パーキンソン病の固縮とは?原因・起こりやすい部位・リハビリ方法を解説

パーキンソン病では、「体がこわばる」「腕や足が動かしにくい」「寝返りや着替えに時間がかかる」といった症状がみられることがあります。その原因の一つが、筋肉の緊張が高まり、関節を動かしたときに抵抗が生じる「固縮」です。
固縮は、単に筋肉が硬くなっている状態や、肩こりのような症状とは異なります。首や肩、腕、体幹、脚などに現れ、歩幅が小さくなったり、腕を振りにくくなったり、姿勢や日常動作に影響したりすることがあります。また、症状には左右差がみられることもあり、自分では気づきにくい場合もあります。
「なぜ固縮が起こるのか」「ストレッチやマッサージで改善できるのか」「どのようなリハビリを行えばよいのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パーキンソン病における固縮の原因やメカニズム、起こりやすい部位、日常生活への影響を分かりやすく解説します。さらに、治療やリハビリ、自宅で体を動かす際の注意点についても紹介します。
パーキンソン病の固縮とは
パーキンソン病の固縮(筋固縮)は、振戦や動作緩慢などと並ぶ代表的な運動症状です。本人が力を抜いていても筋肉の緊張が続き、医師や理学療法士などが腕や脚の関節をゆっくり動かすと、動かしにくさや抵抗が感じられます。首や肩、腕、体幹、脚などに現れ、歩行や日常動作に影響することがあります。
筋肉が硬く感じるだけではない
固縮は、肩こりや運動後の筋肉痛のように、単に「筋肉が硬く感じる状態」とは異なります。関節を動かしたときの抵抗として確認される神経症状で、腕を振りにくい、寝返りをしにくい、着替えに時間がかかるなど、生活動作に影響することもあります。痛みやこわばりとして感じる方もいますが、自覚症状だけで固縮かどうかを判断することはできません。
自分では気づきにくいこともある
固縮は少しずつ現れるため、当事者が変化に慣れて気づきにくい場合があります。ご家族が「歩くときに片方の腕を振らなくなった」「寝返りや方向転換がしにくそう」「動作が以前よりぎこちない」と気づくこともあります。こうした変化は固縮以外の原因でも起こるため、気になる場合は主治医へ相談しましょう。
筋固縮と筋強剛は基本的に同じ意味
パーキンソン病の説明では、「固縮」「筋固縮」「筋強剛」という言葉が使われます。いずれも英語の「rigidity」を指し、基本的には同じ症状を意味します。以前は「固縮」が広く使われていましたが、現在の医学用語では「強剛」と表現されることもあります。当事者向けの説明では、分かりやすさから「固縮」や「筋固縮」がよく使われています。
パーキンソン病で固縮が起こる原因・メカニズム
パーキンソン病の固縮は、筋肉そのものの病気ではなく、脳が筋肉の緊張をうまく調整できなくなることで起こる神経症状です。原因を理解すると、ご本人が意識して力を抜くだけでは改善しにくい理由も分かります。
ドパミンが減少すると筋肉の緊張を調整しにくくなる
パーキンソン病では、脳の「黒質」という部分にある神経細胞が減少し、体の動きを調整するドパミンが不足します。ドパミンには、動作を始めたり、必要な力だけを使ったりするために、脳内の運動情報を整える役割があります。
ドパミンが減少すると、筋肉を適度に緊張させたり緩めたりする調整が乱れ、安静にしているときでも筋肉の緊張が続きやすくなります。これが、パーキンソン病で筋固縮が起こる主な仕組みです。

動かす筋肉と緩める筋肉の切り替えが難しくなる
体を動かすときは、ある筋肉が縮む一方で、反対側の筋肉は適度に緩む必要があります。パーキンソン病では、この切り替えが滑らかに行われにくく、反対の働きをする筋肉も同時に緊張しやすくなります。
そのため、腕や脚を曲げ伸ばししにくい、体をひねりにくい、歩くときに腕が振れないなどの変化が現れます。固縮は手足だけでなく、首や体幹にも起こることがあります。
固縮は本人が力を入れているわけではない
固縮があると、ご家族には「力を抜けていない」「緊張している」ように見えることがあります。しかし、ご本人が意識的に力を入れているわけではありません。
「もっと力を抜いて」と繰り返しても、本人の意思だけでは十分に緩められないことがあります。無理に手足を伸ばしたり急いで動かしたりせず、薬の調整やリハビリについて主治医や専門職へ相談することが大切です。
