パーキンソン病のバランス訓練|バランスが悪くなる原因・評価・リハビリを理学療法士が解説

パーキンソン病では、病気の経過とともに「ふらつきやすくなった」「方向転換でバランスを崩す」「立ち上がったあとに身体が安定しない」といった変化がみられることがあります。
こうしたバランスの問題には、単なる筋力低下だけでなく、姿勢を保つための反応、重心を移動する能力、身体の動かしにくさ、歩行や姿勢の変化など、さまざまな要因が関係します。そのため、「足腰を鍛えればよい」「片足立ちをすればよい」と単純に考えるのではなく、どのような場面でバランスを崩しているのかを確認することが大切です。
また、バランス能力は「立っていられるか」だけで評価するものではありません。立ち上がり、方向転換、歩行、物を取る動作など、日常生活のさまざまな場面で身体を安定させる能力が必要になります。
この記事では、パーキンソン病でバランスが悪くなる原因、姿勢反射障害との関係、バランス能力の評価方法、リハビリやバランス訓練の考え方について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
バランスの低下が気になっている方や、ご家族が「以前よりふらつきが増えた」と感じている場合に、身体の状態や運動を考えるための参考にしてください。
パーキンソン病ではバランスが悪くなることがある
パーキンソン病では、症状の経過とともに身体のバランスを保ちにくくなることがあります。
ただし、バランスの問題は「ふらふらして立てない」という形だけで現れるわけではありません。
「立ち上がったあとに一度ふらつく」「方向転換で足がついてこない」「後ろへバランスを崩したときに立て直しにくい」など、特定の動作で初めて気づくこともあります。
バランス能力は立っていられるかだけではない
バランス能力というと、「片足立ちが何秒できるか」「ふらつかずに立っていられるか」をイメージする方も多いかもしれません。
しかし実際の生活では、身体を安定させながら動く能力も重要です。
たとえば、前にある物を取るときには重心を移動しながら姿勢を保ちます。大きくバランスを崩した場合には、一歩足を出して転倒を防ぐ必要があります。
リハビリでは、静かに立つ能力だけでなく、重心を動かす能力、バランスを崩したときの反応、動きながら姿勢を保つ能力なども確認します。
立ち上がり・方向転換・歩行などさまざまな場面で必要になる
椅子から立ち上がるときには、身体を前方へ移動させてから重心を足の上へ移す必要があります。
方向転換では、左右の足へ重心を移しながら身体の向きを変えます。歩行では、一歩ごとに左右の足へ重心を移動させています。
そのため、パーキンソン病でバランス能力が低下すると、立ち上がり、方向転換、歩き始め、停止、後ろ歩き、人や物を避ける動作などで不安定さが現れることがあります。
重要なのは、「バランスが悪いかどうか」だけでなく、どの動作の、どの場面で不安定になるのかを確認することです。
バランス低下は転倒につながることもある
パーキンソン病における姿勢の不安定性は、転倒と関係する重要な問題です。
転倒すると打撲や骨折につながるだけでなく、「また転ぶのではないか」という不安から外出や運動を控え、活動量が低下する場合もあります。
一方で、バランスが悪くなったからといって、運動そのものを避ける必要はありません。
パーキンソン病に対するリハビリでは、バランストレーニングは姿勢制御や歩行、移動能力などの改善を目的として推奨されています。
大切なのは、現在の身体機能や転倒リスクを確認したうえで、安全に取り組める方法を選ぶことです。

パーキンソン病でバランスが悪くなる原因

パーキンソン病のバランス低下は、一つの原因だけで起こるわけではありません。
姿勢を立て直す反応、動作の速さ、筋肉のこわばり、重心移動、筋力、歩行や姿勢の変化などが複合的に関係します。
姿勢反射が低下して身体を立て直しにくくなる
私たちは身体が傾いたとき、無意識に姿勢を戻したり、一歩足を出したりして転倒を防いでいます。
パーキンソン病では、このような反応が遅くなったり、十分な大きさの一歩が出にくくなったりすることがあります。
特に後方へ大きくバランスを崩したときに、身体を立て直しにくくなる場合があります。
動作緩慢によって素早く足を出しにくくなる
バランスを大きく崩したときには、必要な方向へ素早く足を踏み出すことが重要です。
パーキンソン病では動作緩慢によって動きが小さく、遅くなるため、身体が傾いてから足を出すまでの対応が遅れることがあります。
普段は安定して歩けていても、予期しないバランスの崩れに対応しにくい場合があります。
筋固縮によって身体を柔軟に動かしにくくなる
バランスを保つためには、足首、股関節、体幹などを状況に応じて柔軟に使います。
筋固縮によって身体がこわばると、こうした姿勢の細かな調整が行いにくくなることがあります。

