パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いとは?症状・診断・治療をわかりやすく解説

「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は名前がよく似ているため、「同じ病気なの?」「何が違うの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
どちらも、動作が遅くなる、身体がこわばる、歩きにくくなる、バランスを崩しやすくなるなど、似た症状がみられることがあります。しかし、パーキンソン病は一つの神経変性疾患であるのに対し、パーキンソン症候群はパーキンソン病に似た症状を示すさまざまな疾患や病態を指して使われる言葉です。日本神経学会でも、パーキンソン病とは区別して、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、皮質基底核変性症、薬剤性・血管障害性パーキンソニズムなどをパーキンソン症候群として紹介しています。
症状が似ていても、その原因や経過、薬の効き方、治療方法などには違いがあります。また、発症初期には両者を明確に区別しにくく、経過をみながら診断が整理されていくこともあります。
リハビリについても、「診断名が違えばまったく別のことをする」というわけではありません。今現れている姿勢や歩行、バランス、筋力、身体の動かしにくさなどを評価し、その人に合った方法を考えることが大切です。
この記事では、パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いを中心に、症状、原因、代表的な疾患、診断、治療、リハビリについてわかりやすく解説します。
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いとは?

パーキンソン病とパーキンソン症候群は、名前も症状も似ていますが同じ意味ではありません。
簡単に整理すると、パーキンソン病は一つの病気の名前であり、パーキンソン症候群はパーキンソン病に似た運動症状を示す疾患や病態をまとめて表す言葉です。
パーキンソン病は一つの神経変性疾患
パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は、脳の神経細胞が徐々に変性していく神経変性疾患です。
特に、中脳にある「黒質」のドパミンを作る神経細胞が減少し、身体の動きを調整する神経回路がうまく働きにくくなります。その結果、動作緩慢、筋固縮、安静時振戦、歩行や姿勢の変化などが現れます。
また、運動症状だけでなく、便秘、睡眠障害、嗅覚低下、自律神経症状、気分の変化などの非運動症状がみられることもあります。
つまり、パーキンソン病は「似た症状の総称」ではなく、一つの疾患です。

パーキンソン症候群は似た症状を示す疾患・病態を指す言葉
一方、パーキンソン症候群とは、動作緩慢、筋固縮、小刻み歩行、すり足など、パーキンソン病に似た症状を示すさまざまな疾患や病態を指して使われます。
代表的なものには、
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- 多系統萎縮症(MSA)
- 大脳皮質基底核変性症(CBD)などの神経変性疾患
- 薬剤性パーキンソニズム
- 脳血管性パーキンソニズム
- 正常圧水頭症
などがあります。
見た目の動きが似ていても、その症状を起こしている原因まで同じとは限らないことが重要です。
「パーキンソニズム」とは症状の組み合わせを表す言葉
パーキンソン病について調べていると、「パーキンソニズム」という言葉もよく目にします。
パーキンソニズムとは、パーキンソン病でみられるような特徴的な運動症状の組み合わせを表す医学用語です。
国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)のパーキンソン病診断基準では、動作緩慢があり、さらに筋強剛または安静時振戦の少なくとも一つを伴うことを運動性パーキンソニズムの基本としています。
なお、「パーキンソン症候群」と「パーキンソニズム」は資料や医療現場によってほぼ同じ意味で使われることもあれば、パーキンソニズムを「症状」、パーキンソン症候群を「パーキンソン病以外の疾患群」という意味で使い分けることもあります。
当事者やご家族が理解するうえでは、まず「パーキンソニズム=パーキンソン病のような運動症状がみられる状態」と考えると分かりやすいでしょう。
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いを比較
| パーキンソン病 | パーキンソン症候群 | |
|---|---|---|
| 意味 | 一つの神経変性疾患 | パーキンソン病に似た症状を示す疾患・病態 |
| 主な症状 | 動作緩慢、筋固縮、安静時振戦、歩行・姿勢の変化など | 動作緩慢、筋固縮、歩行障害など似た症状 |
| 原因 | 黒質ドパミン神経細胞の変性など | 神経変性疾患、薬剤、脳血管障害、正常圧水頭症など |
| レボドパへの反応 | 良好なことが多い | 乏しい・限定的なことがある |
| 診断 | 症状、経過、薬への反応などから総合判断 | 原因となる疾患・病態の鑑別が必要 |
ただし、この表だけで自分の病気を判断することはできません。パーキンソン症候群でもレボドパが効く場合があり、パーキンソン病でも症状や経過には個人差があります。
なぜパーキンソン病とパーキンソン症候群は症状が似ている?
