パーキンソン病の枕はどう選ぶ?高さ・硬さ・寝る姿勢のポイントを理学療法士が解説

パーキンソン病では、筋肉のこわばりや姿勢の変化、寝返りのしにくさなどによって、「今まで使っていた枕が合わなくなった」「朝起きると首や肩がつらい」と感じることがあります。
枕は高ければよい、低ければよいというものではありません。仰向けで寝るのか横向きで寝るのか、首や背中の姿勢がどの程度変化しているのかによって、適した高さや硬さは異なります。
特にパーキンソン病では、前かがみの姿勢や首下がり、寝返りのしにくさなどがみられることがあるため、一般的な枕の選び方だけでは合わないケースもあります。
この記事では、パーキンソン病の方が枕を選ぶ際に知っておきたい「高さ」「硬さ」「寝る姿勢」のポイントについて、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
パーキンソン病では枕が合わなくなることがある?

パーキンソン病になったからといって、必ず枕を交換する必要があるわけではありません。
しかし、病気に伴って筋肉のこわばりや姿勢、寝返りなどが変化すると、これまで問題なく使えていた枕が「少し高い」「首が苦しい」「寝返りしにくい」と感じることがあります。
大切なのは、「パーキンソン病にはこの枕がよい」と一律に考えるのではなく、現在の身体の状態に合わせて調整することです。
筋肉のこわばりや姿勢の変化が影響する
パーキンソン病では、「筋固縮(強剛)」と呼ばれる筋肉のこわばりがみられることがあります。また、経過に伴って身体が前に傾く、首が前に下がる、身体が左右どちらかに傾くといった姿勢の変化がみられる場合もあります。
こうした変化があると、以前と同じ枕でも頭や首の位置が合わなくなることがあります。
理学療法士が枕を考えるときは、頭だけを見るのではありません。首から肩、背中までを含めて、横になったときに無理のない姿勢になっているかを確認します。
例えば、前かがみの姿勢が強い方に対して、無理に首をまっすぐにしようとして枕を極端に低くすると、かえって首や肩がつらくなることがあります。
寝返りがしにくくなると枕の影響を受けやすい
パーキンソン病では、夜間に寝返りや身体の向きを変えることが難しくなる「夜間低運動」がみられることがあります。
動作緩慢や筋肉のこわばり、体幹をひねりにくくなることなどが関係し、「横を向きたいのに身体が動かない」「夜中に同じ姿勢でいることが増えた」と感じることがあります。
寝返りでは、頭・肩・体幹が連動して動きます。そのため、枕が高すぎたり、頭が深く沈み込みすぎたりすると、人によっては頭を動かしにくくなることがあります。
ただし、寝返りのしにくさは枕だけで起こるものではありません。夜間のOFFやマットレスの状態なども関係するため、寝具全体から考えることが大切です。

今まで使っていた枕が合わなくなることもある
「何年も同じ枕を使っていたのに、最近になって朝起きると首がつらい」ということもあります。
この場合、枕そのものだけではなく、パーキンソン病による姿勢や身体の動きの変化、加齢による筋力・関節可動域の変化、マットレスの劣化などが影響している可能性があります。
「枕に身体を合わせる」のではなく、今の身体や寝る姿勢に枕を合わせていくことが基本です。
パーキンソン病の枕は高さが重要
パーキンソン病の方が枕を選ぶときは、特に「高さ」を確認しましょう。
ただし、「パーキンソン病なら○cm」という決まった高さがあるわけではありません。体格や姿勢、寝る向き、マットレスへの沈み込みなどによって適した高さは異なります。
枕が高すぎる場合に起こりやすいこと
枕が高すぎると、仰向けでは頭が持ち上がり、あごを強く引いたような姿勢になりやすくなります。
その状態が本人にとって不自然であれば、首や肩に負担を感じたり、朝起きたときに首がこわばったりすることがあります。
