パーキンソン病と認知症の関係|認知機能の変化・パーキンソン病認知症(PDD)との違いを解説
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パーキンソン病では、手足の震えや動きにくさといった運動症状だけでなく、病気の経過とともにもの忘れや判断力の低下など、認知機能の変化がみられることがあります。
「パーキンソン病になると認知症になるの?」「最近もの忘れが増えたけれど、病気と関係がある?」「レビー小体型認知症とは何が違うの?」と心配される方やご家族もいるのではないでしょうか。
パーキンソン病と認知症には深い関係がありますが、パーキンソン病の方すべてが認知症になるわけではありません。また、認知機能の変化は、記憶だけでなく、注意力や考える速さ、計画を立てて行動する力、空間を把握する力などにも現れます。
さらに、パーキンソン病に伴う認知症と「レビー小体型認知症」は共通する特徴が多く、違いがわかりにくい病気でもあります。
この記事では、パーキンソン病と認知症の関係、みられやすい症状や原因、レビー小体型認知症との違いについて、できるだけわかりやすく解説します。
パーキンソン病と認知症にはどのような関係がある?
パーキンソン病というと、手足の震えや動作の遅さ、筋肉のこわばりなどがよく知られています。しかし実際には、運動症状だけでなく、注意力や判断力、記憶、考える力などの認知機能に変化がみられることがあります。
ただし、「認知機能が少し低下した=認知症」というわけではありません。認知機能が保たれた状態から軽度認知障害(PD-MCI)、さらに一部ではパーキンソン病認知症(PDD)へと変化することがありますが、その経過には大きな個人差があります。
また、パーキンソン病の運動症状が進行したからといって、それだけで認知症があるとは判断できません。歩行や姿勢などの運動機能と認知機能は分けて考える必要があり、「動きにくい=認知機能が低い」ではないことも大切なポイントです。
パーキンソン病では認知機能が低下することがある
パーキンソン病では、病気の比較的早い段階から認知機能の変化がみられる場合があります。
影響を受けるのは記憶だけではなく、注意を向ける、複数の情報を整理する、計画を立てる、問題を解決する、物の位置関係を把握するといった能力です。
そのため、「昔のことを忘れる」といった典型的なもの忘れだけでなく、「考えてから動き始めるまで時間がかかる」「一度に複数のことをすると混乱する」といった変化として現れることもあります。
リハビリの場面でも、歩きながら会話をする、複数の動作を順番に行う、方向を切り替えるといった課題になると、それまでできていた動作が難しくなることがあります。このような変化は筋力や運動症状だけで説明できるとは限らず、注意機能や遂行機能なども含めて考えることが大切です。
パーキンソン病の人が全員認知症になるわけではない
パーキンソン病では一般の人より認知症を発症するリスクが高いことが知られていますが、パーキンソン病と診断されたからといって、必ず認知症になるわけではありません。
発症リスクは年齢や病気の経過などによって異なり、一人ひとり同じように進むものではありません。
そのため、「最近忘れっぽい」「反応が遅くなった」という変化だけで、すぐに認知症と判断することはできません。
軽度認知障害(PD-MCI)から認知症へ進む場合もある
パーキンソン病では、認知症になる前の段階として「パーキンソン病に伴う軽度認知障害(PD-MCI)」がみられることがあります。
PD-MCIは、認知機能の低下が確認されるものの、日常生活の自立が大きく損なわれるほどではない状態です。
PD-MCIがある方では、その後PDDへ進むリスクが高くなることが報告されています。しかし、PD-MCIになった人が必ず認知症へ進行するわけではありません。
大切なのは、「認知症になるかどうか」だけを見るのではなく、今どの認知機能に変化があり、それが実際の生活や動作にどの程度影響しているのかを確認していくことです。
認知機能の低下と認知症は同じではない
パーキンソン病では、病気の経過のなかで認知機能に変化がみられることがあります。しかし、認知機能の低下がみられたからといって、すぐに「認知症」と診断されるわけではありません。
認知機能に低下があっても日常生活への影響が比較的小さい状態は、パーキンソン病に伴う軽度認知障害(PD-MCI)と呼ばれます。一方、認知機能の低下によって日常生活の自立に支障が生じるようになると、パーキンソン病認知症(PDD)と診断されることがあります。
パーキンソン病認知症(PDD)とは
パーキンソン病認知症(Parkinson's disease dementia:PDD)とは、すでにパーキンソン病を発症している人に認知機能の低下が生じ、それによって日常生活の自立に支障が出ている状態をいいます。
薬の管理・予定・複数手順の生活行為などに影響が起こります。
詳しい解説は、下記の記事で説明しています。
認知症はパーキンソン病の経過のなかで現れることがある
パーキンソン病の認知機能は、ある日突然大きく低下するとは限りません。
はじめは「考えるのに少し時間がかかる」「複数のことを同時に行いにくい」といった軽い変化から始まり、PD-MCIを経て、一部の人ではPDDへ進行します。
ただし、その経過には大きな個人差があります。「パーキンソン病になって○年たったから認知症になる」と予測できるものではありません。
アルツハイマー型認知症とは症状の現れ方が異なる
アルツハイマー型認知症では、一般的に新しく経験した出来事を覚えておくことが難しくなる記憶障害が早期から目立ちやすいとされています。
一方、PDDでは、注意力、遂行機能、情報処理の速さ、視空間認知などの低下が目立つことがあります。
ただし、PDDでも記憶障害は起こります。また、アルツハイマー病に関連する脳病理が併存する場合もあるため、症状だけで完全に区別できるわけではありません。
パーキンソン病ではどのような認知機能の変化がみられる?

