パーキンソン病になったらどうしたらいい?診断後に知っておきたいこと・気をつけること

「パーキンソン病と診断された。これからどうなってしまうのだろう」
診断を受けたばかりの方のなかには、病気の進行や将来の生活、仕事、家族のことなど、さまざまな不安を感じている方もいると思います。インターネットで調べるほど、「歩けなくなるのではないか」「今までの生活を続けられないのではないか」と心配になることもあるでしょう。
しかし、パーキンソン病と診断されたからといって、今までできていたことをすぐに諦める必要はありません。 症状や進み方には個人差があり、薬による治療だけでなく、運動やリハビリ、生活の工夫を取り入れながら生活していくことができます。
大切なのは、将来のことを一度にすべて考えるのではなく、今の状態を知り、必要なことから一つずつ取り組んでいくことです。
この記事では、パーキンソン病と診断されたらまず何をしたらよいのか、気をつけたいこと、運動・リハビリ、日常生活、利用できる制度などをわかりやすく解説します。
パーキンソン病と診断されたら、まず知っておきたいこと
パーキンソン病と診断されると、「これから急に動けなくなるのではないか」と不安になる方もいると思います。
しかし、病気の経過は一人ひとり異なります。まずは自分の状態を正しく知るところから始めましょう。
パーキンソン病はゆっくり進行することが多い病気
パーキンソン病は、脳の神経細胞が徐々に変化していく進行性の神経疾患です。
ただし、「進行性」という言葉は、短期間で急激にできないことが増えるという意味ではありません。一般的には年単位で症状が変化していきます。
その時々の状態に合わせて治療や生活を調整していくことが基本です。

症状や進み方には大きな個人差がある
パーキンソン病の症状や進行速度は、すべての人で同じではありません。
ふるえが目立つ方もいれば、動作の遅さや筋肉のこわばりが中心になる方もいます。また、便秘や睡眠の問題、気分の変化など、運動以外の症状がみられる場合もあります。
ほかの人の経過を、そのまま自分に当てはめる必要はありません。
診断されたからといって、すぐにできなくなるわけではない
診断を受けたからといって、仕事、家事、外出などがすぐにできなくなるわけではありません。
症状が軽い段階では、これまでと大きく変わらない生活を送れる方もいます。必要以上に生活を制限せず、自分の状態に合わせて調整していくことが大切です。
治療しながら仕事や趣味を続けている人もいる
症状や仕事内容によって調整が必要になることはありますが、治療を受けながら仕事や趣味、外出などを続けられる場合があります。
病名だけを理由に将来を決めるのではなく、「自分は何を続けたいのか」を主治医や家族とも共有しておきましょう。
パーキンソン病になったら、まず何をしたらいい?

診断されたばかりの時期は、「何から始めればいいかわからない」と感じることもあります。
最初から生活のすべてを変える必要はありません。まずは治療方針と現在の状態を確認することから始めましょう。
主治医と治療方針について相談する
パーキンソン病の治療は、年齢、症状、仕事や生活環境、ほかの病気の有無などを考慮して決められます。
「どの症状に対する薬なのか」「いつ服用するのか」「気になる変化があった場合はどうするのか」など、わからないことは主治医や薬剤師へ確認しておきましょう。
自分にどのような症状があるのか知る
パーキンソン病では、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋固縮などの運動症状だけでなく、便秘、睡眠障害、立ちくらみなどの非運動症状がみられることがあります。
「いつ」「どのような場面で」「何に困っているのか」を把握しておくと、診察やリハビリでも状態を伝えやすくなります。
薬を決められた方法で服用する
薬の種類や服用回数は人によって異なります。基本的には、処方された時間や量を守って服用しましょう。
「調子がよいから減らす」「効いていない気がするから増やす」といった自己判断での変更や中断は避け、気になることがあれば主治医へ相談してください。
身体を動かす習慣をできるだけ続ける
パーキンソン病だからといって、安静にして過ごした方がよいわけではありません。
診断初期から身体活動を保ち、運動を生活のなかに取り入れていくことが大切です。具体的な運動やリハビリについては後ほど詳しく解説します。
困っていることを家族や医療者に伝える
「朝は動きにくい」「眠れない」「外出が不安」など、診察室だけではわからない困りごともあります。
生活のなかで気になることがあれば、主治医だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士などにも伝えましょう。
パーキンソン病になったら気をつけること
生活のすべてを変える必要はありませんが、転倒や体調の変化など、早めに気づいた方がよいことがあります。
「禁止する」のではなく、安全に生活を続けるために注意するという考え方が大切です。
転倒しやすくなっていないか確認する
パーキンソン病では、動作緩慢や姿勢保持の障害、すくみ足などによって転倒しやすくなることがあります。
また、起立性低血圧による立ちくらみやふらつきも転倒につながります。
つまずきや方向転換の不安が増えてきた場合は、主治医や理学療法士へ相談しましょう。
動きにくい時間帯や症状の変化を記録する
薬の効き方などによって、1日のなかでも身体の動きやすさが変わる場合があります。
「何時ごろ動きにくいか」「薬を飲んでからどう変化するか」などを記録しておくと、治療を調整するときの参考になります。
便秘や睡眠など運動症状以外の変化にも注意する
便秘、睡眠障害、立ちくらみ、気分の変化などもパーキンソン病でみられる症状です。
ふるえや歩行だけでなく、生活に影響している変化があれば主治医へ伝えましょう。
食事や水分を極端に制限しない
パーキンソン病だからといって、特定の食品を一律に禁止する必要はありません。基本は、十分な栄養と水分をとり、バランスのよい食生活を続けることです。
レボドパを服用している方では、たんぱく質の摂り方が薬の効き方に影響する場合がありますが、自己判断で制限せず、気になる場合は主治医や管理栄養士へ相談しましょう。