パーキンソン病で前かがみ姿勢があるからといって、単純に枕を高くすればよいわけではありません。首だけが大きく曲がっていないか、苦しさがないかを確認することが大切です。
枕が低すぎる場合に起こりやすいこと
反対に、枕を低くしすぎても、その人の姿勢によっては首を十分に支えられない場合があります。
特に背中が丸くなっている方では、仰向けになったときに後頭部と寝具の間に距離が生まれることがあります。
この状態で枕を無理に低くすると、首や肩に強い張りを感じることがあります。
「何cmが正解」ではなく姿勢に合わせて調整する
枕選びでは、「何cmくらいの高さがよいですか?」と聞かれることがあります。
しかし、すべての人に共通する理想的な高さは確立されていません。
体格、肩幅、背中や首の姿勢、マットレスの沈み込み、仰向け・横向きなどによって必要な高さが変わるためです。
数字だけで判断するのではなく、
- 首や肩が楽か
- 呼吸しにくくないか
- 寝返りしやすいか
- 朝起きたときに痛みがないか
などを確認しましょう。
タオルを使って少しずつ高さを調整する方法
枕が合わないと感じても、すぐに新しい枕を購入する必要はありません。
薄手のタオルなどを使って高さを少しずつ調整し、身体の反応を確認する方法があります。
一度に大きく高さを変えるのではなく、小さく調整してみましょう。
家族がいる場合は、仰向けや横向きになった状態を横から見てもらい、首だけが大きく曲がっていないか確認してもらうのもよいでしょう。
枕の硬さ・大きさはどう選ぶ?
枕を選ぶ際は、高さだけでなく「硬さ」と「大きさ」も確認しましょう。
現時点では、特定の素材や硬さの枕がすべての人に優れているという十分な医学的根拠はありません。
大切なのは、頭・首を支えながら、身体の動きを妨げないことです。
頭が沈み込みすぎない硬さを選ぶ
柔らかい枕は包み込まれるような感覚がありますが、頭が深く沈み込みすぎると、左右へ頭を動かしたり寝返りしたりしにくく感じることがあります。
一方で、硬すぎる枕では後頭部や首に圧迫感が出る場合があります。
実際に頭を置いた状態で左右を向いたり、横向きへ姿勢を変えたりして、動きにくくないか確認しましょう。
寝返りしやすい幅のある枕を選ぶ
枕は、仰向けから横向きになった際にも頭が外れにくい程度の幅があるものが使いやすい場合があります。
ただし、「大きな枕ほど寝返りしやすい」という意味ではありません。
枕の端まで移動したときにも頭を支えられ、身体を動かす邪魔にならないことがポイントです。
首だけでなく肩との位置関係も確認する
頭・首・肩・背中はつながっています。
特に横向きでは肩幅があるため、頭とマットレスの間に距離ができます。そのため、仰向けと横向きでは必要な枕の高さが異なることがあります。
頭だけが持ち上がっていないか、首が左右に大きく傾いていないか、肩が強く押しつぶされていないかを確認しましょう。
寝る姿勢によって枕の高さは変わる
枕の高さを考える際は、普段どの姿勢で寝ているかも重要です。
仰向けと横向きでは、頭からマットレスまでの距離が異なります。
仰向けで寝る場合
仰向けでは、枕で頭を必要以上に持ち上げないことがポイントです。
高すぎると首が大きく曲がり、低すぎると、背中が丸くなっている方では首が落ち着かないことがあります。
頭・首・肩・背中までを一つのつながりとして見て、無理のない位置になっているか確認しましょう。
横向きで寝る場合
横向きでは肩の厚みがあるため、一般的には仰向けよりも高さが必要になる場合があります。
ただし、必要な高さは肩幅や体格、マットレスへの肩の沈み込みによって異なります。
横向きになったとき、頭が上や下へ大きく傾かず、首から背中までが無理のない位置になるよう調整しましょう。
仰向けと横向きを行き来する場合
実際の睡眠では、一晩中同じ姿勢を続けるとは限りません。
そのため、仰向けでは快適でも横向きになると極端に高い・低い枕では、寝返りの際に使いにくくなる可能性があります。
