パーキンソン病のジストニアとは?症状・原因・ジスキネジアとの違い、治療・リハビリを解説

パーキンソン病では、手足の震えや動きにくさだけでなく、筋肉が自分の意思とは関係なく強く収縮し、足の指が曲がったり、足首や身体がねじれたりする「ジストニア」がみられることがあります。
ジストニアは痛みを伴うこともあり、特に薬の効果が弱くなるOFF時や、朝起きた直後に症状が目立つことがあります。一方で、身体がくねくねと動く「ジスキネジア」や、パーキンソン病でよくみられる筋肉のこわばりと区別しにくい場合もあります。
この記事では、パーキンソン病でみられるジストニアについて、主な症状や原因、ジスキネジアとの違い、治療方法、リハビリで考えたいポイントまでわかりやすく解説します。
パーキンソン病のジストニアとは?
ジストニアは筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する症状
ジストニアとは、筋肉が自分の意思とは関係なく持続的または反復的に収縮し、身体の一部がねじれたり、繰り返し動いたり、特徴的な姿勢になったりする運動症状です。
たとえば足では、
- 足の指が強く曲がる
- 親指が反り返る
- 足首が内側にねじれる
といった症状がみられます。
パーキンソン病でみられる「筋固縮(こわばり)」も筋肉が硬く感じられる症状ですが、ジストニアとは同じではありません。ジストニアでは、筋肉の異常な収縮によって身体の形や姿勢が変化することが特徴です。

パーキンソン病でもジストニアがみられることがある
ジストニアは独立した疾患として起こることもありますが、パーキンソン病に伴って現れることもあります。
パーキンソン病では特に足部にみられることがあり、薬の効果が弱くなるOFFの時間帯や早朝に症状が目立つ場合があります。一方で、薬が効いている時間帯などに起こることもあり、「ジストニア=薬の副作用」と単純に考えることはできません。
痛みや歩きにくさを伴うこともある
ジストニアでは筋肉が強く収縮するため、つるような痛みや締めつけられるような痛みを伴うことがあります。
足の指が強く曲がったり、足首が内側にねじれたりすると、足裏を床につけにくくなり、立つ・歩くといった動作にも影響する場合があります。
理学療法士の視点では、ジストニアの形だけでなく、安静時と歩行時で変化するか、左右差があるか、痛みや歩行にどの程度影響しているかまで確認することが重要です。
パーキンソン病でみられるジストニアの主な症状

足の指が曲がる・反り返る
パーキンソン病の足部ジストニアでは、複数の足の指が強く下向きに曲がったり、親指だけが反り返ったりすることがあります。
自分で力を抜こうとしても戻しにくく、靴の中で指が当たり、痛みにつながる場合もあります。
足首や足が内側にねじれる
足の指だけでなく、足首が下向きになりながら内側へねじれることもあります。
この状態で立ったり歩いたりすると、足裏全体を床につけにくくなり、歩幅が小さくなったり、バランスを崩しやすくなったりすることがあります。
首や体幹にジストニアが起こることもある
ジストニアは足だけでなく、首や体幹に現れることもあります。
首では、頭が一定方向を向く、横に傾く、前方へ引かれるといった姿勢がみられる場合があります。
ただし、パーキンソン病でみられる前かがみや身体の傾きは、ジストニアだけでなく、筋固縮、姿勢制御の障害、感覚の問題、筋骨格系の変化など複数の要因が関係します。
そのため、「身体が傾いている=ジストニア」と自己判断しないことが大切です。
ジストニアによって痛みが生じることもある
ジストニアによる強い筋収縮は、痛みの原因になることがあります。
特に足部では、足趾や足首のねじれによって、立位や歩行時に強い痛みを感じる場合があります。
痛みが強い場合や歩きにくさが続く場合には、無理にストレッチで伸ばそうとせず、主治医や専門職に相談しましょう。
なぜパーキンソン病でジストニアが起こる?
ドパミンと運動を調節する神経回路の関係
パーキンソン病では、脳の黒質にあるドパミンをつくる神経細胞が減少し、運動の調節に関わる神経回路の働きが変化します。
ジストニアについても、大脳基底核だけでなく、小脳や大脳皮質など複数の運動ネットワークが関係していると考えられています。
そのため、「ドパミンが少ないから筋肉が縮む」という単純な仕組みではなく、身体の動きを調節する神経ネットワークの変化が関係すると考えられています。

