合は、太ももやお尻の筋力低下が考えられます。椅子が低いほど立ち上がりは難しくなります。
階段や坂道を上ることが難しくなった
階段や坂道では、平地歩行よりも下肢の筋力が必要です。手すりにつかまる、途中で休む回数が増えた場合は、筋力や持久力が低下している可能性があります。
歩幅が狭くなり、長い距離を歩けなくなった
歩幅の減少はパーキンソン病の動作緩慢でも起こりますが、下肢筋力や筋パワーの低下が重なると、歩行速度や移動距離も低下しやすくなります。
荷物やペットボトルを持ちにくくなった
買い物袋を持てない、ペットボトルのふたを開けにくいといった変化は、握力や上肢筋力の低下に気づくきっかけになります。痛みや手指の動かしにくさが影響する場合もあります。
転倒やふらつきが増えた
筋力や筋パワーが低下すると、姿勢を立て直す力が弱くなります。パーキンソン病の姿勢保持障害も重なるため、転倒が増えた場合は、筋力・歩行・バランスを専門家に評価してもらいましょう。
筋力低下とパーキンソン病の症状を見分けるポイント
パーキンソン病で「力が入らない」と感じても、筋肉そのものの筋力低下とは限りません。無動・動作緩慢、筋強剛、薬の効果、疲労などが影響するため、症状が現れる時間帯や身体の変化を確認することが大切です。ただし、自宅で完全に見分けることは難しく、最終的には専門家による評価が必要です。
薬が効いている時間に動きやすさが変わるか
パーキンソン病治療薬のレボドパなどの薬が効いている時間帯に動きやすくなる場合は、筋力低下よりも無動や筋強剛の影響が考えられます。服薬前後の立ち上がりや歩き方を記録すると、主治医へ症状を伝えやすくなります。
休息しても力の入りにくさが続くか
一時的な疲労であれば、休息によって動きやすさが戻ることがあります。一方、休んでも椅子から立てない、荷物を持てない状態が続く場合は、実際の筋力低下や低栄養なども考える必要があります。
左右で力の入り方に大きな差があるか
パーキンソン病は左右どちらか一方から症状が始まることが多いため、動かしにくさに左右差が生じることがあります。ただし、急に片側だけ力が入らなくなった場合は、別の病気の可能性もあるため早急な受診が必要です。
体重や筋肉量も減少しているか
体重減少に加えて、腕や太ももが細くなった、衣服が緩くなった場合は、サルコペニアや低栄養による筋肉量の減少が疑われます。ただし、体重が変わらなくても筋力が低下することはあります。
握力や立ち上がり動作を専門家に評価してもらう
筋力低下を見分けるには、握力測定、椅子からの立ち上がり、歩行速度、筋肉量などを確認します。主治医や理学療法士に相談し、パーキンソン病の症状、薬の効き方、栄養状態を含めて総合的に評価してもらいましょう。
パーキンソン病の筋力低下を防ぐための基本対策

パーキンソン病の筋力低下を防ぐには、筋力トレーニングだけでなく、歩行・バランス・栄養・日常の活動量を含めて対策することが重要です。無理なく継続できる内容を選び、身体機能や症状に合わせて調整しましょう。
筋力トレーニングだけでなく日常の活動量を維持する
運動する時間だけでなく、散歩、買い物、家事、趣味などで日常的に身体を動かすことが大切です。長時間座り続けず、こまめに立つ習慣も廃用性筋力低下の予防につながります。パーキンソン病では、早期から継続的に運動へ取り組むことが推奨されています。
筋力・歩行・バランスを組み合わせて運動する
椅子からの立ち上がりやスクワットなどの筋力トレーニングに、ウォーキング、方向転換、バランス練習を組み合わせます。複数の運動を行うことで、筋力だけでなく歩行能力や姿勢を保つ力も鍛えられます。
薬が効いて動きやすい時間帯を活用する
服薬後など、身体が比較的動かしやすい時間帯に運動すると、正しい動作を行いやすくなります。薬の効き方には個人差があるため、運動する時間について主治医や理学療法士に相談しましょう。
たんぱく質と十分なエネルギーを摂取する