固縮の種類
パーキンソン病の固縮は、医師などがご本人の力を抜いた状態で腕や脚の関節をゆっくり動かし、そのときに感じる抵抗から確認します。代表的な現れ方として「鉛管様固縮」と「歯車様固縮」があります。これらは本人が感じ方だけで区別するものではなく、診察する側が関節を動かしたときの特徴を表した言葉です。
鉛管様固縮
鉛管様固縮とは、関節を曲げ伸ばししたときに、動かし始めから終わりまでほぼ一定の抵抗が続く状態です。硬い鉛の管を曲げるように感じられることから、この名前が付いています。
首や肩、肘、手首、股関節、膝などで確認されることがあり、ご本人は「体が重い」「動きにくい」「こわばる」と感じる場合があります。ただし、自覚症状の強さと診察で確認される固縮の程度が、必ずしも一致するとは限りません。
歯車様固縮
歯車様固縮とは、関節を動かしたときに、歯車が一段ずつ動くような小刻みで規則的な引っかかりを感じる状態です。パーキンソン病でみられる振戦が、持続する筋肉の抵抗に重なることで現れると考えられています。
鉛管様固縮と歯車様固縮のどちらがみられるかは人によって異なり、同じ方でも部位や薬の効き方によって変化することがあります。ご本人やご家族だけで判断せず、こわばりや動きにくさが気になる場合は、主治医に相談しましょう。
固縮が起こりやすい部位
パーキンソン病の固縮は、腕や脚だけでなく、首・肩・体幹など全身にみられることがあります。現れる部位や強さには個人差があり、固縮だけでなく動作緩慢や姿勢の変化が重なることで、日常生活に影響する場合もあります。
首・肩・腕
首や肩に固縮があると、振り向きにくい、肩がこる、上着を着にくいなどの変化がみられます。腕の固縮では、肘や手首を動かしにくくなり、歩くときの腕振りが小さくなることがあります。ボタンを留める、文字を書くといった細かな動作にも時間がかかる場合があります。
背中・胸・体幹
背中や胸、体幹の固縮は、姿勢や全身の動きに影響します。体をひねりにくくなるため、寝返り、起き上がり、後ろを振り向く動作や方向転換が難しくなることがあります。胸まわりの筋肉が硬くなると、深く呼吸しにくいと感じる場合もあります。
股関節・膝・足首
股関節や膝、足首まわりの固縮は、脚の動かしにくさにつながります。歩幅が小さくなる、脚を前に出しにくい、立ち上がりに時間がかかるなどの変化がみられることがあります。ただし、歩行の変化には固縮以外の症状も関係するため、自己判断は避けましょう。
固縮には左右差がみられることがある
パーキンソン病の固縮は、左右同じ強さで現れるとは限りません。片方の腕だけ振りにくい、片側だけ動かしにくいなど、症状の強い側があることも特徴です。 ご家族が左右の動きの違いに気づく場合もあります。変化が目立つときは、症状が現れる部位や時間帯を記録し、主治医やリハビリ専門職へ伝えることが大切です。
固縮によって起こりやすい生活上の困りごと
パーキンソン病の固縮が強くなると、筋肉や関節を滑らかに動かしにくくなり、これまで自然にできていた動作に時間がかかることがあります。ただし、日常生活の動きにくさには固縮だけでなく、動作緩慢や姿勢、バランスの変化なども関係します。
寝返りや起き上がりが難しくなる
首や肩、背中など体幹の固縮によって体をひねりにくくなると、寝返りやベッドからの起き上がりが難しくなります。夜間に薬の効果が弱くなると、こわばりや痛みで目が覚めることもあります。
着替えや入浴に時間がかかる
肩や腕、手指が動かしにくくなると、袖に腕を通す、ボタンを留める、靴下を履くといった着替えに時間がかかります。入浴でも、体を洗う、浴槽をまたぐなどの動作が難しくなる場合があります。転倒を防ぐため、座って着替えるなど安全な方法を選ぶことが大切です。
歩幅や腕の振りが小さくなる
腕や体幹、脚の固縮は、歩行時の腕振りや体のひねりを小さくする一因です。動作緩慢なども重なると、歩幅が小さくなり、方向転換にも時間がかかることがあります。ご家族が「片方の腕を振らなくなった」と気づく場合もあります。
肩や腰の痛みにつながることがある
筋肉の緊張が長く続いたり、前かがみなど同じ姿勢が続いたりすると、肩や腰に負担がかかり、痛みにつながることがあります。ただし、痛みには関節や神経など別の原因もあります。強い痛みや急な痛み、しびれがある場合は、固縮だけと判断せず主治医へ相談しましょう。
