パーキンソン病は骨粗しょう症になりやすい?骨折リスク・原因・予防を解説

パーキンソン病では、動きにくさやバランス低下などの症状に目が向きやすい一方で、「骨の健康」も見逃せない問題の一つです。実際、パーキンソン病のある方では、骨密度の低下や骨粗しょう症、骨折リスクの上昇が報告されています。
特に注意したいのは、骨が弱くなることに加えて、すくみ足や姿勢反射障害、バランス低下などによって転倒しやすくなることです。つまり、パーキンソン病では「骨が折れやすい状態」と「転びやすい状態」が重なり、骨折につながる可能性があります。
また、身体活動量の低下や低体重、栄養状態、ビタミンD不足、加齢など、骨の健康に影響する要因が複数重なることもあります。そのため、骨粗しょう症を予防するには、骨密度だけでなく、運動や栄養、転倒予防まで含めて考えることが重要です。
この記事では、パーキンソン病と骨粗しょう症の関係、骨折リスクが高まる理由、検査や治療、予防のための運動・リハビリ、日常生活でできる転倒対策について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
パーキンソン病は骨粗しょう症になりやすい?
パーキンソン病では骨密度が低い傾向が報告されている
パーキンソン病のある方では、パーキンソン病のない方と比べて、骨密度が低く、骨粗しょう症や骨量減少がみられやすいことが複数の研究で報告されています。
ただし、パーキンソン病になると必ず骨粗しょう症になるわけではありません。年齢、性別、体重、活動量、栄養状態など、さまざまな要因が重なって骨の健康に影響すると考えられています。
骨粗しょう症だけでなく骨折リスクにも注意が必要
パーキンソン病で特に注意したいのは、「骨が弱くなりやすいこと」と「転びやすいこと」が重なる点です。
すくみ足や姿勢反射障害、バランス低下などによって転倒しやすくなるため、骨密度が低下している場合には転倒が骨折につながる可能性が高まります。
理学療法の視点では、骨密度だけでなく、転倒歴や歩行状態、バランス能力まで含めて骨折リスクを考えることが重要です。
そもそも骨粗しょう症とは?
骨が弱くなり骨折しやすくなる病気
骨粗しょう症は、骨の量や質が低下し、骨が弱くなって骨折しやすくなる病気です。
骨折しやすい部位には、背骨(椎体)、手首、太ももの付け根(大腿骨近位部)などがあります。

骨密度が低くても自覚症状がないことがある
骨粗しょう症の注意点は、骨が弱くなっていても自覚症状がほとんどない点です。
「痛くないから骨は大丈夫」とは限らないため、年齢や骨折歴などによっては、症状がなくても骨密度を確認することが大切です。
転倒をきっかけに骨折して気づくこともある
骨粗しょう症が進むと、転倒や尻もちなど比較的小さな衝撃でも骨折することがあります。
椎体骨折では痛みが軽い場合もあり、身長が縮んだり、背中が丸くなったりして初めて気づくケースもあります。
パーキンソン病で骨粗しょう症リスクが高まる背景

身体活動量が低下しやすい
パーキンソン病では、動作の遅さや筋固縮、バランス低下、転倒への不安などから、歩行や外出の機会が減ることがあります。
骨は、立つ・歩くなどの荷重刺激を受けることで維持されるため、身体活動量の低下は骨密度低下に関係する要因の一つと考えられています。
屋外活動の減少とビタミンD不足が関係することがある
ビタミンDは、カルシウムの吸収や骨の健康に重要な栄養素です。
パーキンソン病では外出や屋外活動が減り、日光に当たる機会が少なくなることでビタミンD不足につながる可能性があります。ただし、骨粗しょう症はビタミンDだけで決まるものではなく、栄養状態なども含めて考える必要があります。
低体重や栄養状態が影響することがある
パーキンソン病では、食欲低下や嚥下の問題などによって体重が減少する方もいます。
低体重は一般的にも骨粗しょう症のリスク要因です。理学療法の場面でも、筋力や歩行能力だけでなく、以前より体重が減っていないかを確認することは重要です。