筋肉を維持するには、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質に加え、十分なエネルギー摂取が必要です。レボドパとの関係が気になる場合も、自己判断でたんぱく質を減らさず、医師や管理栄養士へ相談してください。
一人ひとりの原因に合わせて運動内容を調整する
筋力低下の原因は、活動不足、筋強剛、歩行障害、サルコペニア、低栄養など人によって異なります。安全で効果的に続けるためにも、筋力・歩行・バランスを評価し、自分に合った運動内容を選ぶことが大切です。
医療機関へ早めに相談したい筋力低下
パーキンソン病の筋力低下はゆっくり変化することが多いため、急激な悪化を「病気の進行」と決めつけてはいけません。次の症状は、脳卒中や神経・筋肉の病気、骨や関節の問題などが隠れている可能性があります。症状によっては、早めの受診ではなく救急要請が必要です。
急に片側の手足に力が入らなくなった
突然、左右どちらかの腕や脚に力が入らなくなった場合は、脳卒中の可能性があります。顔のゆがみや言葉の出にくさがなくても様子を見ず、速やかに救急要請してください。
短期間で立てない・歩けない状態になった
数時間から数日のうちに、立ち上がりや歩行が急に難しくなった場合は、パーキンソン病以外の病気、感染症、脱水、薬の影響なども考えられます。急激な変化は放置せず、主治医や医療機関へ連絡しましょう。
しびれ・強い痛み・ろれつの回りにくさを伴う
筋力低下にしびれやろれつの回りにくさを伴う場合は、脳卒中や一過性脳虚血発作の可能性があります。症状が一度治まっても、緊急の評価が必要です。
筋肉のやせや急激な体重減少がある
腕や太ももが細くなった、食事量が減った、意図せず体重が落ちた場合は、低栄養やサルコペニアが疑われます。嚥下障害や食欲低下も含め、医師や管理栄養士に相談しましょう。
転倒や日常生活で必要な介助が増えた
転倒が増えた、入浴や着替えに介助が必要になった場合は、筋力・歩行・バランスの再評価が必要です。主治医に相談し、理学療法士や作業療法士による評価につなげましょう。
よくある質問
必ずしも進行を意味しません。活動量の低下、加齢、サルコペニア、低栄養、薬の効き方なども影響するため、原因を総合的に確認します。
はい。筋肉量が保たれていても、脳から筋肉への指令や力を素早く出す能力の低下によって、筋力や筋パワーが落ちることがあります。
薬によって無動や筋強剛が改善し、力を出しやすくなることはあります。ただし、筋肉量の減少や廃用による筋力低下には、運動や栄養面の対策も必要です。
適切な筋力トレーニングにより、筋力や筋パワーの改善が期待できます。転倒リスクや症状に合わせて、無理のない負荷から始めましょう。適切な筋力トレーニングにより、筋力や筋パワーの改善が期待できます。転倒リスクや症状に合わせて、無理のない負荷から始めましょう。
あります。パーキンソン病は左右差を伴うことが多く、症状の強い側で筋力低下が目立つ場合があります。ただし、急に片側だけ力が入らなくなった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
まとめ
パーキンソン病で「力が入らない」と感じる原因は、筋肉量や筋力の低下だけではありません。無動・動作緩慢、筋強剛、薬の効き方などによって、力を素早く発揮しにくくなっている場合もあります。
また、活動量の低下による廃用性筋力低下に、加齢、サルコペニア、低栄養、体重減少などが重なることもあります。そのため、パーキンソン病の進行だけで判断せず、動き方や活動量、筋肉量、栄養状態を総合的に確認することが大切です。
筋力低下は、早い段階から適切な運動と生活習慣を取り入れることで、予防や改善が期待できます。筋力・歩行・バランスを組み合わせた運動を継続し、十分な栄養を摂ることが、これからも動ける時間と自分らしい生活を守ることにつながります。
参考文献・参考資料
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