パーキンソン病では、記憶だけでなく、考える速さ、注意力、遂行機能、視空間認知など、さまざまな認知機能に変化がみられることがあります。
こうした変化がみられても、すぐに認知症というわけではありません。認知機能の変化の程度や、それによって日常生活にどの程度影響が出ているかを含めて考えることが大切です。
考えたり判断したりするのに時間がかかる
情報を処理する速度が遅くなり、質問されてから答えるまで時間がかかる、選択肢が多いと判断に迷うといった変化がみられることがあります。
返事が遅くても、理解できていないとは限りません。急かさず、考える時間を確保することも大切です。
注意力や集中力が低下する
注意を維持したり、別のことへ注意を切り替えたりすることが難しくなる場合があります。
リハビリでは、普通に歩くことはできても、「歩きながら会話する」「物を持ちながら方向転換する」と急に歩行が不安定になることがあります。このような二重課題を「デュアルタスク」と呼びますが、リハビリの場面でデュアルタスクを用いた練習を日々しておくこともとても重要です。
計画を立てて行動することが難しくなる
何を・どの順番で行うか」を考えて実行する能力を遂行機能といいます。
遂行機能が低下すると、料理、着替え、外出準備など、複数の手順が必要な行動が難しくなることがあります。
「やる気がない」と見える場合でも、実際には次に何をすればよいのか整理できていないこともあります。
場所や物の位置関係を把握しにくくなる
物の形や位置、距離、空間の関係を捉える「視空間認知」が低下することがあります。
物が多い場所から目的の物を見つけにくい、段差や家具との距離を捉えにくいといった変化は、日常生活や安全な移動にも影響する可能性があります。
もの忘れがみられることもある
パーキンソン病では、新しいことを覚えにくい、以前聞いたことを思い出しにくいといった記憶機能の変化がみられることもあります。
ただし、パーキンソン病に伴う認知機能の変化では、記憶だけでなく、注意、遂行機能、情報を処理する速さ、視空間認知などにも目を向けることが大切です。
認知症だけではない|パーキンソン病で認知機能に影響する要因

「最近ぼんやりしている」「以前より話が通じにくい」といった変化がみられても、必ずしも認知症が進行したとは限りません。
薬の影響
パーキンソン病の治療薬などによって、眠気、幻視、混乱などが現れることがあります。
薬の変更や追加後に変化がみられた場合は、その時期を主治医へ伝えましょう。自己判断で薬を中止・減量することは避けてください。
睡眠障害や日中の眠気
パーキンソン病では、不眠、中途覚醒、レム睡眠行動障害、日中の眠気などがみられます。
睡眠が十分にとれていないと、日中の注意力や集中力、考える速度などにも影響します。

抑うつや意欲低下
抑うつやアパシー(意欲低下)によっても、集中力が低下したり、自分から行動することが少なくなったりします。
周囲から「認知症が進んだ」と見える場合でも、抑うつ・アパシーと認知症は同じものではありません。