無理をせず体調に合わせて生活する
運動は大切ですが、「頑張れば頑張るほどよい」というわけではありません。
疲労、痛み、ふらつき、睡眠不足などがある場合は、活動量を調整することも必要です。
無理をしないことと、必要以上に動かなくならないことのバランスを意識しましょう。
パーキンソン病になったら「やってはいけないこと」はある?

パーキンソン病だからといって、「絶対にしてはいけないこと」がたくさんあるわけではありません。
ただし、安全に治療や生活を続けるために避けたい行動はいくつかあります。
自己判断で薬を中断・変更しない
パーキンソン病の薬は、症状に合わせて種類や量、服用時間が調整されています。
効果や副作用が気になった場合も、自己判断で変更せず主治医へ相談しましょう。
転倒の危険がある運動を無理に行わない
難しい運動ほど効果が高いわけではありません。
ふらつきやすい状態で一人でバランス練習をするなど、転倒リスクの高い運動は避けましょう。
症状を恐れて身体を動かさなくならない
転倒への不安などから身体を動かす機会を極端に減らすと、筋力や体力の低下につながる可能性があります。
安全性を確保したうえで、その人に合った身体活動を続けることが大切です。
「治る」と断定する情報や治療法を鵜呑みにしない
現在、パーキンソン病を完全に治癒させることが確立された治療法はありません。
「これをすれば治る」「この食品だけで改善する」といった情報を見た場合は、医学的根拠があるかを確認しましょう。
新しい治療や健康食品を試す場合は、主治医や薬剤師への相談をおすすめします。
病気を理由にすべての活動を諦めない
仕事、旅行、趣味などを続けられるかどうかは、症状や内容によって異なります。
最初から「できない」と決めるのではなく、必要に応じて方法や環境を調整することを考えてみましょう。
パーキンソン病では早い段階から運動・リハビリを意識する