両者の症状が似ているのは、いずれも身体の動きを調整する脳の仕組みが影響を受け、共通したパーキンソニズムが現れるためです。
共通して「パーキンソニズム」がみられる
パーキンソン病でもパーキンソン症候群でも、動作緩慢や筋固縮などのパーキンソニズムがみられます。
つまり、パーキンソニズムが認められたからといって、必ずパーキンソン病というわけではありません。
まず特徴的な運動症状があることを確認し、その原因がパーキンソン病なのか、別の疾患や薬剤などによるものなのかを考えていきます。
動作緩慢や筋固縮など似た運動症状が現れる
共通してみられることのある症状には、
- 動作が遅くなる
- 筋肉がこわばる
- 歩幅が小さくなる
- すり足になる
- 腕の振りが小さくなる
- 姿勢やバランスが変化する
などがあります。
そのため、見た目の症状だけでは区別が難しいことがあります。


症状が似ていても原因となる病気は異なる
パーキンソン病では、主に黒質のドパミン神経細胞の変性が運動症状につながります。
一方、パーキンソン症候群では、PSPやMSAなどの神経変性疾患だけでなく、薬剤、脳血管障害、正常圧水頭症など、原因はさまざまです。
そのため、「動きが遅い」「身体が硬い」「歩幅が小さい」という症状だけからパーキンソン病と判断することはできません。
パーキンソン症候群にはどのような病気がある?

パーキンソン症候群には、神経変性疾患だけでなく、薬や脳血管障害などによってパーキンソニズムを示す状態も含まれます。
ここでは、パーキンソン病との鑑別で代表的なものを紹介します。
進行性核上性麻痺(PSP)
進行性核上性麻痺(PSP)は、代表的な神経変性疾患の一つです。
動作緩慢や筋固縮、歩行障害などがみられますが、典型的なPSPでは、比較的早い時期から転倒しやすくなることや、上下方向に目を動かしにくくなることなどが特徴です。
左右差が目立ちにくく、手足より首や体幹のこわばりが強くなる場合もあります。ただし、PSPには複数のタイプがあり、初期にはパーキンソン病によく似ることもあります。
多系統萎縮症(MSA)
多系統萎縮症(MSA)は、パーキンソニズム、小脳症状、自律神経障害などがさまざまな組み合わせで現れる神経変性疾患です。
特に、
- 強い立ちくらみを伴う起立性低血圧
- 排尿障害
- ふらつきや協調運動の障害
などが目立つことがあります。
パーキンソニズムを主体とするタイプでは、初期にパーキンソン病との区別が難しい場合があります。
大脳皮質基底核症候群(CBS)・大脳皮質基底核変性症(CBD)
大脳皮質基底核症候群(CBS)と大脳皮質基底核変性症(CBD)は、厳密には同じ意味ではありません。
CBSは特徴的な症状の組み合わせを表す臨床的な名称で、CBDは病理学的な疾患名です。
CBSでは身体の左右差が強く、
- 片側の手足の強いこわばり
- 失行
- ジストニア
- ミオクローヌス
- 他人の手徴候
などがみられることがあります。
CBDによってCBSが現れることがありますが、CBSの背景にはCBD以外の病気が存在する場合もあります。
薬剤性パーキンソニズム
使用している薬の影響によってパーキンソン病に似た症状が現れることを、薬剤性パーキンソニズムといいます。
ドパミンの働きを抑える作用をもつ一部の抗精神病薬などが原因となることがあります。動作緩慢や筋固縮、歩行の変化などが現れますが、パーキンソン病より左右差が目立ちにくい場合があります。
ただし、「薬が原因かもしれない」と考えて自己判断で服薬を中止してはいけません。気になる場合は処方した医師へ相談しましょう。
脳血管性パーキンソニズム
脳梗塞や脳の白質病変などに関連して、動作緩慢や歩行障害がみられることがあります。
特に下半身の歩行障害が目立つことがありますが、実際の病態は複雑で、パーキンソン病と脳血管障害が併存するケースもあります。
そのため、MRIなどの画像だけでなく、実際の症状や経過も含めて判断します。
正常圧水頭症などでも似た症状がみられることがある
正常圧水頭症、特に特発性正常圧水頭症(iNPH)では、歩幅が小さくなる、足が出にくくなる、方向転換が難しくなるなど、パーキンソン病に似た歩行障害がみられることがあります。
歩行障害に加えて、認知機能の低下や排尿障害を伴うこともあります。
重要なのは、正常圧水頭症では、適切に診断されれば髄液シャント術などによって症状の改善が期待できる場合があることです。
症状からパーキンソン病とパーキンソン症候群を見分けられる?
