パーキンソン病で椅子から立ち上がれないのはなぜ?原因・立ち上がるコツ・リハビリを解説

パーキンソン病では、「椅子からなかなか立ち上がれない」「何度か反動をつけないと立てない」「立ち上がった直後にふらつく」といった悩みがみられることがあります。
立ち上がりにくくなると、「脚の筋力が落ちたのでは?」と考えがちですが、原因は筋力低下だけではありません。パーキンソン病では、動作緩慢や筋固縮、身体の重心をうまく移動させにくいこと、バランス能力の低下、薬の効き方によるオン・オフなど、さまざまな要因が立ち上がり動作に影響します。近年の研究でも、パーキンソン病の立ち上がり能力には、動作緩慢、重心移動、バランスなど複数の要素が関係することが報告されています。
一方で、足の位置や身体の使い方、椅子の高さなどを工夫することで、立ち上がりやすくなる場合もあります。
この記事では、パーキンソン病で椅子から立ち上がれなくなる理由を整理し、立ち上がり動作の特徴、立ち上がるときのコツ、自宅で行うリハビリ・訓練、家族が介助するときの注意点まで、理学療法の視点からわかりやすく解説します。
パーキンソン病では椅子から立ち上がれなくなることがある
パーキンソン病では歩行だけでなく、椅子から立ち上がる動作にも影響が現れることがあります。近年の研究では、立ち上がりに要する時間が長くなる、お尻を座面から浮かせにくくなる、最後まで立ち上がれないといった変化が報告されています。
立ち上がりに時間がかかる・何度もやり直すことがある
「立とうとしてもなかなか動き始められない」「一度お尻が浮いても、また座ってしまう」といったことがあります。
立ち上がりは、単に脚へ力を入れるだけの動作ではありません。身体を前へ移動させ、お尻を座面から浮かせ、股関節や膝を伸ばし、最後に立位でバランスを取るという一連の動きが必要です。
理学療法士が立ち上がりを評価するときも、「立てる・立てない」だけではなく、足の位置、身体の動き、お尻が浮くタイミング、立った直後の安定性などを確認します。
「脚の筋力が弱いから」とは限らない
立ち上がれなくなると、筋力低下を第一に考える方も多いと思います。
確かに脚やお尻の筋力は立ち上がりに必要です。しかし、パーキンソン病では筋力だけでなく、動作緩慢、重心移動、姿勢制御なども立ち上がり能力に関係します。2025年の研究でも、立ち上がり能力の低下には複数の臨床的・生体力学的要因が関与することが示されています。
そのため、「立てない=筋トレをすればよい」と単純に考えず、立ち上がりのどの段階が難しいのかを確認することが重要です。
症状や環境など複数の要因が関係する
立ち上がりにくさには、パーキンソン病による症状だけでなく、加齢に伴う筋力低下、活動量の減少、痛み、オン・オフなどが重なることがあります。
また、身体機能が同じでも、低いソファでは立てないのに食卓の椅子なら立てる、といったことがあります。
つまり、立ち上がりにくさを考えるときは、本人の身体機能と、実際に使用している椅子や生活環境の両方を見ることが大切です。
パーキンソン病で椅子から立ち上がれないのはなぜ?