加齢や女性ホルモンなど一般的な骨粗しょう症リスクも重なる
骨粗しょう症はパーキンソン病だけで起こるものではありません。
加齢、閉経後の女性ホルモン低下、低体重、運動不足、栄養状態など、一般的な骨粗しょう症のリスクも重なります。
パーキンソン病の重症度や罹病期間も関係する可能性がある
パーキンソン病が進行すると、歩行や日常生活の活動量が低下し、骨の健康にも影響する可能性があります。
ただし、「パーキンソン病が長いほど必ず骨粗しょう症になる」というわけではありません。 活動量、体重、栄養、年齢などを総合的にみることが重要です。
パーキンソン病ではなぜ骨折にも注意が必要?

骨が弱くなると少ない衝撃でも骨折しやすくなる
骨粗しょう症になると骨の強度が低下し、転倒や尻もちなど比較的小さな衝撃でも骨折しやすくなります。
パーキンソン病のある方では、骨密度が低い傾向に加えて、骨折リスクも高いことが報告されています。
バランス低下やすくみ足などで転倒リスクも高まる
パーキンソン病では、姿勢反射障害や歩行障害、すくみ足などによって転倒しやすくなることがあります。
特に、歩き始め、方向転換、狭い場所の通過などは注意が必要です。
「骨の弱さ」と「転びやすさ」が重なる
パーキンソン病の骨折予防では、骨粗しょう症と転倒を別々の問題として考えないことが重要です。
骨が弱くなる+転倒しやすくなる= 骨折リスクが高まる
という2つの要因が重なる可能性があります。そのため、骨密度の管理と同時に、歩行やバランス、すくみ足、転倒歴なども評価することが大切です。
特に大腿骨近位部骨折や椎体骨折に注意する
パーキンソン病では、特に大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折)への注意が必要です。
また、骨粗しょう症では背骨の椎体骨折(背骨の圧迫骨折)も起こりやすく、痛みが強くないまま身長低下や背中の丸まりとして気づくこともあります。
パーキンソン病の薬と骨粗しょう症には関係がある?
薬だけが骨粗しょう症の原因ではない
パーキンソン病の薬を飲んでいるからといって、それだけで骨粗しょう症になるわけではありません。
骨密度低下には、身体活動量、低体重、栄養状態、ビタミンD、加齢など複数の要因が関係すると考えられています。
薬剤と骨折・骨代謝との関連が研究されている
レボドパをはじめとする抗パーキンソン病薬と骨代謝との関係についても研究されています。
ただし、現時点では「レボドパが直接骨粗しょう症を起こす」と単純に結論づけることはできません。疾患の重症度や活動量なども影響するため、薬剤だけを原因として考えないことが大切です。
自己判断で薬を減らしたり中止したりしない
骨への影響が心配になっても、抗パーキンソン病薬を自己判断で減らしたり中止したりするのは避けましょう。
薬が効かなくなると動きにくさや歩行障害が強くなり、活動量低下や転倒につながる可能性があります。
骨粗しょう症が心配な場合は、主治医に相談し、必要に応じて骨密度検査などにつなげましょう。
骨粗しょう症はどのように調べる?
骨密度検査(DXA)で骨の状態を確認する
骨粗しょう症の評価では、骨密度を測定します。代表的なのがDXA(デキサ)法で、腰椎や大腿骨などの骨密度を測定します。
骨折歴や転倒歴も重要
骨密度だけでなく、これまでに骨折したことがあるかも重要です。
さらにパーキンソン病では、転倒回数や転び方、すくみ足、バランス低下なども骨折リスクを考えるうえで重要な情報になります。
必要に応じて血液検査などを行う
必要に応じて血液検査を行い、カルシウム代謝や骨代謝の状態、骨粗しょう症につながるほかの病気がないかを確認します。
骨折リスクを総合的に評価する
パーキンソン病では、骨密度・骨折歴・年齢などの骨のリスク+転倒歴・歩行・バランスなどの転倒リスクの両方から評価することが重要です。
パーキンソン病に伴う骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症そのものを治療する
骨粗しょう症と診断された場合は、骨折を防ぐために適切な治療を行います。
骨密度だけでなく、年齢や骨折歴などを総合的に評価し、生活習慣改善と必要に応じた薬物治療を組み合わせます。
カルシウムやビタミンDなど栄養状態を確認する
骨の健康には、カルシウムやビタミンD、たんぱく質などを含めた適切な栄養摂取が重要です。
サプリメントを自己判断で大量に摂取するのではなく、必要に応じて医師や管理栄養士に相談しましょう。
必要に応じて骨粗しょう症治療薬を使用する
骨折リスクが高い場合には、骨粗しょう症治療薬が使用されます。
どの薬を選ぶかは、骨折歴、骨密度、年齢、腎機能などを考慮して判断されます。
パーキンソン病の治療も継続する
骨粗しょう症が見つかっても、パーキンソン病の治療を中断するわけではありません。
症状を適切にコントロールし、歩行や日常生活で身体を動かせる状態を保つことは、身体活動の維持や転倒予防という点でも重要です。
骨粗しょう症を予防するためにできること
適切な栄養をとる
カルシウムやビタミンD、たんぱく質などを含め、バランスよく栄養をとることが基本です。
日常的に身体を動かす
ウォーキングなど、自分の体重が骨にかかる活動を日常生活の中で続けることが大切です。
適度に屋外で活動する
日光を浴びることで体内でもビタミンDが作られます。体調や転倒リスクに配慮しながら、散歩などで屋外に出る機会を持つことも一つの方法です。
低体重や体重減少にも注意する
「以前より痩せてきた」という変化も見逃さないようにしましょう。体重減少が続く場合は主治医などへの相談が必要です。
定期的に骨の状態を確認する
骨粗しょう症は自覚症状がないまま進むことがあります。年齢や性別、低体重、骨折歴などに応じて、必要なタイミングで骨密度検査を検討します。
骨を守るための運動・リハビリ