症状の現れ方には違いがみられることがありますが、症状だけで自分自身が両者を見分けることは困難です。
ここで紹介する特徴は、あくまで医師が診断を考える際の手がかりです。
パーキンソン病では左右差を伴って始まることが多い
パーキンソン病では、
- 片方の手から震え始める
- 片側の腕の振りが小さくなる
- 片側の足だけ歩幅が小さくなる
など、身体の片側から症状が始まることが多いのが特徴です。その後両側に症状が広がっても、左右差が残るケースがあります。
ただし、CBSのようにパーキンソン症候群でも強い左右差を示す疾患があるため、左右差だけでは診断できません。
早い時期から転倒やバランス障害が目立つ場合がある
パーキンソン病でも進行すると転倒しやすくなりますが、発症初期から何度も転倒する場合には、別のパーキンソン症候群を考える手がかりになります。
特にPSPでは、早期から姿勢不安定や転倒が目立つことがあります。国立長寿医療研究センターも、パーキンソン病では発症当初から転倒することは比較的まれで、早期から頻回に転倒する場合にはほかの疾患を考える必要があるとしています。
眼球運動や自律神経などに特徴的な症状が現れることもある
PSPでは上下方向への眼球運動障害、MSAでは強い起立性低血圧や排尿障害などが、診断の手がかりになることがあります。
ただし、便秘や立ちくらみ、排尿症状はパーキンソン病でもみられます。
重要なのは、症状があるかどうかだけでなく、いつ現れ、どの程度強く、ほかの症状とどのように組み合わさっているかです。
症状だけで自分で判断することは難しい
「右手が震えるからパーキンソン病」「転倒するからPSP」というように、一つの症状だけで病名を決めることはできません。
特に発症初期には疾患ごとの特徴が十分に現れていないことがあります。
気になる症状が続いている場合は、自己判断ではなく脳神経内科で相談することが大切です。
パーキンソン病とパーキンソン症候群はどのように診断する?

パーキンソン病には、一つの血液検査や画像検査だけで確定できる検査はありません。
症状、経過、神経学的診察、薬への反応、必要に応じた画像検査などを組み合わせて総合的に判断します。
MDSの診断基準でも、パーキンソニズムを確認したうえで、支持所見、除外基準、レッドフラッグなどを組み合わせて診断します。
症状やこれまでの経過を詳しく確認する
診断では、
- いつから症状が始まったか
- 片側から始まったか
- どのように症状が変化してきたか
- 転倒はいつ頃から増えたか
- 自律神経症状があるか
などを確認します。
現在の状態だけではなく、発症から現在までの時間的な変化が重要です。
神経学的診察から身体の動きを評価する
診察では、手足を繰り返し動かす、立ち上がる、歩く、方向転換するといった実際の動作を確認します。
動作緩慢、筋固縮、安静時振戦、姿勢、歩行、左右差などに加え、眼球運動や小脳機能なども評価します。
薬への反応も診断を考える材料になる
パーキンソン病では、レボドパによって運動症状が明らかに改善することが多く、良好なレボドパ反応はパーキンソン病を支持する重要な所見です。
一方、PSPやMSAなどでは効果が乏しい、または限定的な場合があります。
ただし、「効いたからパーキンソン病」「効かなかったからパーキンソン症候群」と単純に判断することはできません。
MRIやDATスキャンなどの検査が行われることもある
必要に応じて、頭部MRIやDATスキャン(ドパミントランスポーターSPECT)などが行われます。
MRIは、脳血管障害や正常圧水頭症など別の原因の確認や、PSP・MSAなどを示唆する特徴的な脳の変化を確認するために利用されます。
DATスキャンはドパミン神経系の機能低下を評価する検査ですが、パーキンソン病だけでなくPSPやMSAなどでも異常を示すことがあります。そのため、DATスキャンだけでパーキンソン病とすべてのパーキンソン症候群を区別することはできません。
一つの検査だけで診断が決まるわけではない
「MRIが正常だからパーキンソン病ではない」「DATスキャンが異常だからパーキンソン病」と単純に判断することはできません。
症状、診察、経過、薬への反応、検査結果を組み合わせて判断することが重要です。
経過をみながら診断が整理されることもある
発症初期ではパーキンソン病とPSP、MSAなどが似ており、最初から明確に区別できないことがあります。
その後、転倒、自律神経症状、眼球運動、薬への反応などの特徴が明らかになることで、診断がより具体的に整理されていきます。
パーキンソン病とパーキンソン症候群では治療に違いがある?