固縮と拘縮・痙縮・無動の違い
パーキンソン病の固縮は、拘縮・痙縮・無動と混同されることがありますが、それぞれ原因や現れ方が異なります。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| 固縮 | 本人が力を抜いていても、他者が関節を動かすと一定の抵抗が感じられる |
| 拘縮 | 筋肉や関節周囲の組織が硬くなり、関節を動かせる範囲が狭くなる |
| 痙縮 | 脳卒中などでみられ、関節を速く動かすほど抵抗が強くなりやすい |
| 無動 | 動き始めにくい、動作が遅い・小さい、途中で動きが止まりやすい |
固縮は、パーキンソン病に特徴的な神経症状の一つです。診察では、ご本人の力が抜けた状態で医師が腕や脚を動かし、動かす速さにかかわらず続く抵抗を確認します。これに対して痙縮は、関節を動かす速さによって抵抗の強さが変わる点が主な違いです。
拘縮は、長期間体を動かさないことなどにより、筋肉や関節周囲の組織が短くなったり硬くなったりして、関節の動く範囲そのものが狭くなった状態です。固縮によって動く機会が減ると、二次的に拘縮を招くことがあります。
無動は、筋肉の硬さではなく、動き始めにくい、動作が遅くなる、動きが徐々に小さくなるといった症状です。パーキンソン病では固縮と無動が同時に現れることが多く、寝返りや着替え、歩行などがさらに難しくなる場合があります。
これらはご本人やご家族だけでは見分けにくいため、動きにくさや関節の硬さが強くなった場合は、主治医やリハビリ専門職に相談しましょう。
固縮はどのように評価するのか
パーキンソン病の固縮は、問診や身体診察を通して評価します。固縮の程度は、診察を受ける時間帯や薬の効き方によって変化することがあるため、日常生活での動きにくさも医師に伝えることが大切です。
医師が手足をゆっくり動かして確認する
診察では、ご本人ができるだけ力を抜いた状態で、医師が手首・肘・肩・膝などの関節をゆっくり曲げ伸ばしします。固縮があると、本人が力を入れていなくても、動かす速さにかかわらず一定の抵抗が感じられます。
症状が軽く分かりにくい場合は、反対側の手を動かすなど、別の動作をしながら確認することもあります。固縮はパーキンソン病を診断する際の重要な運動症状の一つですが、ほかの症状や経過も含めて総合的に判断されます。
固縮を自分だけで判断するのは難しい
「体が硬い」「肩がこる」「関節を動かしにくい」と感じても、必ずしも固縮とは限りません。加齢による関節の変化、筋肉痛、整形外科疾患などでも似た症状が現れます。
また、固縮は本人よりも、ご家族が「片方の腕を振らない」「着替えや寝返りが遅くなった」と気づくことがあります。気になる変化があれば、自己判断せず脳神経内科の医師へ相談しましょう。
薬の効いている時間と切れている時間も確認する
パーキンソン病では、薬が効いて動きやすい「オン」の時間と、薬の効果が弱まり固縮や動きにくさが強くなる「オフ」の時間がみられることがあります。
固縮が強くなる時間、服薬時刻、食事、動きやすさを記録しておくと、診察時の評価に役立ちます。薬の量や服用時間を自己判断で変更せず、記録をもとに主治医へ相談してください。
固縮に対する治療
パーキンソン病の固縮に対する治療は、薬物療法を基本として、リハビリテーションを組み合わせて行います。症状の強さや生活への影響、薬の効き方は人によって異なるため、主治医と相談しながら治療内容を調整することが大切です。
薬物療法
固縮の治療では、脳内で不足するドパミンの働きを補う抗パーキンソン病薬が用いられます。代表的な薬にレボドパがあり、固縮や動作の遅さなどの運動症状を和らげる効果が期待できます。薬が切れる時間帯に体のこわばりが強くなる場合は、服薬時刻や症状を記録して主治医へ伝えましょう。薬の量や飲む時間を自己判断で変更してはいけません。
リハビリテーション
パーキンソン病のリハビリでは、関節の動く範囲を保つ運動、体幹をひねる運動、姿勢や歩行の練習などを行います。固縮による動きにくさを和らげ、寝返り・着替え・歩行などの日常動作を続けやすくすることが目的です。
リハビリは薬物療法の代わりではなく、両方を組み合わせることが重要です。症状や転倒リスクに合わせ、理学療法士や作業療法士などの指導を受けましょう。
必要に応じて行われる外科的治療