歩行や立位など骨に荷重がかかる活動を続ける
立つ・歩くなど、自分の体重が骨にかかる活動を続けることは骨の健康維持に重要です。
パーキンソン病では活動量が減りやすいため、無理のない範囲で立つ時間や歩く機会を確保しましょう。
筋力トレーニングを取り入れる
筋力トレーニングは、筋力や身体機能の維持に加え、骨への刺激という点でも重要です。特に下肢や体幹の筋力を保つことは、立ち上がりや歩行能力の維持にもつながります。

バランス練習で転倒を予防する
パーキンソン病では、骨を強くするだけでなく転ばない身体づくりが重要です。
理学療法では、立位バランスだけでなく、立ち上がり、方向転換、歩行など実際に転倒が起こりやすい動作も確認します。
パーキンソン病の症状に合わせて運動を調整する
症状の程度や薬の効き方、すくみ足、骨折リスクなどには個人差があります。
すでに骨粗しょう症や椎体骨折がある場合は運動内容を調整する必要があります。安全に続けられる運動を、その人の状態に合わせて選ぶことが重要です。
パーキンソン病の骨折を防ぐための転倒対策
すくみ足や方向転換時の転倒に注意する
歩き始め、方向転換、狭い場所の通過などは、すくみ足が起こりやすい場面です。
急いで向きを変えず、その人に合った安全な動作方法を身につけることが大切です。
自宅の環境を整える
床に置いた物やコード、滑りやすいマット、暗い廊下などを見直しましょう。手すりや照明の調整など、実際に転びやすい場所を減らすことが重要です。
靴や歩行補助具を見直す
靴はサイズが合い、かかとが安定し、歩行中に脱げにくいものが基本です。杖や歩行器についても、身体機能やすくみ足の状態に合ったものを理学療法士などと検討するとよいでしょう。