原因となる病気が異なるため、治療方法や薬の効き方にも違いがあります。
パーキンソン病ではレボドパなどの薬物療法が中心となる
パーキンソン病では、脳内のドパミンの働きを補うレボドパをはじめ、複数の薬物治療が使用されます。
レボドパは動作緩慢や筋固縮などの運動症状を改善する代表的な薬です。日本神経学会の診療ガイドラインでも、L-ドパをはじめとする薬物療法、外科治療、リハビリテーションなどが治療体系として整理されています。
パーキンソン症候群では薬の効果が異なることがある
PSPやMSAなどでもレボドパが使われることがありますが、一般にはパーキンソン病ほど明確な効果が得られないケースがあります。
一方で、一部では一定の効果がみられるため、「パーキンソン症候群にはパーキンソン病の薬がまったく効かない」というわけではありません。
原因によっては原因そのものに対する治療が行われる
薬剤性パーキンソニズムでは、原因となる可能性のある薬剤を確認し、必要に応じて医師が処方内容を見直します。
正常圧水頭症では、髄液シャント術などによって症状の改善が期待できる場合があります。
つまり、パーキンソン症状がある場合には、「パーキンソン病かどうか」だけではなく、なぜその症状が起きているのかを確認することが重要です。
症状を軽減し生活を維持する治療も重要
PSPやMSAなど、病気そのものを止める治療が確立していない疾患でも、治療する意味がないわけではありません。
歩行障害、筋固縮、起立性低血圧、排尿障害、嚥下障害など、一人ひとりの症状に対応しながら生活機能を維持していくことが重要です。
薬物療法だけでなく、リハビリ、転倒予防、生活環境の調整などを組み合わせていきます。
パーキンソン症候群でもリハビリは必要?

パーキンソン症候群でも、運動やリハビリは重要です。
日本神経学会も、パーキンソン病・パーキンソン症候群のどちらでもリハビリは大切であり、早期から身体を動かすことが重要としています。
PSPやMSA、CBSなどでは、パーキンソン病ほど運動療法に関する研究が豊富ではありません。そのため、パーキンソン病の運動方法をそのまま当てはめるのではなく、疾患の特徴と現在の身体機能に合わせることが大切です。PSP・CBSについても、理学療法や転倒予防などを含む多職種による症状管理が推奨されています。
診断名だけではなく今の身体機能を見ることが大切
リハビリでは、診断名だけで内容を決めるのではなく、
- 歩行速度や歩幅
- 姿勢
- バランス能力
- 筋力
- 柔軟性
- 立ち上がり
- 方向転換
- 転倒の有無
- 日常生活で困っている動作
などを確認します。
特に、「まだ歩けているからリハビリは必要ない」と考えるのではなく、動ける早い段階から身体機能を確認しておくことが大切です。
早期から運動習慣をつくることで、今ある身体機能をできるだけ維持していくという視点が重要になります。早期にから運動やリハビリを行うのと、身体機能が落ちてきてから開始するのでは、その先の日常生活が全く異なります。AXIS-PDでは、なるべく早い段階で運動を開始していただくことを推奨しています。
姿勢・バランス・歩行へのリハビリ
パーキンソン病やパーキンソン症候群では、