パーキンソン病で椅子から立ち上がれない原因は一つではありません。代表的には、動作緩慢、筋固縮、重心移動の難しさ、筋力低下、バランス能力、オン・オフ、椅子などの環境が関係します。
動作緩慢によって動きが小さく遅くなる
動作緩慢はパーキンソン病の代表的な運動症状です。単に動作の速度が遅くなるだけでなく、繰り返し動作などで動きが小さくなることもあります。
立ち上がりでは、身体を前へ動かし、お尻を浮かせ、脚を伸ばすという動きを連続して行います。その動きが小さくなったり、各動作を切り替えるのに時間がかかったりすると、スムーズに立ち上がりにくくなります。
筋固縮によって体幹や股関節を動かしにくくなる
筋固縮は、身体の筋肉がこわばり、関節を動かしたときに抵抗を感じやすくなる症状です。
立ち上がるには、体幹や股関節を曲げて身体を前へ移動させ、その後に股関節や膝を伸ばす必要があります。筋固縮が強い場合には、このような身体を曲げる・伸ばす動きを滑らかにつなげにくくなることがあります。

身体を前へ移動させにくい
椅子から立ち上がるときには、お尻が座面から離れる前に、身体の重心を足の方向へ移動させる必要があります。
パーキンソン病では、この重心移動の大きさやタイミングが立ち上がり能力に影響します。2025年の研究でも、座面から足への荷重移動に関係する要素と立ち上がり能力との関連が示されています。
ただし、パーキンソン病の方全員が「身体を前へ倒せない」わけではありません。2026年の研究では、健常者とは異なる体幹や下肢の動かし方を利用して立ち上がる可能性も示されています。そのため、前傾の量だけでなく立ち上がり全体のタイミングや協調性を見ることが重要です。
脚や体幹の筋力が低下している
太ももやお尻などの筋力も立ち上がりには欠かせません。
パーキンソン病で立ち上がりに問題がある方では、近位下肢の筋力低下が関係することも報告されています。
特に、お尻を座面から浮かせたあとに身体を上方へ持ち上げるには、股関節や膝を伸ばす力が必要です。

バランス能力が低下している
立ち上がりでは、安定して座っている状態から身体を移動させ、最終的に両足で立った状態へ移行します。
パーキンソン病では姿勢制御に問題が生じることがあり、立ち上がった直後にふらついたり、後ろへバランスを崩したりする場合があります。立ち上がり能力が低下した段階では、バランス能力との関連も報告されています。
オフの時間帯はさらに立ち上がりにくくなる
薬が効いて動きやすい状態を「オン」、薬の効果が弱まり、動作緩慢や筋固縮などが現れやすくなる状態を「オフ」と呼びます。
「朝は立ちにくい」「次の薬を飲む前になると立てない」など時間帯によって大きな差がある場合は、オフの影響も考える必要があります。
立ち上がりにくい時間と服薬時間を記録しておくと、主治医へ相談するときの参考になります。薬の量や服用時刻は自己判断で変更せず、主治医へ相談してください。

椅子の高さや座る位置も影響する
身体機能だけでなく、椅子の条件も立ち上がりやすさを左右します。
低い椅子や身体が沈み込むソファ、奥深く座る椅子などでは、立ち上がりに必要な身体の動きや下肢への負担が増えやすくなります。
「どこからでも立てない」のか、「特定の椅子だけ立てない」のかを確認することは、原因を考えるうえで重要です。
筋力・体の柔軟性、こういった身体の機能はとても大切ですが、椅子の高さや座面の硬さなど、環境を1つ変えるだけで大幅に改善されることがあります。運動を行うだけでなく、このように環境調整に視点を変えてみることも1つの方法です。
椅子から立ち上がる動作はどのように行われる?

