パーキンソン病で骨折したらどうなる?リハビリ・寝たきり予防と注意点を解説

パーキンソン病の方にとって、転倒による骨折は注意したい問題の一つです。パーキンソン病では転倒しやすさに加えて、骨密度の低下や骨粗しょう症がみられやすく、骨折リスクが高いことが報告されています。
特に心配なのが、骨折をきっかけに身体を動かす機会が減り、筋力や歩行能力、日常生活動作が低下することです。大腿骨近位部骨折などでは手術や入院が必要になることもあり、パーキンソン病のある方では骨折後の機能回復に時間がかかる場合があります。
しかし、パーキンソン病の方が骨折すると必ず寝たきりになるわけではありません。 骨折した部位や重症度、骨折前の身体機能、パーキンソン病の状態などを確認しながら、適切な治療とリハビリを行い、日常生活で身体を動かす機会を取り戻していくことが重要です。
この記事では、パーキンソン病の方が骨折したときに起こりやすい問題や注意したい骨折、治療、リハビリ、寝たきりを防ぐためのポイント、退院後の再転倒・再骨折予防について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
パーキンソン病の方が骨折するとどうなる?
パーキンソン病の方が骨折すると、骨折した部分だけでなく、身体活動量や歩行能力、日常生活動作の低下にも注意が必要です。
痛みや安静によって身体活動量が低下する
骨折すると痛みによって、歩行や立ち上がり、トイレへの移動などが難しくなることがあります。さらに治療内容によっては、一時的に動作や荷重が制限される場合もあります。
パーキンソン病ではもともと動作が小さく、動き始めに時間がかかることがあるため、骨折後に身体を動かす機会が減ると活動量が低下しやすくなります。
筋力や歩行能力が低下しやすい
身体を動かさない期間が続くと筋力や体力が低下し、骨折前には歩けていた方でも、立ち上がりや歩行に介助が必要になることがあります。
リハビリでは筋力だけでなく、立ち上がり・立位・方向転換・歩行能力などを総合的に評価することが重要です。
パーキンソン病の症状が目立つこともある
骨折後に「パーキンソン病が急に悪くなった」と感じることがあります。しかし、必ずしも病気そのものが急速に進行したとは限りません。
痛みや活動量の低下、入院による環境変化などによって、動作緩慢や筋固縮、歩行の不安定さなどが以前より目立つことがあります。
骨折をきっかけに介助量が増えることがある
骨折前には一人でできていた移動やトイレ、入浴などでも、骨折後には家族の介助が必要になることがあります。
そのため骨折後のリハビリでは、骨折前にできていた生活動作をできるだけ取り戻すことが重要な目標になります。
パーキンソン病で注意したい骨折

パーキンソン病では転倒しやすさと骨の弱さが重なるため、特に次のような骨折に注意が必要です。
大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折・転子部骨折)
大腿骨近位部骨折は、太ももの骨の付け根に起こる骨折です。高齢者では転倒によって生じることが多く、強い痛みから立つ・歩くことが難しくなることがあります。
パーキンソン病では、骨折前の歩行能力、杖や歩行器の使用、すくみ足や方向転換時の転倒なども確認し、骨折前の移動能力をできるだけ取り戻すことが重要です。
椎体骨折(圧迫骨折)
椎体骨折は、背骨を構成する骨がつぶれるように変形する骨折です。骨粗しょう症がある場合には、大きな転倒がなくても生じることがあります。
パーキンソン病では前かがみ姿勢などがみられることもありますが、突然の腰痛や背部痛、急激な姿勢変化がある場合は、すべてをパーキンソン病の症状と考えないことが大切です。
手首や上肢の骨折
転倒した際に手をつくことで、手首などを骨折することがあります。
手や腕の骨折でも、手すりを握る、杖を使う、ベッドから起き上がるなどの動作が難しくなり、結果として移動能力に影響する場合があります。
骨折後に寝たきりになりやすいのはなぜ?