転倒が増えたらリハビリスタッフに相談する
「最近よくつまずく」「方向転換でふらつく」「転倒が増えた」といった変化がある場合は、早めに相談しましょう。
骨粗しょう症がある方では、転倒を減らすことそのものが骨折予防につながります。
骨折を疑った方がよい症状
転倒後から強い腰痛や股関節痛が続く
転倒や尻もちのあとから腰や股関節周辺の痛みが強く続く場合は、骨折の可能性があります。
突然背中や腰が痛くなった
明らかな転倒がなくても、突然強い背中や腰の痛みが出た場合には椎体骨折が隠れていることがあります。
立てない・歩けない
転倒後に急に立てなくなった、体重をかけられない、歩こうとすると強く痛む場合は、無理に歩こうとせず医療機関を受診しましょう。
パーキンソン病では、普段の歩きにくさと比べて急に状態が変わったかを確認することが重要です。
身長が低くなった・背中が急に丸くなった
以前より身長が縮んだ、背中が急に丸くなったといった変化は、椎体骨折のサインになることがあります。
姿勢の変化をすべてパーキンソン病によるものと考えず、急な変化や痛みを伴う場合は整形外科的な原因も確認する必要があります。
よくある質問
いいえ。ただし、骨密度低下や骨折リスクが高い傾向が報告されているため、年齢や活動量、体重、骨折歴なども含めて注意することが大切です。
すべての方が同じ頻度で測る必要はありません。年齢、性別、低体重、骨折歴などによって必要性が異なるため、主治医に相談しましょう。
多くの場合、適切な運動は推奨されます。ただし、骨折歴や骨粗しょう症の程度に合わせた運動内容の調整が必要です。
カルシウムだけでは十分ではありません。ビタミンDやたんぱく質を含むバランスのよい食事、運動、適正体重の維持なども重要です。
整形外科やかかりつけの内科などに相談できます。パーキンソン病で通院している場合は、脳神経内科の主治医に相談する方法もあります。
まとめ
パーキンソン病では骨粗しょう症・骨折リスクに注意が必要
パーキンソン病のある方では、骨密度が低い傾向や骨折リスクの上昇が報告されています。ただし、すべての方が骨粗しょう症になるわけではありません。
骨密度低下と転倒の両方が骨折につながる
パーキンソン病では、骨が弱くなることに加えて、すくみ足やバランス低下などによって転倒しやすくなることがあります。「骨の弱さ」と「転びやすさ」の両方に注意することが重要です。
栄養・運動・転倒予防を組み合わせることが重要
骨折予防には、適切な栄養、身体活動や筋力トレーニング、バランス練習、生活環境の見直しなどを組み合わせて取り組むことが大切です。
骨の状態を早めに確認し必要な治療につなげる
骨粗しょう症は自覚症状がないまま進むことがあります。年齢や骨折歴、体重減少、転倒の増加などが気になる場合は、主治医に相談し、必要に応じて骨密度検査や治療につなげましょう。
参考文献・参考資料
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版
日本骨粗鬆症学会ほか。骨粗しょう症の診断、治療、栄養、運動、骨折予防についてまとめられたガイドライン。 - 日本整形外科学会「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」
骨粗しょう症の定義、症状、検査、骨折しやすい部位、治療などを解説した資料。 - Torsney KM, et al. Bone health in Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014.
パーキンソン病における骨密度、骨粗しょう症、骨折リスクを検討した系統的レビュー・メタ解析。 - Tan L, et al. Parkinson's disease and risk of fracture: a meta-analysis of prospective cohort studies. PLoS One. 2014.
パーキンソン病と骨折リスクの関連を検討したメタ解析。 - Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022.
パーキンソン病に対する筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習などの理学療法についてまとめた臨床実践ガイドライン。






