パーキンソン病にラジオ体操はおすすめ?効果・注意点・安全なやり方を理学療法士が解説

パーキンソン病と診断された方のなかには、「運動が大切なのは分かるけれど、何から始めればよいのか分からない」「ラジオ体操なら毎日続けられそう」と考える方も多いのではないでしょうか。
ラジオ体操は、全身を動かしながら、関節の動きや柔軟性、姿勢、バランスなどを意識できる身近な運動です。パーキンソン病の方にとっても、無理のない範囲で身体を動かす習慣をつくる方法のひとつとして取り入れられます。実際に、国内のパーキンソン病患者を対象とした調査でも、「体操・ラジオ体操」は病期を問わず行われていた自主運動のひとつとして報告されています。
一方で、パーキンソン病では動作緩慢や筋固縮、姿勢・バランスの変化、すくみ足などがみられることがあり、一般的なラジオ体操をそのまま行うことが難しい場合もあります。また、ラジオ体操だけですべての運動やリハビリを補えるわけではありません。
この記事では、理学療法士の視点から、パーキンソン病の方がラジオ体操を行うメリットや注意点、安全に行うための工夫について分かりやすく解説します。
パーキンソン病にラジオ体操はおすすめ?
パーキンソン病の方にとって、ラジオ体操は日常生活に取り入れやすい運動のひとつです。
名古屋大学医学部附属病院パーキンソン病総合医療センターでも、日常で続けやすい運動として、ストレッチやラジオ体操、ウォーキングなどが紹介されています。
ただし、「パーキンソン病だからラジオ体操をすれば十分」というわけではありません。運動習慣をつくる入口のひとつとして活用しながら、自分に必要な運動を組み合わせることが大切です。
ラジオ体操は運動習慣をつくる選択肢のひとつ
ラジオ体操は特別な器具を必要とせず、自宅でも短時間で取り組めます。また、動きの順番が決まっているため、「何をすればよいか分からない」という方でも始めやすい運動です。
パーキンソン病では、継続して身体を動かすことが重要です。国内調査でも、自主的にリハビリテーションを行っていた方は全体の78.8%で、「体操・ラジオ体操」「柔軟・屈伸」「散歩・歩行」などが広い病期で行われていました。
理学療法士の視点では、最初からすべての動きを完璧に行う必要はありません。「毎朝ラジオ体操をする」など生活のなかに組み込み、安全に継続することを優先しましょう。
ラジオ体操はパーキンソン病専用の運動ではない
ラジオ体操は、パーキンソン病の症状に合わせて開発された運動ではありません。
パーキンソン病では、動作緩慢、筋固縮、姿勢やバランスの変化、歩幅の減少、すくみ足など、一人ひとり異なる課題がみられます。
そのため、ラジオ体操だけで筋力、持久力、バランス、歩行などに必要な運動をすべて補うことは難しい場合があります。
また、ラジオ体操そのものがパーキンソン病の症状を改善すると直接証明した研究は限られています。「パーキンソン病に効く体操」と考えるのではなく、取り組みやすい全身運動のひとつとして位置づけることが適切です。
パーキンソン病の方がラジオ体操を行うメリット
ラジオ体操には、全身を動かす、関節を動かす、姿勢やバランスを意識する、音楽に合わせるといった複数の運動要素があります。
全身を大きく動かしやすい
ラジオ体操には、腕を上げる、身体を曲げる・伸ばす・ひねる、膝を曲げ伸ばしするといった全身運動が含まれています。
パーキンソン病では、動作緩慢によって歩幅や腕の振りなどが徐々に小さくなることがあります。
そのため、ラジオ体操をするときは音楽についていくことだけを目標にせず、安全な範囲で少し大きく身体を動かすことを意識してみましょう。
関節の動きや身体の柔軟性を保つ運動になる
パーキンソン病では、筋固縮や活動量の低下などによって、身体が動かしにくく感じることがあります。
ラジオ体操では、肩、腕、背骨、股関節、膝などをさまざまな方向へ動かすため、日常的に関節を動かす機会をつくることができます。
ただし、肩が上がりにくい、身体をひねりにくいなど特定の問題がある場合には、その部分に合わせたストレッチなどを追加することも必要です。

姿勢やバランスを意識する機会になる
ラジオ体操には、立った状態で腕や体幹を動かしたり、重心を移動させたりする運動があります。
パーキンソン病では、病気の進行に伴って姿勢を立て直す能力やバランス能力が低下することがあります。
ただし、ラジオ体操自体がバランス障害を改善すると確立されているわけではありません。ふらつきがある場合は、椅子や手すりなどを利用し、安全性を優先しましょう。

音楽やリズムに合わせて身体を動かせる
パーキンソン病では、外から与えられる音やリズムを動作の手がかりとして利用する「外的キュー」が、歩行などのリハビリテーションで用いられることがあります。
ラジオ体操にも一定の音楽とリズムがあるため、身体を動かすきっかけとして利用しやすい方もいるでしょう。
ただし、専門的なリズム聴覚刺激(RAS)とラジオ体操は同じものではありません。「ラジオ体操の音楽にパーキンソン病を改善する効果がある」と考えるのではなく、動きを引き出す手がかりのひとつとして活用しましょう。