- 歩幅が小さくなる
- 方向転換が不安定になる
- 身体が傾く
- バランスを崩したときに立て直しにくい
などの変化がみられることがあります。
リハビリでは、状態に応じて歩行練習、重心移動、方向転換、姿勢制御などを練習します。
筋力や柔軟性を維持するための運動
病気そのものによる症状に加え、活動量が減ることで筋力、体力、柔軟性が低下することがあります。
そのため、
- 筋力トレーニング
- ストレッチ
- 関節を大きく動かす運動
- 有酸素運動
- 日常生活の中で身体を動かすこと
などを、身体機能や安全性に合わせて取り入れます。
転倒を防ぐための動作練習や環境調整
パーキンソン症候群では、疾患によって早い時期から転倒リスクが高くなる場合があります。
そのため、身体能力を高めるだけでなく、
- 立ち上がりや方向転換の練習
- 手すりの検討
- 段差や床環境の見直し
- 杖や歩行器などの検討
- 家族への介助方法の指導
なども重要です。PSP・CBSでは、早期から転倒リスクや補助具を検討することも管理の重要な要素とされています。
症状や進行に合わせてリハビリを調整する
身体の状態は時間とともに変化します。
以前できていた運動が難しくなった、転倒が増えた、立ちくらみが強くなったなどの変化があれば、運動内容を見直します。
一度決めた運動を続けるのではなく、その時の症状や身体機能に合わせて調整することが大切です。
そして繰り返しになりますが、パーキンソン病でもパーキンソン症候群でも、リハビリは「動けなくなってから始めるもの」ではありません。できるだけ早い段階から身体を動かす習慣をつくり、姿勢・歩行・バランス・筋力などを維持していくことが重要です。
パーキンソン症候群からパーキンソン病になることはある?
結論からいうと、パーキンソン症候群という病気が進行して、途中からパーキンソン病へ変化するという意味ではありません。
ただし、発症初期には診断が難しく、経過をみるなかで診断名が整理・変更される場合があります。
パーキンソン症候群がパーキンソン病へ変化するという意味ではない
たとえばPSPが時間の経過とともにパーキンソン病へ変化するわけではありません。MSAや脳血管性パーキンソニズムなども同様です。
それぞれ原因や病態の異なる疾患です。
ただし、「パーキンソン症候群」という言葉自体が広い意味で使われることがあるため、医師からその言葉を聞いた場合は、どのような意味で使われているのかを確認することも大切です。
初期には診断を区別することが難しい場合がある
発症初期では、
- 動作緩慢
- 筋固縮
- 小刻み歩行
- 歩行障害
など共通した症状がみられ、疾患ごとの特徴がまだ十分に現れていないことがあります。
そのため、最初の診察だけでは明確に区別できない場合があります。
経過をみるなかで診断が変更されることもある
その後、
- 薬への反応
- 転倒の時期
- 自律神経症状
- 眼球運動
- MRIなどの画像所見
が明らかになり、診断が整理されることがあります。
これは病気そのものが別の病気へ変わったのではなく、時間の経過によって病気の特徴が明確になったと考えると分かりやすいでしょう。
パーキンソン病以外を疑うのはどのようなとき?