薬を適切に調整しても運動症状の日内変動などによって生活に大きな支障がある場合は、脳深部刺激療法(DBS)が検討されることがあります。脳の特定部位に電極を入れ、電気刺激によって運動に関わる神経活動を調整する治療です。
ただし、すべての方が対象になるわけではありません。年齢、認知機能、薬への反応、全身状態などを専門医が総合的に評価して判断します。
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パーキンソン病の固縮に対するリハビリでは、硬く感じる筋肉だけを強く伸ばすのではなく、呼吸・体幹の回旋・姿勢・大きな動き・リズムを組み合わせることが重要です。
運動によって固縮そのものが治るわけではありませんが、関節の動く範囲を保ち、動作を始めやすくしたり、固縮に伴う二次的な筋肉の短縮や拘縮を予防したりする効果が期待できます。日本神経学会のガイドラインでも、リラクゼーション、ゆっくりとした体幹のひねり、関節可動域運動、ストレッチ、姿勢練習、リズムを使った歩行などが、パーキンソン病の運動療法として挙げられています。
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呼吸をしながら全身の力を抜く

固縮がある方は、動こうと意識するほど肩をすくめたり、息を止めたりして、全身に余計な力が入りやすくなります。運動を始める前に、まず呼吸を整えましょう。
椅子に深く座るか、安定した姿勢で横になり、鼻からゆっくり息を吸います。その後、口から細く長く息を吐きながら、肩・腕・手の力を抜きます。「息を吐くたびに肩が下がる」と意識し、3~5呼吸ほど繰り返してください。
呼吸だけで固縮がなくなるわけではありませんが、運動前に過剰な緊張を減らし、体を動かしやすい状態に整える準備になります。パーキンソン病の運動指針でも、柔軟性運動に横隔膜を使った呼吸やリラクゼーションを組み合わせることが示されています。
体幹をゆっくりひねる
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体幹の固縮が強くなると、寝返り、振り向き、方向転換、歩行時の腕振りなどが小さくなります。そのため、背骨や胸まわりをゆっくりひねる運動が大切です。
椅子に座って行う場合は、両手を胸の前で組み、顔・肩・胸を一緒に右へ向けます。痛みのない範囲で中央に戻り、反対側も同様に行います。勢いをつけず、息を吐きながら左右5回程度から始めましょう。
腕だけを動かすのではなく、目線、顔、肩、胸の順に体全体を回すことがポイントです。ベッド上では、両膝を立てて左右へゆっくり倒す方法もあります。体幹の回旋運動は、寝返りや方向転換など、実際の生活動作につながるように行うことが重要です。日本神経学会のガイドラインでも、緩やかな体幹の捻転運動が運動療法の一つとして挙げられています。
体幹を回旋させる=腰を回す、このように認識されている方もいるのですが、腰の骨は構造上それほど回旋できません。間違った方法で行うと腰痛が起きたりするのでご注意ください。あくまでも、腰ではなく「胸を回す」というイメージで行なっていただくと安全に行えます。
肩甲骨や胸郭を大きく動かす

パーキンソン病では、前かがみの姿勢や腕振りの減少により、胸の前側が縮こまり、肩甲骨の動きが小さくなりやすい傾向があります。
椅子に座り、息を吸いながら両腕を横へ広げ、胸を起こします。次に、息を吐きながら両腕を前へ伸ばし、背中を軽く丸めます。「胸を開く動き」と「背中を広げる動き」を交互に5~10回繰り返してください。
腕を高く上げることよりも、肩甲骨が背中の上を滑るように動くことを意識します。肩に痛みがある場合は、腕を肩より低い位置で動かして構いません。胸郭と肩甲骨の動きを引き出すことで、姿勢、腕振り、着替え、物を取る動作などにつなげていきます。
股関節を伸ばす

前かがみの姿勢や座っている時間が長くなると、股関節の前側が縮まり、立ったときに腰や膝が伸びにくくなることがあります。股関節が伸びにくい状態は、立ち上がりや歩幅にも影響します。
安全に立てる方は、机や手すりにつかまり、片足を後ろへ引きます。上半身を前へ倒しすぎず、骨盤を正面に向けたまま、後ろ側の股関節の前面をゆっくり伸ばします。痛みのない範囲で15~30秒保ち、左右行いましょう。