重心をスムーズに移動しにくくなる
歩く、立ち上がる、方向を変えるといった動作では、身体の重心を前後左右へ移動させています。
パーキンソン病では重心移動が小さくなったり、次の動作へ移るための姿勢調整が十分に行いにくくなったりする場合があります。
そのため、方向転換や一歩目を踏み出す場面などで不安定さが目立つことがあります。
体幹や下肢の筋力・柔軟性が低下する
パーキンソン病そのものに加えて、活動量の低下や加齢などによって、体幹や下肢の筋力、関節の柔軟性が低下することがあります。
立ち上がる、一歩踏み出す、片脚で身体を支えるといった動作には一定の筋力や可動性が必要です。
そのため、筋力や柔軟性の低下もバランスに影響する要因として確認する必要があります。

歩行や姿勢の変化もバランスに影響する
パーキンソン病では、歩幅が小さくなる、前かがみになる、腕振りが小さくなる、方向転換に時間がかかるなどの変化がみられることがあります。
こうした歩行や姿勢の変化も、動いているときのバランスに影響します。
特にすくみ足や方向転換の難しさがある場合には、転倒リスクも含めて個別に確認することが重要です。
オン・オフによってバランス能力が変化することもある
レボドパなどの薬が効いている「オン」の時間と、効果が弱くなる「オフ」の時間では、動作緩慢や筋固縮、歩きやすさなどが変化することがあります。
その結果、バランスのとりやすさが変わる方もいます。
ただし、姿勢の不安定さは薬によって必ず改善するわけではなく、薬への反応には個人差があります。
「いつ、どのような場面で不安定になるのか」を確認することが、その人に合ったバランス訓練を考えるうえで重要です。

姿勢反射障害とは?
姿勢反射障害とは、身体のバランスが崩れたときに姿勢を立て直す反応が十分に働きにくくなる状態です。
パーキンソン病でみられる姿勢・バランスの問題の一つで、転倒にも関係します。
バランスを崩したときに身体を立て直す反応
わずかな身体の揺れであれば、足首や股関節などを使って姿勢を調整します。
さらに大きくバランスを崩した場合には、一歩足を踏み出すことで転倒を防ぎます。
このように、身体が不安定になったときに姿勢を立て直す反応は、安全に立ったり歩いたりするために重要です。
パーキンソン病では姿勢反射が低下することがある
パーキンソン病では、バランスを崩したときの反応が遅くなったり、一歩が小さくなったり、何歩も足を出さなければ立て直せなくなったりすることがあります。
リハビリでは、単に「立っていられるか」だけでなく、予期しないバランスの崩れに対して身体をどのように立て直せるかも確認します。ふらつくとバランスが悪いのでは?と考える人も多いですが、決してそうではなく、ふらついても立て直すことができればバランスは比較的良いと判断できます。
姿勢反射障害と「ふらつき」は同じではない
「ふらつく」「バランスが悪い」という症状が、すべて姿勢反射障害によるとは限りません。
筋力低下、すくみ足、歩行障害、起立性低血圧などによっても、本人には「ふらつき」と感じられることがあります。
そのため、「立っているだけでふらつく」のか、「方向転換で不安定になる」のか、「後ろへバランスを崩したときに足が出ない」のかを分けて考えることが大切です。
姿勢反射障害の程度には個人差がある
パーキンソン病だからといって、すべての人に同じ程度の姿勢反射障害がみられるわけではありません。
静かに立つことはできても、方向転換や後方へのバランス反応など、特定の場面だけで問題が現れる場合もあります。
そのため、「バランスが悪い」という一つの言葉で判断せず、どの姿勢制御が苦手なのかを評価することが重要です。
バランスの悪さはどのような場面で現れる?
パーキンソン病のバランス低下は、常にふらついているとは限りません。
普段は安定していても、重心を大きく動かす、身体の向きを変える、動作を開始・終了するといった場面で不安定さが目立つことがあります。
立ち上がった直後にふらつく
椅子から立ち上がるときには、重心を前方へ移しながら身体を持ち上げ、最後に足の上へ身体を安定させる必要があります。
この重心移動や姿勢の切り替えがうまくいかず、立ち上がった直後にふらつく場合があります。
ただし、めまい、目の前が暗くなる、気が遠くなるような感覚を伴う場合は、起立性低血圧なども考える必要があります。
方向転換するときにバランスを崩す
方向転換では、足を踏み替えながら重心と身体の向きを同時に変えます。
パーキンソン病では、方向転換で歩幅が小さくなったり、細かい歩数が増えたりすることがあります。
すくみ足がある方では、方向転換がすくみ足のきっかけになることもあります。
歩き始めや停止するときに不安定になる
歩き始める前には、一歩目を出すための姿勢調整が必要です。
また、停止するときには歩いている状態から安定した立位へ切り替えます。
パーキンソン病では、このような動作を開始・終了するときの姿勢調整が難しくなることがあります。
後ろ向きや横方向へ動くと不安定になる
日常生活では、前に歩くだけではありません。
椅子から離れるために後ろへ下がったり、狭い場所で横へ移動したりすることもあります。
前方への歩行は比較的安定していても、後方や横方向へのステップになると足が小さくなり、身体を支えにくくなる方もいます。
人や物を避けながら歩くとバランスを崩す
人混みで人を避ける、会話をしながら歩く、物を持ちながら移動するといった場面では、歩くこと以外にも注意を向ける必要があります。
このような**二重課題(デュアルタスク)**では、パーキンソン病の方の歩行やバランスが変化することがあります。
疲労やオフの時間帯に不安定になることもある
疲れているときや、薬の効果が弱くなるオフの時間帯には、動作緩慢や筋固縮、すくみ足などが強くなる場合があります。
「どこで不安定だったか」だけでなく、時間帯、薬を服用してからの時間、疲労の程度なども記録しておくと、症状を把握する手がかりになります。
パーキンソン病のバランス能力はどのように評価する?