毎日の運動習慣として続けやすい
ラジオ体操第一は約3分で、自宅でも行いやすい運動です。かんぽ生命でも、ラジオ体操第一を約3分の全身運動として紹介しています。
「朝食前に行う」「身体が動かしやすい時間に行う」「家族と一緒に行う」など、生活のなかに組み込むと継続しやすくなります。
毎日必ずすべて行うことよりも、体調に合わせて無理なく続けることが大切です。
ラジオ体操第一と第二はどちらがおすすめ?
パーキンソン病の方が初めてラジオ体操に取り組む場合は、まずラジオ体操第一から始めることをおすすめします。
まずはラジオ体操第一から始める
ラジオ体操第一は「いつでも・どこでも・だれでも」行える一般向けの体操としてつくられており、第二と比較すると運動強度は低めです。
これまであまり運動をしていなかった方や、まず身体を動かす習慣をつくりたい方にも取り入れやすいでしょう。
見本と同じ速さや大きさで動くことより、安全な姿勢を保ちながら自分のペースで行うことを優先してください。
ラジオ体操第二は動きが大きく運動強度も高くなる
ラジオ体操第二は、もともと青・壮年層を対象につくられており、第一より運動強度が高い体操です。
第一を安定して行える方で、さらに運動量を増やしたい場合には選択肢になります。
ただし、第二の方がパーキンソン病に効果的という意味ではありません。ふらつきや疲労が出ないか確認し、自分の身体機能に合った方を選びましょう。
パーキンソン病の方がラジオ体操を安全に行うポイント

パーキンソン病では、薬の効き方やその日の体調によって身体の動かしやすさが変化することがあります。
見本どおりに動くことよりも、安全に身体を動かすことを優先することが重要です。
動きについていこうとせず自分のペースで行う
動作緩慢があると、ラジオ体操のテンポに間に合わないことがあります。
遅れても問題ありません。次の動作に急いで追いつこうとすると、バランスを崩したり足がもつれたりする場合があります。
音楽よりも、自分がコントロールできる速さを優先しましょう。

できる範囲で動きを大きくする
パーキンソン病では、自分では十分動いているつもりでも、実際の動作が小さくなっていることがあります。
そのため、安全な範囲で「腕を少し遠くへ伸ばす」「背すじを起こす」など、いつもより少し大きな動きを意識してみましょう。
ただし、大きく動けばよいわけではありません。痛みやふらつきがある場合は動きを小さくします。
バランスが不安な場合は椅子や手すりを利用する
身体を左右や前後へ動かす運動では、バランスを崩す可能性があります。
ふらつきがある場合は、安定した椅子や机、手すりなど、すぐにつかまれる場所で行いましょう。
キャスター付きの椅子など、動くものを支えとして使用することは避けてください。
立って行うのが難しい場合は座って行う
ラジオ体操は必ず立って行う必要はありません。
かんぽ生命でもラジオ体操第一の座位版が公式に紹介されています。
椅子に座った状態でも、腕を上げる、身体をひねる、膝を動かすなどの運動はできます。
立位よりもバランスや下肢への負荷は少なくなりますが、転倒が不安な方にとっては、安全に身体を動かす方法のひとつです。
身体を動かしやすい時間帯を選ぶ
パーキンソン病では、薬がよく効いて身体を動かしやすい「ON」の時間と、効果が弱くなって動作緩慢や筋固縮などが強くなる「OFF」の時間がみられることがあります。
運動は、できるだけ自分が安全に身体を動かしやすい時間帯に行いましょう。
運動ガイドラインでも、身体能力や服薬状態、病期に合わせて運動を調整することが重要とされています。
症状がある場合はラジオ体操をどう工夫する?

パーキンソン病の症状は一人ひとり異なります。症状がある場合は、ラジオ体操を中止するのではなく、動き方や姿勢、運動量を調整することも選択肢です。
動作緩慢や筋固縮がある場合
音楽についていくことより、一つひとつの動作を丁寧に行いましょう。
腕を少し遠くへ伸ばす、胸を開く、身体を無理のない範囲でひねるなど、大きな動きを意識します。
関節に痛みがある場合は無理に動かさず、動作を小さくしたり省いたりして構いません。

姿勢やバランスが不安定な場合
無理に立って行わず、安定した椅子や手すりの近くで行います。
立っているだけでもふらつく場合や転倒が増えている場合には、座って行う方法も検討しましょう。
転倒を繰り返している場合には、理学療法士などによる身体機能の評価を受けることをおすすめします。パーキンソン病に対する理学療法では、歩行、バランス、外的キュー、筋力などを個別に評価・介入することが推奨されています。
すくみ足がある場合
ラジオ体操中の足踏みや姿勢の切り替え、体操を始める際の移動などですくみ足が出る場合があります。
足が出にくくなったときは無理に急がず、一度止まって姿勢を整えます。
「1、2」と声に出す、一定のリズムを利用する、床の線をまたぐように一歩を出すなど、外的な手がかりが動き出しを助けることがあります。
ただし、すべての方に同じ方法が有効とは限りません。すくみ足による転倒がある場合は、主治医や理学療法士に相談しましょう。
疲れやすい場合
疲労はパーキンソン病でみられる非運動症状のひとつです。
疲れやすい場合は、
- 数種類だけ行う
- 途中で休憩する
- 第一をすべて行わない
- 座って行う
- 疲れにくい時間帯を選ぶ
などの調整をして構いません。
運動後に長時間動けなくなるほど疲れる場合は、運動量が多すぎる可能性があります。
急に疲れやすくなった場合や、強い息切れ、めまい、動悸などを伴う場合は、無理に運動を続けず医療機関に相談しましょう。

ラジオ体操だけでパーキンソン病の運動は十分?