感染症や脱水などによる一時的な変化
特に注意したいのが、短期間で急に認知機能や意識状態が変化した場合です。
感染症や脱水、薬などをきっかけとして、急に混乱したり、幻視が現れたりする「せん妄」が起こることがあります。
数時間から数日で急に様子が変わった場合には、「認知症が急速に進んだ」と決めつけず、早めに医療機関へ相談しましょう。
家族が気づきやすい認知機能の変化
家族が確認したいのは、単発の失敗ではなく、「以前と比べて変わった状態が続いているか」です。
会話や返答に時間がかかるようになった
質問してから返答まで時間がかかることがあります。
考える速度が遅くなっている場合もあるため、すぐに答えられなくても、理解できていないとは限りません。急かさず待つことも大切です。
複数のことを同時に行いにくくなった
料理をしながら会話する、歩きながら周囲を見るなど、複数のことを同時に行う二重課題が難しくなることがあります。
特に歩行中は、別の課題が加わることで足が止まったり不安定になったりする場合があります。
薬の管理や予定の管理が難しくなった
以前できていた服薬管理や予定の確認が難しくなった場合は、認知機能の変化が生活へ影響している可能性があります。
特にパーキンソン病では服薬時間が症状に影響するため、飲み忘れや重複が増えた場合は支援方法を検討しましょう。
幻視や普段と違う言動がみられるようになった
「誰もいないところに人がいる」「小さな動物が見える」などの幻視がみられることがあります。
ただし、急に幻視や混乱が増えた場合には、薬の影響やせん妄なども考える必要があります。
家族が診断するのではなく、「いつから・どのような変化が・どのくらい続いているか」を記録して医療者へ伝えることが大切です。
認知機能の低下が気になったときはどうすればいい?

気になる変化があった場合には、自己判断せず、経過を整理して医療機関へ相談しましょう。
自己判断で「認知症」と決めつけない
もの忘れや反応の遅さだけでは認知症とは判断できません。
特に急激な変化では、感染症、薬、睡眠など別の原因も確認する必要があります。
いつから・どのような変化があるか記録する
「いつから」「何が」「どの程度変わったのか」を記録しておきましょう。
服薬時間、ON・OFF、睡眠、体調なども一緒に記録すると、パーキンソン病の症状との関係を把握しやすくなります。

主治医や専門医に相談する
認知機能の変化が続く場合には、まずパーキンソン病を診てもらっている主治医へ相談しましょう。
必要に応じて、記憶、注意、遂行機能、視空間認知などの認知機能を評価します。状況によっては認知症専門医やもの忘れ外来などへ紹介される場合もあります。
日常生活や運動を続けられる環境を整える
認知機能が低下してきたからといって、できることをすべてやめる必要はありません。
予定を見える場所に掲示する、薬を整理する、生活時間を一定にする、室内を移動しやすくするといった環境調整が役立つ場合があります。
運動についても、一度に伝える内容を減らす、動作を分ける、安全な環境を整えるなど、その人に合わせて方法を調整します。
リハビリでは、認知機能の低下だけを理由に運動を中止するのではなく、「今できることは何か」「どのような伝え方なら理解しやすいか」「どうすれば安全に活動を続けられるか」という視点が大切です。

パーキンソン病と認知症についてよくある質問
いいえ。パーキンソン病の人が必ず認知症になるわけではありません。 認知機能の変化や経過には大きな個人差があります。
もの忘れだけでは認知症とは判断できません。睡眠、抑うつ、疲労、薬なども認知機能に影響します。以前との違いや日常生活への影響が続いている場合は主治医へ相談しましょう。
同じ診断ではありませんが、どちらもレビー小体病に含まれ、多くの共通点があります。一般的には、認知症とパーキンソン症状が現れる時期によってPDDとDLBを区別します。
いいえ。認知機能が低下していてもリハビリを行える場合があります。 指示を分かりやすくする、動作を分ける、安全な環境を整えるなど、その人に合わせて方法を調整することが大切です。
まとめ
パーキンソン病では認知機能の変化も含めて経過をみていこう
パーキンソン病では運動症状だけでなく、注意力、判断力、遂行機能、視空間認知、記憶などの認知機能に変化がみられることがあります。
ただし、すべての方が認知症になるわけではなく、その経過には大きな個人差があります。また、薬や睡眠、抑うつ、感染症などによって一時的に認知機能が低下したように見える場合もあります。
大切なのは、以前と比べてどのような変化があるのか、日常生活にどの程度影響しているのかをみていくことです。
気になる変化が続く場合は自己判断せず主治医に相談し、必要に応じて生活環境や運動方法も調整しながら、その人らしい生活を続けていきましょう。
参考文献・参考資料
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