パーキンソン病のバランス能力を評価するときは、立っていられるかだけでなく、重心移動、立ち上がり、方向転換、歩行、バランスを崩したときの反応などを総合的に確認します。
一つのテストだけでバランス能力は判断できない
バランスには、静かに立つ能力、動きながら姿勢を保つ能力、動く前に姿勢を調整する能力、バランスを崩したときに立て直す能力など、複数の要素があります。
そのため、一つのテストの点数だけで「バランスが良い・悪い」と判断することはできません。
転倒歴や実際に困っている動作も含めて評価することが大切です。
Berg Balance Scale(BBS)
Berg Balance Scale(BBS)は、立ち上がり、立位保持、前方へ手を伸ばす、方向転換など14項目の動作からバランス能力を評価する尺度です。
パーキンソン病でも広く用いられています。
一方で、比較的バランス能力が保たれている方では高得点になりやすく、細かなバランス障害を捉えにくい場合があります。
Mini-BESTest
Mini-BESTestは、動的なバランス能力を多面的に評価する14項目のテストです。
姿勢を事前に調整する能力、バランスを崩したときの反応、感覚条件が変化したときの姿勢制御、歩行中のバランスなどを確認します。
パーキンソン病のバランス機能を詳しく評価する方法の一つです。
Timed Up and Go Test(TUG)
Timed Up and Go Test(TUG)は、椅子から立ち上がり、3m歩き、方向転換して戻り、再び椅子に座るまでの時間を測定します。
TUGはバランスだけを測る検査ではなく、立ち上がり・歩行・方向転換を含めた移動能力を確認する評価です。
時間だけでなく、歩幅や方向転換の方法、すくみ足の有無なども重要な情報になります。
デイサービスなどでは、TUGを測定することが多いです。TUGは最大のスピードで測定することが求められますが、AXIS-PDでは日常生活で普段動いているスピードを測定することのほうが意味があると考えています。
立ち上がり・方向転換・歩行など実際の動作も確認する
評価テストでは問題が少なくても、実際の生活では「狭い場所で方向転換すると転びそうになる」「急いで立ち上がるとふらつく」といった問題がみられることがあります。
そのためリハビリでは、本人が実際に困っている動作を確認することも重要です。
評価結果をバランス訓練につなげることが大切
評価の目的は点数をつけることだけではありません。
「重心移動が苦手なのか」「後方へ崩れたときに足が出にくいのか」「方向転換で不安定になるのか」などを整理し、その人に必要なバランス訓練を選ぶために評価を行います。
パーキンソン病のバランス訓練では何を行う?