骨折したからといって必ず寝たきりになるわけではありません。しかし、骨折→活動量低下→身体機能低下という流れには注意が必要です。
安静によって筋力や体力が低下する
骨折後にベッドや椅子で過ごす時間が増えると、下肢筋力や持久力が低下し、立ち上がりや歩行が難しくなることがあります。
動かないことでパーキンソン病の動作がさらに難しくなる
パーキンソン病では動作緩慢や筋固縮、バランス障害などがあります。そこに活動量低下が加わることで、立ち上がりや歩行、方向転換などがさらに難しくなる場合があります。
痛みや転倒への恐怖で活動量が減る
骨折後に「また転んだらどうしよう」という不安から、歩くこと自体を避けるようになる方もいます。
リハビリでは、安全な環境を整えながら成功体験を積み、少しずつ活動範囲を広げることも大切です。
入院前より歩行や日常生活動作が低下することがある
骨が治っても、歩行や生活動作が骨折前まで戻らない場合があります。
そのためリハビリでは、「退院できるか」ではなく「骨折前の生活にどこまで戻れるか」を一つの目標として考えることが重要です。
骨折後の治療はどのように進む?
骨折後の治療は、骨折した場所や程度、年齢、全身状態などによって異なります。
骨折した部位や程度によって治療方法は異なる
治療には、手術を行う方法と、手術を行わずに骨の治癒を待つ保存的治療があります。
どちらを選択するかは骨折部位やずれの程度、骨粗しょう症の状態、日常生活能力などを考慮して決められます。
大腿骨近位部骨折では手術が行われることが多い
大腿骨頸部骨折や転子部骨折では、長期間の安静による身体機能低下を防ぐため、高齢者では手術が選択されることが多くあります。重要なのは、手術が終わった時点ではなく、その後のリハビリまで含めて治療と考えることです。
大腿骨近位部骨折では、概ね3ヶ月くらいのリハビリ入院を経て退院することが多いです。入院時にしっかりとリハビリを行い、退院時には以前の日常生活レベルくらいまで回復して退院することが目標となります。
椎体骨折(圧迫骨折)では保存的治療が選択されることもある
椎体骨折では、コルセットなどの装具を使用しながら経過を見る保存的治療が選ばれることがあります。一方、不安定性が強い場合や神経症状がある場合には手術が検討されることもあります。
全身状態やパーキンソン病の状態も考慮する
パーキンソン病の方では、骨折だけでなく、骨折前の歩行能力、認知機能、嚥下機能、服薬状況なども考慮して治療を進める必要があります。
パーキンソン病の骨折後リハビリで重要なこと
骨折後のリハビリでは、骨折へのリハビリとパーキンソン病へのリハビリを一緒に考えることが重要です。
医師の指示に合わせて早期から身体を動かす
必要以上に安静が長くなると筋力や体力が低下します。
ただし、いつから体重をかけてよいかは骨折部位や手術方法によって異なるため、医師の指示に合わせて安全に活動量を増やします。
骨折前の歩行・生活レベルを確認する
リハビリの目標を決めるためには、「骨折前に何ができていたか」を確認することが重要です。
歩行補助具の使用、外出頻度、トイレや入浴、家族の介助状況なども確認します。
筋力だけでなく立位・歩行・バランスを練習する
筋力だけを鍛えても、安全に歩けるようになるとは限りません。
立ち上がり、立位保持、歩行、方向転換、バランスなどを含めて練習していきます。

パーキンソン病特有の動きにくさにも対応する
すくみ足、小刻み歩行、動作緩慢、方向転換の難しさなどにも対応する必要があります。
床の目印やリズムなどを利用するキューイングも、症状に応じて活用します。
日常生活動作の再獲得を目指す
リハビリの最終目標は筋力の数値ではなく、起きる・立つ・歩く・トイレへ行く・着替える・外出するといった生活を取り戻すことです。
入院中はパーキンソン病の薬にも注意する
骨折による入院では、手術や検査によって普段どおりに薬を飲めないことがあります。
抗パーキンソン病薬は決められた時間に服用することが重要
抗パーキンソン病薬は、個々の症状に合わせて服用時間が調整されています。
入院時には薬の種類や量だけでなく、普段何時に飲んでいるのかも医療スタッフへ伝えましょう。
薬の効き方によってリハビリ時の動きも変わる
薬が効いて動きやすい「オン」と、動きにくい「オフ」がある方では、時間帯によって歩行能力も変化します。
理学療法では、服薬時間や薬の効き方を確認しながら、安全にリハビリを行うことが大切です。
自己判断で薬を中止しない
抗パーキンソン病薬を急に中断すると症状が悪化する可能性があります。
服薬が難しい場合には、自己判断で中止せず、必ず医師や病棟スタッフへ相談してください。
骨折後の寝たきりを防ぐためにできること
寝たきりを防ぐためには、安全に身体を動かす機会を取り戻していくことが重要です。
必要以上の安静を続けない
骨折部位を守ることは必要ですが、医師から許可された範囲で身体を動かすことも大切です。
座る・立つ・歩く機会を段階的に増やす
いきなり長距離を歩く必要はありません。
座る→立つ→数歩歩く→トイレまで歩くなど、できることを少しずつ増やしていきます。
栄養と水分を確保する
低栄養や脱水は身体機能低下につながります。十分なエネルギーやたんぱく質、水分を確保することも重要です。
食事量が減った、体重が減った、むせが増えた場合には専門職へ相談しましょう。