椅子からの立ち上がりは、足の位置を整える→身体を前へ移動する→お尻を浮かせる→身体を伸ばす→立位を安定させるという流れで行われます。
パーキンソン病で立ち上がりにくい場合も、この流れのどこで動作が止まっているのかを見ると、必要な対策を考えやすくなります。
①足を身体の近くに引く
立ち上がる前に、足裏を床につけ、足を身体の近くへ置きます。
足が前方へ離れすぎていると、身体の重心を足の上へ移しにくくなります。ただし、最適な位置には個人差があるため、関節痛や左右差がある場合は無理に左右を揃える必要はありません。
②身体を前へ傾けて重心を移動する
次に身体を前へ動かし、椅子に支えられていた体重を徐々に足へ移していきます。
重要なのは、単に「大きく前屈すること」ではなく、お尻が浮くタイミングに合わせて重心を前方へ移動させることです。パーキンソン病では、この準備的な動きやタイミングが変化することがあります。
③お尻を座面から浮かせる
身体を前へ移したあと、お尻が座面から離れます。
この瞬間から、椅子に支えられていた身体を主に両脚で支える状態へ移行します。そのため、重心移動だけでなく、脚の筋力や動作のタイミングも必要です。
④股関節と膝を伸ばして立ち上がる
お尻が浮いたあとは、股関節と膝を伸ばして身体を上方へ持ち上げます。
この段階では太ももやお尻の筋力が重要ですが、前の段階で作った身体の動きとうまくつなげる必要があります。2026年の動作解析研究でも、パーキンソン病では体幹や股関節、膝などの協調的な動かし方に健常者との違いがみられています。
⑤立った姿勢でバランスを取る
身体が伸びたら終了ではありません。
最後に身体の重心を両足の上で安定させ、立った姿勢を保つところまでが立ち上がりです。
立った直後にふらつく方は、すぐに歩き出さず、一度姿勢が安定してから次の動作へ移ることが安全面では重要です。
パーキンソン病で立ち上がるときにみられやすい特徴
パーキンソン病の立ち上がり方は一人ひとり異なります。
ここでは「立ち上がれない」という結果だけでなく、どのような動作がみられているのかを確認してみましょう。
身体を十分に前へ倒せない
上体を起こしたまま真上へ立とうとすると、重心を足の上へ十分に移動できず、お尻が浮きにくくなることがあります。
ただし、パーキンソン病では一律に体幹前傾が少なくなるわけではありません。前へ動く量だけでなく、重心移動のタイミングを含めて評価することが大切です。
お尻が椅子から浮かない
身体は前へ動かせても、お尻が椅子から浮かないことがあります。
この場合は、重心移動だけでなく、太ももやお尻の筋力、足の位置、動作のタイミングなども確認します。パーキンソン病で立ち上がりに問題がある方では、下肢近位筋力の低下との関連も報告されています。
立ち上がる途中で後ろへ戻ってしまう
一度お尻が浮いても、身体を最後まで持ち上げられず、再び椅子へ座ってしまう場合があります。
こうした場合には、お尻が浮いた後に股関節や膝を十分に伸ばせているか、身体を支えるだけの筋力があるか、後方へバランスを崩していないかを確認します。
手すりや肘掛けを強く使う
以前より肘掛けや手すりへ強く力を入れなければ立てなくなることもあります。
手を利用すること自体が悪いわけではありません。日常生活では、安全に立てることが優先されます。
ただし、以前は手を使わずに立てていたのに支えが必要になった場合は、立ち上がり能力が変化しているサインとして捉えることもできます。
立った直後にふらつく
お尻を浮かせて身体を伸ばすことができても、立った直後に前後へふらつく場合があります。
これは立ち上がりの最後に必要な姿勢制御がうまく働いていない可能性があります。パーキンソン病では姿勢やバランスの問題が生じることがあり、リハビリの対象となります。
また、ふらつくといってもバランスが崩れるということだけでなく、めまいなども影響することがあります。日常的にめまいなどがある方は、是非一度下記の関連記事も合わせてお読みください。
椅子から立ち上がりやすくするためのコツ

立ち上がりにくい場合は、座る位置・足の位置・身体の動かし方・椅子の環境を変えると動きやすくなることがあります。
ただし、転倒リスクや関節の状態は人によって異なります。安全を確保したうえで、自分に合う方法を探しましょう。
椅子の浅い位置まで移動する
椅子の奥深くに座っている場合は、お尻を少しずつ前へ移動してから立つ方法があります。