パーキンソン病のバランス訓練では、単にふらつかないように立つだけでなく、重心を動かす、一歩踏み出す、方向を変える、歩きながら姿勢を保つなど、実際の生活に必要な能力を練習します。
安定した立位を保つ練習
両足で安定して立つことはバランス訓練の基本です。
足の幅や手の支えなどを変えることで難易度を調整します。
ただし、不安定な場所に立つほど効果が高いわけではありません。安全に姿勢を保てる範囲から始めます。
前後左右へ重心を移動する練習
左右の足へ交互に体重を乗せる、前にある物へ手を伸ばすなど、安全に戻れる範囲で重心を動かす練習を行います。
こうした重心移動は、立ち上がりや歩行、方向転換にも必要です。
一歩踏み出して身体を支える練習
バランスを大きく崩したときには、足を一歩出して身体を支える必要があります。
前・横・後ろへ一歩踏み出して戻る練習などによって、必要な方向へステップする能力を練習します。
特に後方へのステップは転倒リスクが高くなるため、安全を確保して行うことが重要です。
方向転換やステップの練習
横へのステップ、複数方向へのステップ、数歩に分けた方向転換などを練習します。
すくみ足がある場合には、無理に速く方向転換するのではなく、症状に合わせた方法を選びます。
歩きながらバランスを保つ練習
歩幅や速度を変える、停止と開始を繰り返す、障害物を避けるなど、動きながら身体を安定させる練習も行います。
日常生活に近い動作を取り入れる
バランストレーニングの目的は、テストの点数を上げることではなく、生活の中で安全に動けるようにすることです。
椅子からの立ち上がり、方向転換、物を取る、狭い場所を移動するなど、本人が実際に困っている動作を練習に取り入れます。
本人の能力に合わせて難易度を調整する
同じパーキンソン病でも、苦手なバランス機能や転倒リスクは異なります。
そのため、難しい運動を一律に行うのではなく、評価で見つかった課題に合わせて運動内容や難易度を調整することが大切です。
自宅でバランス訓練を行うときの考え方
自宅でバランス訓練を行う場合は、難しい運動に挑戦することよりも、安全に繰り返せる内容を選ぶことが重要です。
難しい運動ほど効果が高いわけではない
片足立ちや不安定な場所に立つなど、難しい運動ほどバランスに効くとは限りません。
難易度が高すぎると身体を固めたり、十分に重心を動かせなかったりすることがあります。
まずは両足で安定して立つ、左右へ体重を移す、一歩踏み出して戻るなど、安全にできる運動から始めましょう。
支えを利用して安全を確保する
必要に応じて手すりや安定した机などを利用します。
支えを使うとバランス訓練にならないわけではありません。
まず安全を確保し、そのうえで支える手を軽くするなど、段階的に難易度を調整します。
キャスター付きの椅子など、体重をかけると動く物は支えとして使用しないようにしてください。
広い範囲へ重心を動かすことを意識する
パーキンソン病では動きが小さくなりやすいため、安全にコントロールできる範囲で前後左右へ重心を動かすことも大切です。
ただし、大きく身体を傾けること自体が目的ではありません。
自分で安定した位置へ戻れる範囲で行うことが基本です。
ステップ練習は転倒しない環境で行う
前後左右へのステップ練習は、バランスを崩したときの対応や方向転換、歩行につながります。
一方で転倒リスクもあるため、床に物がない場所を選び、必要に応じて手すりなどを利用します。
特に後方へのステップや、すくみ足が出やすい動作は無理に一人で行わないことが大切です。
毎日無理に行うより継続できる方法を選ぶ
バランス訓練は「毎日必ず何分」と一律に決める必要はありません。
体調や薬の効き方、体力などに合わせ、無理なく継続できる方法を選びます。
バランス訓練だけを行えばよいわけではない
パーキンソン病のバランスには、筋力、柔軟性、歩行能力、体力なども関係します。
そのため、バランス訓練だけに偏らず、複数の運動を組み合わせることが大切です。
筋力トレーニングも組み合わせる
立ち上がる、一歩踏み出す、片脚で身体を支えるといった動作には、下肢や体幹の筋力が必要です。
スクワットや立ち上がり練習など、本人の能力に合った筋力トレーニングを組み合わせます。
柔軟性や体幹の動きも確認する
筋固縮や活動量の低下によって、体幹や股関節、足関節の動きが小さくなると、重心移動もしにくくなります。
そのため、筋力だけでなく関節の動きや体幹の柔軟性も確認します。
歩行練習も重要
歩行は、一歩ごとに左右の足へ重心を移しながら身体を前へ進める動作です。
そのため、歩行は動的なバランスと深く関係しています。
歩幅が小さい、方向転換が苦手、すくみ足がある場合などは、それぞれの問題に合わせた歩行練習を行います。
有酸素運動も継続して取り入れる
ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動は、パーキンソン病における体力や歩行能力、身体機能の維持・改善を目的として推奨されています。
バランス訓練とは目的が異なりますが、身体全体の活動性や持久力を保つことは、安全に動き続けるための土台になります。
太極拳などバランスを使う運動も選択肢になる
太極拳は、ゆっくりと前後左右へ重心を移動しながら姿勢を保つ運動です。
パーキンソン病を対象とした研究でも、バランス能力や移動能力などへの効果が検討されています。
ただし、太極拳だけを行えば十分というわけではありません。
本人の身体機能や目的に合わせて、バランス訓練、筋力トレーニング、歩行、有酸素運動などを組み合わせることが大切です。