ラジオ体操だけで、パーキンソン病に必要な運動をすべて補うことは難しいと考えられます。
Parkinson's FoundationとAmerican College of Sports Medicine(ACSM)の運動推奨では、有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性運動、バランス・敏捷性などを含む神経運動・機能的トレーニングを組み合わせることが推奨されています。
ラジオ体操だけですべての運動を補うことは難しい
ラジオ体操には全身のさまざまな動きが含まれていますが、
- 心肺機能や持久力を高める運動
- 筋肉に十分な負荷をかける運動
- バランス能力を重点的に練習する運動
- 歩幅や方向転換などの歩行練習
などは別に取り入れた方がよい場合があります。
ラジオ体操をしているから他の運動は必要ない、と考える必要はありません。
有酸素運動・筋力トレーニング・バランス練習も組み合わせる
パーキンソン病の運動では、異なる目的を持つ運動を組み合わせることが重要です。
例えば、
ラジオ体操+ウォーキング+筋力トレーニング+バランス練習
のように考えると分かりやすいでしょう。
最新の運動推奨では、有酸素運動は週3日以上、筋力トレーニングやバランス・機能的トレーニングは週2~3日以上などが目安として示されています。ただし、運動量は身体能力や病期に応じて個別に調整する必要があります。
最初からすべてを行う必要はありません。現在行っている運動を確認し、不足している要素を少しずつ加えていきましょう。
症状に合わせたリハビリや運動を取り入れる
パーキンソン病では、
- 歩幅が小さい
- すくみ足がある
- 前かがみになる
- 身体をひねりにくい
- 椅子から立ちにくい
- バランスを崩しやすい
など、困っていることが一人ひとり異なります。
理学療法士は、筋力や関節の動きだけでなく、姿勢、歩行、バランス、すくみ足、転倒歴などを確認し、その方に必要な運動を考えます。APTAのパーキンソン病理学療法ガイドラインでも、有酸素運動、筋力トレーニング、バランストレーニング、外的キュー、歩行訓練などが推奨されています。
ラジオ体操を運動習慣の土台のひとつとして活用しながら、自分の症状に合った運動を組み合わせることが大切です。
パーキンソン病とラジオ体操についてよくある質問
体調に問題がなく、安全に行える範囲であれば毎日行っても構いません。疲労や痛み、ふらつきが強い日は無理をせず、休憩したり運動量を減らしたりしましょう。
ラジオ体操第一は約3分です。最初から第一・第二を続けて行う必要はなく、まずは第一を自分のペースで行うところから始めるとよいでしょう。
はい。椅子に座っても、腕や肩、体幹、下肢を動かすことはできます。立位よりバランスや下肢への負荷は少なくなりますが、転倒が不安な方には安全に身体を動かす方法のひとつです。
強いふらつき、すくみ足、立ちくらみ、痛み、息切れ、過度な疲労などがある場合は注意が必要です。症状が強い場合や転倒を繰り返している場合は、主治医や理学療法士に相談しましょう。
まとめ|ラジオ体操を無理なく運動習慣に取り入れよう
ラジオ体操は、パーキンソン病の方にとって、全身を動かしながら運動習慣をつくりやすい身近な方法のひとつです。
ただし、ラジオ体操だけですべての運動を補えるわけではありません。ウォーキングなどの有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習なども組み合わせることが大切です。
また、動作緩慢、筋固縮、すくみ足、バランス低下、疲労などがある場合は、無理に見本どおり行う必要はありません。椅子や手すりを利用したり、身体を動かしやすい時間帯を選んだりしながら、安全に続けましょう。
大切なのはラジオ体操を完璧に行うことではなく、自分の身体の状態に合わせて、無理なく継続して身体を動かすことです。
参考文献・参考資料
- Parkinson’s Foundation, American College of Sports Medicine(ACSM). Parkinson’s Exercise Guidelines for Exercise Professionals. 2025/2026年更新運動推奨.
- Osborne JA, Botkin R, Colon-Semenza C, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022;102(4):pzab302.
- 岩佐由美.パーキンソン病患者が実施しているリハビリテーションの可視化―ケアの標準化に向けて―.日本健康医学会雑誌.2019;28(2):157-163.
- 名古屋大学医学部附属病院 パーキンソン病総合医療センター.「パーキンソン病とは―運動とリハビリテーション」.
- NPO法人全国ラジオ体操連盟.「ラジオ体操第一と第二」.






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