パーキンソン病では、薬による治療とともに、運動やリハビリが重要です。
有酸素運動、筋力トレーニング、歩行練習、バランス練習などには、身体機能の維持・改善に関するエビデンスがあります。
リハビリは動けなくなってから始めるものではない
「まだ歩けるからリハビリは必要ない」と考える方もいます。
しかし、リハビリは失った機能を取り戻すためだけのものではありません。
まだ十分に身体を動かせる段階から、身体機能を保ち、運動習慣をつくることも大切な目的です。
歩く・立つ・身体を大きく動かすことを意識する
パーキンソン病では、動作が小さくなったり、歩幅が狭くなったりすることがあります。
ウォーキングだけでなく、立ち上がる、方向転換する、腕を振るなど、日常生活で実際に使う動きを練習することも重要です。
筋力だけでなくバランスや柔軟性も大切
パーキンソン病の運動では、筋力だけでなく、
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
- バランス練習
- 柔軟性運動
- 歩行や日常動作の練習
などを組み合わせることが大切です。
無理なく継続できる運動を見つける
運動は一時的に頑張ることよりも、継続することが重要です。
ウォーキング、体操、筋力トレーニング、太極拳、ダンスなど、自分が続けやすい方法を選びましょう。
なお、運動によってパーキンソン病そのものの進行を確実に止められるとは言えません。一方で、身体機能やさまざまな症状への良い影響が報告されています。
必要に応じて理学療法士など専門職へ相談する
理学療法士は、筋力だけでなく、歩行、姿勢、バランス、柔軟性、日常生活で困っている動作などを確認し、その人に合った運動方法を考えます。
特に、転倒したことがある、すくみ足がある、運動方法がわからないといった場合は、一度専門職へ相談するとよいでしょう。
パーキンソン病の治療は薬だけではない
パーキンソン病の治療では薬物療法が中心となりますが、それだけですべての問題に対応するわけではありません。
薬物療法、運動・リハビリ、非運動症状への対応を組み合わせていくことが大切です。
薬物療法で症状をコントロールする
レボドパなどの薬を用いて、動作の遅さ、筋肉のこわばり、ふるえなどの症状を改善することを目指します。
薬は病気そのものを完全に治すものではなく、症状を調整し、生活しやすい状態をつくるために用いられます。
運動・リハビリを組み合わせる
薬によって動きやすくなった状態を、実際の歩行や日常生活につなげていくためにも運動やリハビリは重要です。
薬物療法と運動をどちらか一方にするのではなく、組み合わせて考えていきましょう。
睡眠・便秘・痛みなどにも対応する
パーキンソン病では、便秘、睡眠障害、立ちくらみ、痛み、気分の変化などが生活に影響する場合があります。
これらも治療の対象になるため、困っている症状は診察時に伝えましょう。
症状の変化に合わせて治療を調整していく
病気の経過によって、症状や薬の効き方が変化することがあります。
「以前より動きにくい」「薬が切れる時間がわかるようになった」などの変化があれば、主治医へ伝え、必要に応じて治療を調整します。
診断後の日常生活はどのように変えればいい?
診断後に生活を一度に大きく変える必要はありません。
症状や困りごとに応じて、必要になったところから暮らし方を調整していきましょう。
できていることまでやめる必要はない
家事や外出など、本人が安全にできている活動は続けることができます。
病名だけを理由に活動を制限するのではなく、自分の状態を見ながら判断することが大切です。
仕事や家事は無理のない範囲で続ける
動作に時間がかかる、疲れやすくなるなどの変化があれば、
- 休憩を入れる
- 動きやすい時間帯に行う
- 作業を分ける
- 道具や環境を工夫する
などの方法があります。
「続ける・やめる」の二択ではなく、続ける方法を考えることもできます。
趣味や外出など楽しみを持ち続ける
散歩、旅行、園芸、ゴルフ、友人との交流などは、生活の楽しみになるだけでなく、身体を動かす機会にもなります。
以前と同じ方法が難しくなった場合には、時間や場所、方法を調整してみましょう。

食事・睡眠・生活リズムを整える
基本となるのは、バランスのよい食事、適切な水分摂取、睡眠、規則的な生活です。
起床、食事、服薬、運動などの時間をある程度整えると、自分の症状の変化にも気づきやすくなります。
安全のために住環境を見直すことも大切
つまずきが増えた、夜間のトイレが不安、浴室でふらつくといった場合には、住環境を見直しましょう。
床の障害物を減らす、照明を確保する、必要に応じて手すりを検討するなどの方法があります。
パーキンソン病になったら必要な手続きは?
パーキンソン病は国の指定難病ですが、診断されたすべての方が同じ制度を利用するわけではありません。
年齢、症状、生活への影響、医療費などによって利用できる制度が異なります。
すぐにすべての制度を利用する必要があるわけではない
医療費助成、介護保険、障害年金、障害者手帳などには、それぞれ利用条件があります。
診断されたことだけで自動的に対象になるわけではありません。
指定難病の医療費助成を利用できる場合がある
パーキンソン病は指定難病6に指定されています。
原則としてHoehn & Yahr(ホーン・ヤール)重症度3度以上かつ生活機能障害度2度以上など、一定の条件を満たす場合に医療費助成の対象となります。
重症度基準を満たさなくても、医療費が一定額以上かかる「軽症高額該当」で対象になる場合があります。