前方へ座り直すことで、その後の重心移動を行いやすくなります。Parkinson's UKでも、立ち上がり介助ではお尻を椅子の前方へ移動してから前傾する方法が紹介されています。
ただし、浅く座りすぎると滑り落ちる危険があるため注意してください。
足を少し後ろへ引く
足が前方へ離れている場合は、足裏を床につけたまま、少し身体の近くへ引きます。
大切なのは「何cm引く」と決めることではなく、足裏で床を押しやすく、安定して力を出せる位置を探すことです。
身体を前へ傾ける
身体を真上へ持ち上げようとせず、お尻が浮く前に身体を前方へ動かします。
ただし、「できるだけ深く前へ倒れる」という意味ではありません。前方への重心移動から上方への動きへ、スムーズにつなげることが重要です。
「1・2・3」などの声かけやリズムを利用する
動き始めに時間がかかる場合は、「1・2・3」「せーの」などの合図を使う方法もあります。
パーキンソン病患者を対象としたランダム化比較試験では、視覚・聴覚による合図を利用した課題特異的な立ち上がり練習によって、立ち上がり能力の改善が報告されています。
すべての方に同じ合図が有効とは限らないため、本人が動きやすいタイミングを探しましょう。
必要に応じて肘掛けや手すりを使う
脚だけでは不安定な場合は、肘掛けや固定された手すりを利用することも一つの方法です。
「手を使わずに立つこと」にこだわる必要はありません。日常生活では、安全に立ち上がれる方法を確保することが重要です。
ただし、動く椅子や不安定な家具には体重をかけないようにしてください。
高さのある椅子を利用する
低いソファから立てない場合は、少し高さのある椅子へ変更する方法があります。
ただし、高ければ高いほどよいわけではありません。座ったときに足裏が床につき、安定して座れる高さが基本です。
椅子から立ち上がるためのリハビリ・訓練
パーキンソン病で立ち上がりを改善するには、実際の立ち上がり練習、重心移動、筋力、バランスなどを組み合わせることが大切です。
パーキンソン病の理学療法ガイドラインでも、筋力トレーニング、バランストレーニング、外的キュー、課題特異的な練習などが推奨されています。
椅子からの立ち上がりを繰り返し練習する
立ち上がりを改善するには、実際に立つ動作そのものを練習することが重要です。
パーキンソン病患者を対象とした研究でも、合図を用いながら立ち上がりを反復する課題特異的トレーニングによって、一般的な運動より立ち上がり能力が改善しました。
ただ回数をこなすのではなく、
足の位置を整える → 身体を前へ移動する → お尻を浮かせる → 身体を伸ばす → 姿勢を安定させる
という流れを意識します。
身体を前へ移動する練習
身体を前へ移動させにくい方では、座った状態で前方へ重心を移す練習を行うことがあります。
たとえば、足裏を床につけたまま少し前方へ手を伸ばし、元の姿勢へ戻る練習などです。
重要なのは大きく前屈することではなく、立ち上がりにつながる重心移動を練習することです。

太ももやお尻の筋力トレーニング
お尻が座面から浮いたあとには、股関節や膝を伸ばして身体を持ち上げる必要があります。
そのため、状態に応じて立ち座り、ミニスクワットなどの筋力トレーニングを取り入れます。パーキンソン病に対する筋力トレーニングは、理学療法ガイドラインでも推奨されています。
ただし、筋力だけを鍛えるのではなく、実際の立ち上がり練習と組み合わせることが大切です。
立った状態でのバランス練習
立ったあとにふらつく方では、バランス練習も必要です。
状態に応じて、安定した支持物を確保しながら、両足で立つ、左右へ体重を移す、一歩踏み出すといった練習を行います。
パーキンソン病に対するバランストレーニングも推奨されている理学療法の一つです。
転倒リスクがある方は、一人で難しいバランス練習を行わないようにしてください。
実際の生活環境に合わせて練習する
リハビリ室の椅子では立てても、自宅のソファやトイレからは立てないことがあります。
そのため理学療法では、「椅子から10回立てるか」だけでなく、本人が実際にどこで困っているのかを見ることが重要です。
食卓の椅子、ソファ、トイレなど、実際の生活場面に近い条件で練習したり、必要に応じて環境そのものを調整したりします。パーキンソン病では、理学療法士や作業療法士が座位から立位などの日常動作や、自宅の環境・福祉用具について支援することも推奨されています。
家族はどのように立ち上がりを介助すればよい?