立位が不安定な方は、ベッドにあお向けになり、片方の膝を胸へ近づけ、反対側の脚を伸ばす方法でも構いません。腰を反らして無理に伸ばすのではなく、呼吸を続けながら穏やかに行うことがポイントです。柔軟性運動は関節可動域の維持・改善に役立つ可能性がありますが、体の状態に合わせた方法の選択が必要です。
大きくリズミカルに動く

パーキンソン病では、自分では普通に動いているつもりでも、実際の動作が小さくなっていることがあります。そのため、日常よりも少し大きな動きを意識する練習が有効です。
椅子に座って両腕を大きく開く、前後左右へ大きく手を伸ばす、立位で一歩を大きく踏み出すなど、全身を使った動きを行います。「1、2、1、2」と声を出す、手拍子や一定の音に合わせるなど、リズムを加えると動き出しやすくなる方もいます。
歩行練習では、単に速く歩くのではなく、足をどこへ出すか、腕をどのくらい振るかを意識して反復することが大切です。歩行練習や外部からのリズム・合図は、歩幅、歩行速度、移動能力の改善に用いられています。
運動は、可能であれば薬が効いて動きやすい「オン」の時間帯に行います。ふらつき、すくみ足、起立性低血圧、関節痛などがある方は、手すりや椅子を使用し、ご家族や専門職が見守れる環境で行ってください。症状や体力には個人差があるため、理学療法士などによる評価を受け、自分に合った運動方法を選ぶことが大切です。
自宅で運動するときの注意点
パーキンソン病の固縮に対する運動やストレッチは、毎日無理なく続けることが大切です。ただし、体が硬いからといって強く伸ばせばよいわけではありません。症状や薬の効き方、その日の体調に合わせ、安全を優先して行いましょう。
無理に伸ばしたり強く揉んだりしない
固縮は、筋肉そのものが硬くなっただけではなく、脳による筋肉の緊張調整が難しくなって起こります。そのため、強いストレッチやマッサージだけで固縮を取り除くことはできません。
反動をつけて関節を動かしたり、痛みを我慢して伸ばしたりすると、筋肉や関節を傷める可能性があります。息を止めず、「気持ちよく伸びている」と感じる範囲で、ゆっくり動かしましょう。ご家族が手足を動かす場合も、無理に引っ張らず、ご本人の表情や痛みを確認してください。
薬が効いている時間帯を活用する
パーキンソン病では、薬が効いて動きやすい「オン」の時間と、効果が弱く固縮や動きにくさが強くなる「オフ」の時間があります。自宅で運動するときは、可能であれば薬が効いて動きやすい時間帯を選ぶと、安全に大きな動きを練習しやすくなります。
服薬時刻と体の動きやすさを記録しておくと、自分に合った運動時間を見つける参考になります。ただし、運動に合わせて薬の量や服用時間を自己判断で変更してはいけません。
痛みや転倒に注意する
運動中に強い痛み、めまい、息苦しさ、動悸などが現れた場合は中止してください。立って行う運動では、安定した椅子や手すりを使用し、足元のマットやコードなど転倒につながる物を片づけておきます。
ふらつき、すくみ足、血圧低下、転倒歴がある方は、一人で無理に行わず、ご家族の見守りや理学療法士などの指導を受けましょう。パーキンソン病では薬の副作用や低血圧、すくみ足なども転倒に関係するため、運動方法だけでなく周囲の環境を整えることも重要です。
医療機関へ相談したほうがよい症状
パーキンソン病の固縮が以前より強くなり、寝返り・立ち上がり・歩行・着替えなどの日常生活に支障が出てきた場合は、主治医へ相談しましょう。薬を飲んでいても動きにくい時間が増えた、次の服薬前にこわばりが強くなる、薬の効き方が日によって大きく変わるといった場合も、治療内容を見直す手がかりになります。服薬時刻や症状が強くなる時間帯を記録しておくと、診察時に伝えやすくなります。
また、転倒を繰り返す、立ちくらみやふらつきがある、強い肩・腰の痛みやしびれが続く場合も相談が必要です。食事中にむせる、飲み込みに時間がかかる、声が弱くなったなどの変化は、嚥下機能の低下が関係している可能性があります。嚥下障害は脱水や低栄養、誤嚥につながることがあるため、早めに医師や言語聴覚士へ相談してください。
急な混乱、幻覚、意識状態の変化などが現れた場合は、薬の影響やほかの体調不良が関係することもあるため、速やかに医療機関へ連絡しましょう。薬の量や服用時間は自己判断で変更せず、気になる変化をご本人・ご家族だけで抱え込まないことが大切です。