パーキンソン病以外を考える手がかりはいくつかあります。
ただし、ここで紹介する特徴は自己診断のためのチェックリストではありません。
症状の進行が比較的速い
パーキンソン病は一般に年単位でゆっくりと変化します。
一方、PSPやMSAなどでは、パーキンソン病と比較して身体機能の変化が速い場合があります。
ただし進行速度には個人差があるため、「最近悪くなった」というだけで判断することはできません。
早い時期から転倒を繰り返す
パーキンソン病でも進行すると転倒しやすくなりますが、発症から早い時期に転倒を繰り返す場合には、PSPなど別の疾患を考える手がかりになります。
レボドパなどの薬が効きにくい
パーキンソン病ではレボドパへの良好な反応が特徴の一つです。
適切な治療を行っても運動症状への効果が乏しい場合には、ほかのパーキンソン症候群を考える材料になります。
ただし、パーキンソン症候群でも一定の効果を示す場合があり、パーキンソン病でもすべての症状が改善するわけではありません。
強い自律神経症状など運動以外の症状が目立つ
早期から強い起立性低血圧や排尿障害がある場合には、MSAなどを考える手がかりになります。
また、PSPでは眼球運動障害など、パーキンソン病では典型的ではない症状が組み合わさることがあります。
気になる変化があれば脳神経内科で相談する
特に、
- 身体の動きにくさが続いている
- 発症して間もないのに転倒を繰り返す
- 薬を飲んでも動きに変化が乏しい
- 強い立ちくらみや排尿障害がある
- 目を上下に動かしにくい
- 強いふらつきがある
などの場合は、診察時に主治医へ伝えましょう。
まだ診断を受けていない方で、動作緩慢、筋固縮、ふるえ、歩行の変化などが続いている場合は、脳神経内科への相談をおすすめします。
大切なのは病名を自分で決めることではなく、今起きている症状の原因を確認し、適切な治療やリハビリにつなげることです。
よくある質問
一概にどちらが重いとはいえません。パーキンソン症候群にはさまざまな病気があり、症状や進行の速さも異なります。病名だけでなく、現在の症状や生活への影響をみることが大切です。
原因によって異なります。PSPやMSAなどでは病気そのものを治す治療は現在確立していませんが、薬剤性パーキンソニズムや正常圧水頭症などでは、原因に応じた治療によって症状の改善が期待できる場合があります。
効く場合があります。ただし、パーキンソン病ほど明確な効果が得られないこともあります。薬への反応には個人差があるため、主治医が症状をみながら判断します。
はい。症状や安全性に合わせた運動・リハビリは重要です。できるだけ早い段階から身体を動かし、現在の身体機能を維持していくことが大切です。
MRIやDATスキャンなどが診断の手がかりになることはありますが、一つの検査だけですべてを区別することはできません。症状、経過、診察、薬への反応、画像検査などから総合的に判断します。
まとめ
パーキンソン病とパーキンソン症候群は似ているが同じ意味ではない
パーキンソン病は一つの神経変性疾患であり、パーキンソン症候群はパーキンソン病に似た症状を示すさまざまな疾患や病態を指す言葉です。
症状だけでなく経過や薬への反応・検査などから総合的に診断する
両者は症状だけで簡単に区別できるものではありません。症状の特徴や進行、レボドパへの反応、神経学的診察、MRIやDATスキャンなどを組み合わせて診断します。
パーキンソン症候群にはさまざまな原因や疾患がある
PSP、MSA、CBSなどの神経変性疾患だけでなく、薬剤、脳血管障害、正常圧水頭症など、さまざまな原因があります。原因によって治療方法や経過も異なります。
診断名だけではなく身体機能に合わせたリハビリが大切
パーキンソン病でもパーキンソン症候群でも、姿勢、歩行、バランス、筋力などを確認し、その人に合った運動やリハビリを行うことが大切です。
症状が進んでからではなく、できるだけ早い段階から身体を動かす習慣をつくり、今ある機能を維持していく視点が重要です。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会|パーキンソン症候群
パーキンソン病との鑑別、PSP、MSA、CBD、薬剤性・血管障害性パーキンソニズム、正常圧水頭症、早期からのリハビリについて解説。 - 日本神経学会|パーキンソン病診療ガイドライン2018
パーキンソン病の薬物療法、外科治療、リハビリテーション、早期治療などをまとめた国内診療ガイドライン。 - 国立長寿医療研究センター|パーキンソン病とパーキンソン症候群:「パーキンソン病らしさ」とは?
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いや代表疾患、症状、鑑別、検査について解説。2025年1月1日公開。 - Postuma RB, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson's disease. Movement Disorders. 2015;30(12):1591-1601.
パーキンソニズムの定義、支持基準、除外基準、レッドフラッグなどを示した国際的なパーキンソン病臨床診断基準。 - Bluett B, et al. Best Practices in the Clinical Management of Progressive Supranuclear Palsy and Corticobasal Syndrome: A Consensus Statement of the CurePSP Centers of Care. Frontiers in Neurology. 2021;12:694872.
PSP・CBSに対する治療、歩行・バランス、転倒予防、理学療法などをまとめたコンセンサスステートメント。