家族が介助するときは、力で持ち上げるのではなく、本人ができる動きを利用しながら必要な部分だけを補助することが基本です。
まず本人ができる動きを待つ
パーキンソン病では、動作を始めるまでに時間がかかることがあります。
すぐに身体を持ち上げず、「立ちますよ」「1・2・3」など本人が理解しやすい合図を出し、動き始めるまで少し待ちます。
自分で足を引く、身体を前へ移動するなど、できる部分は本人に行ってもらいましょう。
足の位置と身体の前傾を確認する
まず足裏が床についていることを確認し、足が前方へ離れすぎている場合は、可能であれば少し身体の近くへ引きます。
その後、「少し身体を前へ移しましょう」などと声をかけ、本人自身の重心移動を促します。
腕を強く引っ張らない
腕や手を持って前方から強く引き上げる介助は避けましょう。
Parkinson's UKでも、本人を引っ張り上げるより、お尻を前へ移し、前傾して肘掛けなどを押しながら立つ動きを利用することが勧められています。
介助者も腰を痛めない姿勢をとる
本人だけでなく、介助する家族の安全も重要です。
前かがみになったまま身体を持ち上げたり、腰をひねりながら介助したりする方法は避けます。本人の近くに立ち、自分の足を使って身体の位置を変えることを意識しましょう。介助時には、前屈とひねりを避けることも推奨されています。
一人での介助が難しい場合は専門職へ相談する
本人の身体をかなり持ち上げなければ立てない、立った直後に大きくふらつく、家族だけでは支えきれない場合は、一人で無理に介助しないでください。
理学療法士や作業療法士に相談すると、本人の身体機能だけでなく、椅子、手すり、介助方法、福祉用具などを含めて検討できます。
椅子や自宅環境を工夫すると立ち上がりやすくなることもある
立ち上がりにくい場合は、身体を変えることだけでなく、本人に合わせて環境を変えることも重要な対策です。
低すぎる椅子を避ける
低い椅子では、股関節や膝を深く曲げた位置から身体を持ち上げなければならず、立ち上がる負担が大きくなります。
少し高い椅子へ変えることで立ち上がりやすくなることがあります。ただし、足裏が床につかないほど高くするのは避けましょう。
柔らかすぎるソファに注意する
柔らかいソファでは身体が沈み込み、実質的に低い位置から立つことになります。
また、お尻を前へ移動させたり、足を身体の近くへ引いたりしにくくなることがあります。
「椅子からは立てるのにソファから立てない」という場合は、座面の柔らかさも確認してみましょう。
肘掛けのある椅子を利用する
脚だけで立つことが難しい場合は、肘掛けを押して立つ方法があります。
日常生活では「手を使わずに立てること」より、本人が安全に立ち上がれることが優先されます。Parkinson's UKでも、椅子の肘掛けを利用して立ち上がる方法が紹介されています。
椅子が動かないように固定する
立ち上がるときに椅子そのものが後ろへ動くと、転倒につながる可能性があります。
キャスター付きの椅子や軽くて滑りやすい椅子は避け、体重をかけても動きにくい安定した椅子を使用しましょう。
必要に応じて手すりや福祉用具を検討する
椅子だけでは安全に立てない場合は、固定された手すりや福祉用具も選択肢になります。
ただし、取り付ける位置や高さは本人の身体機能や動作によって異なります。「立てないから手すりを付ける」と自己判断するのではなく、理学療法士や作業療法士などに相談すると安心です。パーキンソン病では、手すりや移動補助具など本人に合った機器の利用も選択肢になります。
急に立ち上がれなくなった場合は注意が必要
パーキンソン病では徐々に動きにくくなることがありますが、これまで立てていた方が急に立てなくなった場合は、「パーキンソン病が進行したから」と決めつけないことが重要です。
これまで立てていたのに急に立てなくなった
短時間のうちに身体機能が大きく変化した場合は、体調不良、感染症、薬の問題、脱水など、ほかの原因が影響している可能性もあります。