退院後もリハビリを継続する
退院できても、骨折前の身体機能まで戻っているとは限りません。
通院・訪問リハビリや介護保険サービスなどを利用しながら、歩行や日常生活動作を継続的に練習していきます。
家族だけで抱え込まず専門職を活用する
安全を心配するあまり家族がすべて介助すると、ご本人が身体を動かす機会が減ることがあります。
本人ができることは続けてもらい、危険な部分だけを支えることが、自立を守るためには大切です。
退院後は再転倒・再骨折を防ぐことが重要

骨折後は「もう一度骨折しないための対策」まで考える必要があります。
すくみ足や方向転換への対策を行う
歩き始めや方向転換、狭い場所など、すくみ足が起こりやすい場面を確認します。
歩幅を意識する、方向転換を小さなステップに分ける、床の目印やリズムを利用するなど、個々に合った方法を検討します。
自宅の転倒しやすい場所を見直す
段差、敷物、電源コード、暗い廊下などを確認します。
特に、実際に転倒した場所や夜間のトイレ動線、方向転換する場所を見直すことが重要です。
靴や歩行補助具を見直す
骨折後は身体機能が変化しているため、以前の靴や杖が現在も適しているとは限りません。
杖や歩行器は自己判断で選ばず、実際の歩行を理学療法士などに確認してもらうことをおすすめします。


骨粗しょう症の評価・治療を行う
再骨折を防ぐには、転倒しにくくすること + 骨折しにくい骨を保つことの両方が重要です。
一度骨折した方は、骨粗しょう症の評価や治療についても主治医へ相談しましょう。

骨折後にリハビリスタッフへ相談した方がよいケース
骨折前より明らかに歩けなくなった
歩ける距離が大幅に短くなった、杖や歩行器が必要になった、家の中でも介助が必要になった場合には相談を検討しましょう。
転倒を繰り返している
何度も転倒している場合は、すくみ足やバランス、歩行補助具、自宅環境などを専門職に評価してもらうことが大切です。
退院後ほとんど身体を動かしていない
転倒への不安などから身体を動かさなくなると、さらに筋力や歩行能力が低下する可能性があります。
その方に合った段階で活動量を増やしていきましょう。
介助量が増えて家族の負担が大きくなった
家族の介助負担が大きくなった場合も、理学療法士や作業療法士、ケアマネジャーなどへ相談しましょう。
本人の自立を支えながら、家族の負担を減らすことも大切な目標です。
よくある質問
必ず寝たきりになるわけではありません。ただし、安静や活動量低下によって身体機能が落ちやすいため、適切なリハビリが重要です。
骨折部位や治療方法によって異なりますが、医師の許可のもと、できるだけ早期から身体を動かすことが基本です。
再び歩けるようになる方はいます。回復の程度は骨折前の歩行能力や年齢、パーキンソン病の状態などによって異なります。
動きにくさが目立つことはありますが、必ずしも病気そのものが急速に進行したとは限りません。痛み、活動量低下、入院環境、服薬状況なども影響します。
医師から許可された範囲で、身体を動かすことが大切です。骨折の状態に合わせて無理なく継続しましょう。
健康保険や高額療養費制度などを利用できます。指定難病の医療費助成については、骨折の治療が助成対象となるか個別に異なるため、医療機関や自治体へ確認してください。
まとめ
パーキンソン病では骨折後の身体機能低下に注意が必要
骨折による痛みや安静が続くと、筋力や歩行能力が低下し、骨折前より生活動作が難しくなることがあります。
骨折後は早期から適切なリハビリを行うことが重要
医師の指示に従い、安全を確保しながら早期から座る・立つ・歩く機会をつくることが大切です。
寝たきり予防には活動量と日常生活を取り戻すことが大切
筋力だけでなく、立ち上がりや歩行、トイレなど、実際の生活で必要な動作を少しずつ取り戻すことを目指します。
退院後は再転倒・再骨折予防まで考える
すくみ足への対応、自宅環境や靴・歩行補助具の見直し、骨粗しょう症の評価・治療などを組み合わせ、再び骨折しないための対策を続けることが重要です。
参考文献・参考資料
- 日本骨粗鬆症学会ほか.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版
- Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS). Management of Hip Fractures in Older Adults. Clinical Practice Guideline. 2021.
- Torsney KM, et al. Bone health in Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014.
- Richard G, et al. Parkinson's Disease Medication Prescribing and Administration During Unplanned Hospital Admissions. Mov Disord Clin Pract. 2022.