特にパーキンソン病では寝返りが難しくなることがあるため、一番楽な姿勢だけではなく、姿勢を変えやすいかも確認しましょう。
パーキンソン病の症状に合わせた枕の考え方

パーキンソン病では、前かがみや首下がり、首・肩のこわばり、寝返りのしにくさなど、症状の現れ方には個人差があります。
枕を使って姿勢を無理に矯正するのではなく、現在の身体の状態に合わせて楽に休めることを優先しましょう。
前かがみの姿勢が強い場合
背中が丸くなったり、身体が前方へ傾いたりしている方では、仰向けになったときに後頭部とマットレスの間が広くなる場合があります。
この状態で「姿勢をまっすぐにしよう」と枕を急に低くすると、首や背中に強い張りが出ることがあります。
仰向けで無理なく休めるか、首や背中が苦しくないかを確認しながら調整しましょう。
首下がりがある場合
パーキンソン病では、首が前方へ大きく傾く「首下がり」がみられることがあります。
首下がりには筋強剛やジストニア、筋骨格系の変化など複数の要因が関係すると考えられています。
枕で無理に首を反らしてまっすぐにしようとせず、寝たときに首がどの程度自然に戻るのかを確認します。
首下がりが強い、急に進行した、強い首の痛みがある場合などは自己調整だけで対応せず、主治医やリハビリテーション専門職へ相談しましょう。
首や肩のこわばりが強い場合
パーキンソン病の筋固縮(強剛)は、首や体幹にもみられることがあります。
枕で首を強く伸ばそうとするのではなく、力を抜いて横になれる位置を探すことが大切です。
また、朝方に首や肩のこわばりが特に強い場合は、枕だけではなく夜間から早朝のOFFなどが関係している可能性もあります。
症状が出る時間帯や薬との関係も確認してみましょう。

寝返りが難しい場合
寝返りが難しい場合は、「寝たときの快適さ」だけでなく、頭を左右へ動かしやすいか、仰向けから横向きへ姿勢を変えやすいかを確認します。
ただし、寝返りは頭だけで行う動作ではありません。
理学療法士の視点では、
頭 → 肩 → 体幹 → 骨盤
と身体全体が連動して動けているかを確認します。
枕を調整しても寝返りが難しい場合は、身体機能や薬、マットレスなどを含めて考える必要があります。
枕を調整するときに確認したいポイント

枕を調整した際は、「寝た瞬間の感覚」だけではなく、翌朝の身体や夜間の動きも確認しましょう。
朝起きたときに首や肩が痛くないか
枕を調整した翌朝に、
- 首が痛い
- 肩がいつも以上にこる
- 首を左右へ動かしにくい
- 後頭部に圧迫感がある
といった変化がないか確認します。
ただし、パーキンソン病では筋肉のこわばりや夜間のOFFなども首・肩のつらさに関係するため、「首が痛い=枕が原因」とは限りません。
呼吸や飲み込みが苦しくなっていないか
枕を調整したときは、呼吸や飲み込みにも注意しましょう。
頭や首の姿勢は気道や嚥下の動きに関係するため、首が極端に曲がったり反ったりすると、人によっては違和感を感じることがあります。
「息苦しい」「唾液を飲み込みにくい」「むせやすくなった」などの変化がある場合は、無理にその枕を使い続けないでください。
飲み込みにくさやむせが続く場合は、パーキンソン病による嚥下障害が関係している可能性もあるため、主治医などへ相談しましょう。
寝返りを妨げていないか
枕を調整したら、
- 頭を左右へ動かしやすいか
- 仰向けから横向きになりやすいか
- 横向きになっても頭が枕から外れないか
- 頭が深く沈み込みすぎていないか
を確認しましょう。
寝返りが難しい場合には、枕だけではなくマットレスや掛け布団、シーツなども影響している可能性があります。
数日試して変化を確認する
強い痛みや違和感がなければ、少し調整した状態を数日程度試し、変化を確認してみましょう。
一晩だけでは、その日の疲労や体調、薬の効き方などによって寝心地が変わることがあります。