普段との違いが明らかな場合は医療機関へ相談してください。
強い痛みや脚の力の入りにくさがある
突然片側の顔・腕・脚に力が入りにくくなった、言葉が出にくい、ろれつが回らない、急にバランスを失ったなどの症状は、脳卒中でもみられます。脳卒中は緊急の対応が必要です。
こうした症状が突然現れた場合は、通常のパーキンソン病症状として様子を見ず、救急要請を含め速やかに医療機関へつなげてください。
転倒したあとから立てない
転倒後に股関節や脚の付け根へ強い痛みがあり、立てない、脚へ体重をかけられない場合は、大腿骨近位部骨折などの可能性があります。
この場合は、家族が無理に引き起こしたり、何度も立たせたりしないようにしてください。
オフ症状が強くなっている
「薬を飲む前だけ立てない」「朝に特に動きにくい」など、服薬時間と立ち上がりにくさに一定の関係がある場合は、オフの影響も考えられます。
何時に薬を飲み、何時ごろから動きにくくなるのかを記録しておくと、診察時に役立ちます。
日常生活への影響が大きくなっている
急激ではなくても、
- トイレから一人で立てなくなった
- 家族の介助量が増えてきた
- 立った直後に転びそうになる
- 以前より明らかに立ち上がりに時間がかかる
といった変化がある場合は、専門職へ相談するタイミングです。
パーキンソン病では、運動機能やバランスに問題がある場合、疾患に詳しい理学療法士による評価・介入が推奨されています。
よくある質問
動作緩慢、筋固縮、重心移動の難しさ、筋力低下、バランス能力などが複合的に関係します。脚の筋力低下だけが原因とは限りません。
筋力トレーニングは重要ですが、筋トレだけで改善するとは限りません。実際の立ち上がり練習、重心移動、バランス練習などを組み合わせることが大切です。
安定した少し高めの椅子を利用し、足を身体の近くへ置き、身体を前へ移動してから立つ方法があります。特定の椅子だけ立てない場合は、環境調整も検討しましょう。
腕を強く引っ張って立たせる方法はおすすめできません。本人の足の位置や身体の前方移動を整え、自分で立つ動きを利用しながら必要な部分だけを支えましょう。
必ずしも毎日行えばよいわけではありません。体力、転倒リスク、症状に合わせて安全に継続できる頻度で行うことが大切です。ふらつきが強い方は、理学療法士などに練習方法を確認しましょう。
まとめ
椅子から立ち上がれない原因は筋力低下だけではない
パーキンソン病では、動作緩慢や筋固縮、重心移動、バランス能力、筋力、オン・オフなど複数の要因が立ち上がりに関係します。
身体を前へ移動することが立ち上がりでは重要
立ち上がるには、身体を前方へ動かして重心を足の方向へ移し、お尻を浮かせてから身体を上方へ伸ばしていきます。どの段階で難しさが生じているかを見ることが大切です。
環境調整や立ち上がり方の工夫で動きやすくなることがある
足の位置や身体の使い方を変えたり、椅子の高さ、座面、肘掛けなどを調整したりすることで、立ち上がりやすくなる場合があります。
症状に合わせたリハビリと安全な介助が大切
実際の立ち上がり練習に、筋力・バランス練習などを組み合わせます。家族が介助するときも力で引き上げず、本人の動きを生かすことが重要です。
立ち上がりにくさが強くなってきた場合は、理学療法士などに相談し、「なぜ立てないのか」を評価したうえで本人に合った対策を考えていきましょう。
参考文献・参考資料
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視覚・聴覚による合図を取り入れた課題特異的な立ち上がり練習の効果を検証したランダム化比較試験。 - National Institute for Health and Care Excellence(NICE).
Parkinson's disease in adults. NICE guideline NG71.
パーキンソン病でバランスや運動機能に問題がある方への疾患特異的な理学療法などを示した診療ガイドライン。