介護保険を利用できる場合がある
65歳以上では、要介護・要支援認定を受ければ介護保険を利用できます。
また、40~64歳でも、パーキンソン病は介護保険の特定疾病に含まれているため、病気によって介護が必要な状態と認定された場合は対象となります。
障害年金や障害者手帳が対象になることもある
日常生活や仕事への影響が大きくなった場合は、障害年金の対象となる可能性があります。
身体機能の障害が一定の認定基準を満たした場合には、身体障害者手帳が交付される場合もあります。
障害年金と身体障害者手帳は別の制度であり、認定基準も異なります。
わからない場合は医療機関や自治体へ相談する
制度を診断直後にすべて理解する必要はありません。
病院の医療ソーシャルワーカー、市区町村の難病担当窓口、地域包括支援センター、年金事務所などに相談できます。
家族にも知っておいてほしいこと
家族も「どこまで手伝えばいいのか」と悩むことがあります。
基本となるのは、本人の安全を守りながら、できることはできるだけ本人に任せることです。
本人ができることまで代わりに行わない
動作が遅くなると、「手伝った方が早い」と感じる場面があります。
しかし、安全にできることであれば、本人が行う時間を確保することも大切です。
家族は「代わりに行う」だけではなく、本人が自分でできるための支え方を考えてみましょう。
動作に時間がかかることを理解する
動作緩慢によって、立ち上がり、歩行、着替え、食事などに以前より時間がかかる場合があります。
安全に問題がなければ、急かさず本人のペースを待つことも支援になります。
症状には日や時間帯による変化がある
薬の効き方によって、動きやすい時間と動きにくい時間がみられる場合があります。
「昨日できたのに今日はできない」ということもあるため、本人の努力不足と決めつけないことが大切です。
本人だけでなく家族も一人で抱え込まない
家族が「自分がすべて支えなければ」と抱え込む必要はありません。
医療や介護の専門職、地域包括支援センターなどを利用し、本人と家族の双方が無理なく生活できる方法を考えていきましょう。
これからのことが不安になったときに覚えておいてほしいこと
「いつまで歩けるのだろう」「仕事は続けられるのだろう」と、将来について不安になるのは自然なことです。
ただし、パーキンソン病の経過には個人差があります。
将来の状態を今すべて予測することはできない
「○年後には必ず歩けなくなる」といったように、診断時点で将来の状態を一律に予測することはできません。
インターネットで目にしたほかの人の経過が、そのまま自分にも当てはまるとは限りません。
「できなくなったこと」だけに目を向けない
リハビリでは、できなくなったことだけではなく、
何ができているのか、何を続けたいのか、そのために何が必要なのか
という視点も大切にします。
自分にとって大切な活動や目標を持つことは、これからの生活を考えるうえでも重要です。
病気と付き合いながら生活を調整していく
以前と同じ方法が難しくなっても、休憩を入れる、時間帯を変える、道具を使うなどの工夫によって続けられることがあります。
その時々の身体の状態に合わせて、生活の形を調整していきましょう。
困ったときに相談できる場所を持っておく
主治医、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど、困りごとによって相談できる専門職は異なります。
各都道府県・指定都市には難病相談支援センターもあります。
パーキンソン病との生活を、本人や家族だけで抱え込む必要はありません。
ちょっとしたことでも構いません。もし周りに相談しにくいということであれば、AXISにお気軽にご相談ください。
よくある質問
診断されたことだけを理由に、すぐ仕事を辞める必要はありません。 症状や仕事内容、安全面に合わせて勤務時間や業務内容を調整する方法もあります。
基本的には、早い段階から運動を習慣にすることが大切です。 体調や身体機能に合わせて無理なく継続しましょう。
診断されたことだけで一律に運転できなくなるわけではありません。動作の遅れ、眠気、認知機能などが運転に影響する場合は、主治医や警察の安全運転相談窓口へ相談してください。
一律に禁止される食品は基本的にありません。バランスのよい食事が基本です。レボドパと食事の関係が気になる場合は、主治医や管理栄養士へ相談しましょう。
診断されたからといって、すぐに介護が必要になるわけではありません。生活への影響をみながら、必要になった段階で支援を検討します。
まとめ
診断されたからといって今までの生活をすべて変える必要はない
症状や経過には個人差があります。今できている仕事や家事、趣味を必要以上に制限する必要はありません。
治療とともに運動やリハビリを早い段階から意識する
薬による治療に加えて、まだ動ける時期から運動習慣をつくり、身体機能を保つことが大切です。
症状に合わせて生活を少しずつ調整していく
困りごとが出てきた部分から、安全性や生活環境を少しずつ見直していきましょう。
今できることを大切にしながら自分らしい生活を続ける
将来のことを一度に考えすぎず、自分が続けたいことや大切にしたい生活に目を向けながら、必要な治療や支援を取り入れていきましょう。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会『パーキンソン病診療ガイドライン2018』
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html - 難病情報センター『パーキンソン病(指定難病6)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/169 - National Institute for Health and Care Excellence(NICE)『Parkinson’s disease in adults(NG71)』
https://www.nice.org.uk/guidance/ng71 - Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34963139/ - Parkinson’s Foundation『Parkinson’s Exercise Recommendations』
https://www.parkinson.org/sites/default/files/documents/Parkinsons-Exercise-Guidelines-1025.pdf