よくある質問
ストレッチだけでパーキンソン病の固縮を治すことはできません。固縮は、脳が筋肉の緊張を調整しにくくなることで起こる神経症状だからです。ただし、ストレッチや関節を動かす運動は、体の動かしやすさや柔軟性を保ち、筋肉の短縮や関節可動域の低下を予防するために役立ちます。薬物療法とリハビリを組み合わせ、無理のない範囲で継続することが大切です。
体調に問題がなければ、軽いマッサージを受けることは可能です。筋肉の張りや痛みを一時的に和らげ、リラックスにつながる場合があります。ただし、マッサージは固縮の原因そのものを治療する方法ではありません。強く揉む、関節を無理に動かす、痛みを我慢するといった施術は避けましょう。
固縮は、ご本人が力を抜いていても、医師などが関節を動かしたときに一定の抵抗が感じられる神経症状です。一方、一般的な体のこりは、姿勢の偏り、疲労、運動不足などによる筋肉の張りとして感じられることが多く、休息や軽い運動で変化する場合があります。
固縮があるからといって、必ず拘縮になるわけではありません。しかし、固縮や動作の遅さによって体を動かす機会が減ると、筋肉や関節周囲の組織が短くなり、関節の動く範囲が狭くなる可能性があります。日頃から姿勢を変え、関節を無理なく動かすことが拘縮予防につながります。動かしにくさが強い場合は、理学療法士や作業療法士に相談してください。
固縮が強いからといって、必ずしも一日中動かないほうがよいとは限りません。強い運動は避け、深呼吸、座った姿勢での体幹運動、痛みのない範囲のストレッチなど、負担の少ない内容へ変更しましょう。薬が効いて動きやすい時間帯を選ぶことも方法の一つです。
まとめ
パーキンソン病の固縮は、脳内のドパミンが減少し、筋肉の緊張をうまく調整できなくなることで起こる代表的な運動症状です。首や肩、腕、体幹、脚などに現れ、寝返り・着替え・歩行といった日常生活の動作に影響することがあります。
固縮をストレッチだけで治すことはできませんが、薬物療法とリハビリを組み合わせることで、体の動かしやすさや関節の柔軟性を保ち、痛みや拘縮などの二次的な問題を予防することが期待できます。呼吸を整える、体幹をひねる、肩甲骨や股関節を大きく動かす、リズムに合わせて全身を動かすなど、症状に合った運動を継続することが大切です。
特に重要なのは、動きにくさが強くなってから運動を始めるのではなく、診断初期の段階、できればヤール分類1のように症状が比較的軽いうちから運動習慣をつくることです。早い段階から適切に体を動かしておくことで、関節の動く範囲や筋力、姿勢、歩行能力を保ちやすくなり、将来の日常生活にも備えられます。
運動の内容や強さは一人ひとり異なります。診断を受けたら主治医やリハビリ専門職へ相談し、ご本人に合った運動を無理なく、できるだけ早い時期から始めましょう。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会. パーキンソン病診療ガイドライン 2018.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html - Parkinson's Foundation. Rigidity.
https://www.parkinson.org/understanding-parkinsons/movement-symptoms/rigidity - Parkinson's Foundation. Physical Activity and Exercise.
https://www.parkinson.org/living-with-parkinsons/treatment/exercise - American Physical Therapy Association (APTA). Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline.
https://www.apta.org/ - National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Parkinson's disease in adults (NG71).
https://www.nice.org.uk/guidance/ng71