バランス訓練を行うときの注意点
バランス訓練は、姿勢制御や歩行、移動能力などの改善を目的として行われますが、転倒リスクへの配慮が欠かせません。
転倒リスクが高い場合は一人で行わない
最近転倒した、バランスを崩しても足が出ない、支えがないと立ちにくい場合などは、一人で難しいバランス訓練を行わないようにしましょう。
特に片足立ち、後方へのステップ、大きな重心移動などは注意が必要です。
すくみ足や方向転換が苦手な場合は注意する
方向転換や狭い場所などですくみ足が起こる場合、無理に素早い方向転換や複雑なステップを行うと、バランスを崩すことがあります。
必要に応じて、リズムや床の目印などの外的キューを活用した歩行練習を組み合わせます。
起立性低血圧によるふらつきと区別する
立ったときの「ふらつき」が、すべてバランス能力の低下によるものとは限りません。
立ち上がったときに、めまい、立ちくらみ、視界が暗くなる、気が遠くなるような症状がある場合には、起立性低血圧なども考える必要があります。
このような症状がある場合は、単純にバランス訓練を増やすのではなく、主治医へ相談しましょう。
オフの時間帯や体調の悪い日は無理をしない
オフの時間帯には動作緩慢や筋固縮、すくみ足などが強くなり、普段より動きにくくなることがあります。
また、疲労や睡眠不足、発熱、脱水などによっても安全に運動できる状態は変わります。
普段できる運動が難しく感じる日は、運動量や難易度を下げる、休むといった調整も必要です。
転倒が増えた場合は専門職へ相談する
転倒には、バランス能力だけでなく、すくみ足、筋力、姿勢、薬の効き方、起立性低血圧、住環境など複数の要因が関係します。
そのため、転倒が増えたからといって、単純にバランス訓練を増やせばよいとは限りません。
主治医や理学療法士などに相談し、「どの場面で」「なぜ転倒しているのか」を確認したうえで対策を考えることが大切です。
よくある質問
改善が期待できる場合があります。バランストレーニングは、姿勢制御や歩行、移動能力の改善を目的として推奨されています。ただし、効果には個人差があり、症状や転倒リスクに合わせた内容を選ぶことが大切です。
必ずしも毎日行う必要はありません。体調や薬の効き方、運動強度を考えながら、無理なく継続できる頻度で行うことが大切です。
片足立ちもバランス訓練の一つです。ただし、パーキンソン病のバランスには重心移動、ステップ、方向転換、歩行など複数の能力が関係するため、片足立ちだけで十分とは限りません。
すべての方におすすめできるわけではありません。不安定な器具を使うことで転倒リスクが高くなる場合があります。使用する場合は、身体機能や転倒リスクを確認し、安全な環境で行うことが重要です。
自己判断ですべての運動を中止する必要はありません。ただし、転倒が増えた場合は運動内容を見直し、主治医や理学療法士などに相談してください。転倒の原因を確認したうえで、安全に続けられる方法へ調整することが大切です。
まとめ
パーキンソン病のバランス低下には複数の要因が関係する
パーキンソン病のバランス低下には、姿勢反射障害、動作緩慢、筋固縮、重心移動の難しさ、筋力や歩行の変化など、複数の要因が関係します。
バランス能力は姿勢・重心移動・ステップ・歩行などを総合して評価する
バランスは「立っていられるか」だけでは判断できません。立ち上がり、重心移動、ステップ、方向転換、歩行などを含めて総合的に評価することが大切です。
評価に合わせてバランス訓練を行うことが大切
苦手な動作やバランス機能は人によって異なります。評価結果をもとに、立位、重心移動、ステップ、歩行など必要な訓練を組み合わせていきます。
転倒リスクに配慮しながら安全に継続する
バランス訓練は、難しい運動を行うことが目的ではありません。転倒リスクや体調、薬の効き方に配慮しながら、安全に継続できる方法を選ぶことが重要です。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会.パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html - Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022;102(4):pzab302.
https://academic.oup.com/ptj/article/102/4/pzab302/6485202 - Qutubuddin AA, et al. Validating the Berg Balance Scale for patients with Parkinson's disease: a key to rehabilitation evaluation. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(4):789-792.
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