朝の首・肩の状態、寝返りのしやすさ、起きたときの身体のこわばりなどを確認します。
ただし、痛みやしびれが強くなった、呼吸が苦しくなった、飲み込みにくさが明らかに増えた場合などは、無理に使い続ける必要はありません。
枕だけで解決しない場合は寝具全体も見直す
枕の高さや硬さを調整しても寝返りや起き上がりのしにくさが変わらない場合は、寝具全体にも目を向けてみましょう。
マットレスやベッドの影響も考える
身体が深く沈み込むマットレスでは、人によっては寝返りや起き上がりが難しくなることがあります。
ただし、硬いマットレスほどよいわけではありません。身体の痛みや体格、寝姿勢も含めて考える必要があります。
また、ベッドが低すぎると立ち上がるために大きな力が必要となり、高すぎると足が床につきにくくなることがあります。
一つの目安として、ベッドの端に座ったときに足底が床につき、無理なく立ち上がれるかを確認しましょう。
寝返りや起き上がりが難しい場合は環境全体を確認する
寝返りや起き上がりが難しくなった場合は、
- マットレス
- シーツ
- 掛け布団
- ベッドの高さ
- ベッド周囲のスペース
- 手すりや電動ベッドなどの福祉用具
も含めて確認します。
補助具は身体機能に合っていなければ、かえって動きにくくなることもあります。
理学療法士・作業療法士に実際の寝返りや起き上がりを見てもらい、身体の動きと寝具環境の両方から調整する方法もあります。
枕を変えても首の痛みや寝にくさが続く場合は相談を
枕を調整しても首の痛みや寝にくさ、寝返りのしにくさが続く場合は、枕だけが原因ではない可能性があります。
パーキンソン病の症状や薬、首そのものの問題なども含めて確認することが大切です。
主治医に相談したほうがよいケース
次のような場合は、枕だけの問題と考えず主治医への相談を検討しましょう。
- 首の痛みが強い、または徐々に悪化している
- 首が以前より大きく前へ下がるようになった
- 手や腕にしびれや力の入りにくさがある
- 夜間の身体のこわばりが強い
- 寝返りが急に難しくなった
- 夜間に薬が切れたような動きにくさがある
- むせや飲み込みにくさが増えてきた
- 息苦しさがある
特に、これまでなかった症状が急に出た場合は、「枕が合わなくなった」と自己判断せず相談しましょう。
夜から明け方にかけて身体のこわばりや寝返りのしにくさが強くなる場合には、夜間のOFFが関係している可能性があります。
理学療法士・作業療法士に相談できること
理学療法士は、枕だけではなく、
- 前かがみや首下がりなどの姿勢
- 首や体幹の動き
- 筋肉のこわばり
- 仰向け・横向きでの姿勢
- 寝返り
- 起き上がり
- 立ち上がり
などを評価し、身体を動かしやすくする方法を考えます。
作業療法士には、ベッドやマットレス、手すりなどの福祉用具や寝室環境について相談することもできます。
「どの枕を買えばよいか」だけではなく、なぜ寝にくくなっているのかを身体と環境の両面から確認することが大切です。
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まとめ|パーキンソン病の枕は高さ・硬さ・寝姿勢に合わせて調整する
パーキンソン病の方に合う枕は、一律に決まっているわけではありません。
前かがみや首下がり、筋肉のこわばり、寝返りのしにくさなど、現在の身体の状態に合わせて調整することが大切です。
枕を選ぶ際は、高さ・硬さ・大きさ・寝る姿勢を確認し、朝の首や肩の痛み、呼吸や飲み込み、寝返りのしやすさもチェックしましょう。
枕を調整しても寝にくさや痛みが続く場合は、枕だけの問題と考えず、マットレスやベッドなど寝具全体を見直し、必要に応じて主治医や理学療法士・作業療法士に相談することをおすすめします。
参考文献・参考資料
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