薬の効き目が弱くなるOFF時に起こることがある
パーキンソン病では、レボドパなどの薬の効果が弱くなり、動きにくさやこわばりなどが再び強くなる時間帯を「OFF」と呼びます。
OFF時には、足の指が曲がる、足首が内側へねじれるなどのジストニアが現れることがあります。
特に知られているのが、朝の服薬前に起こる「早朝ジストニア」です。
薬が効いている時間帯に起こる場合もある
ジストニアはOFF時だけに起こるわけではありません。
薬が効いているONの時間帯や、レボドパの効果が立ち上がるとき・切れていくときに現れる場合もあります。
そのため、ジストニアを評価するときは、症状の形だけでなく「何時に出たか」「薬を何時に飲んだか」まで確認することが重要です。
パーキンソン病の早朝ジストニアとは?

朝起きたときに足の指が曲がることがある
早朝ジストニアでは、朝起きた直後や最初の薬を飲む前に、足の指が強く曲がる、親指が反り返る、足首が内側にねじれるなどの症状がみられることがあります。
痛みを伴い、「朝の最初の一歩が歩きにくい」と感じる場合もあります。
早朝ジストニアはOFF症状の一つとしてみられることがある
夜間から早朝にかけて薬の効果が弱まり、ドパミン作用が低い状態になることで起こるジストニアは、早朝OFFに関連した症状の一つとして知られています。
ただし、朝に起こる症状がすべてジストニアとは限らず、ジストニアが必ずOFF時だけに起こるわけでもありません。
症状が出る時間帯を記録しておくことが大切
早朝ジストニアが疑われる場合は、
- 症状が出た時間
- 朝の薬を飲んだ時間
- 足の指や足首がどのような状態になったか
- 痛みの有無
- 薬を飲んだ後に変化したか
などを記録しておくと、診察時の重要な情報になります。
ジストニアとジスキネジア・筋固縮の違い

パーキンソン病では、ジストニア以外にもジスキネジアや筋固縮がみられるため、症状を区別しにくい場合があります。
| ジストニア | ジスキネジア | 筋固縮 | |
|---|---|---|---|
| 主な特徴 | 筋肉が異常に収縮し、ねじれや姿勢変化が起こる | 身体が不規則に動く | 筋肉がこわばり動かしにくい |
| 例 | 足趾が曲がる、足首がねじれる | 手足や体幹がくねくね動く | 腕や脚が硬い |
| 痛み | 伴うことがある | 必ずしも伴わない | 張りや痛みを伴うことがある |
| 薬との関係 | OFF時などにみられる | レボドパと関連することが多い | パーキンソン病の主要症状 |
ジストニアとジスキネジアの違い
ジストニアでは、筋肉の異常な収縮によって身体が特定の姿勢になりやすいことが特徴です。
一方、ジスキネジアでは、手足や顔、体幹などが自分の意思とは関係なく、くねくねと不規則に動くことがあります。
大まかには、
足が勝手に曲がって戻しにくい
身体が勝手にくねくね動く
とイメージすると違いを理解しやすいでしょう。
ジストニアと筋固縮(こわばり)の違い
筋固縮は、パーキンソン病の代表的な運動症状の一つで、筋肉がこわばって身体を動かしにくくなる症状です。
一方、ジストニアでは、単に硬くなるだけではなく、筋肉の異常な収縮によって身体が特定の方向へ引かれたり、ねじれたりします。
症状だけでは区別が難しい場合もある
ジストニア、ジスキネジア、筋固縮が同時にみられることもあり、患者さんやご家族だけでは判断が難しい場合があります。
症状が出る時間帯、服薬との関係、痛み、動作による変化などを確認し、主治医や専門職に相談することが大切です。
パーキンソン病のジストニアはどう診断する?
パーキンソン病に伴うジストニアは、血液検査や画像検査だけで診断するものではありません。
どのような姿勢や動きが起きているか、いつ現れるか、服薬との関係などを確認し、神経学的な診察をもとに総合的に判断します。
症状が起きる部位や動きを確認する
足の指、足首、首、体幹など、どの部位にどのような姿勢や動きが出ているかを確認します。
リハビリでは、座位・立位・歩行で症状が変化するか、足の接地やバランスに影響しているかなども評価します。
薬を飲んだ時間と症状の関係を確認する
「朝の薬を飲む前に出る」「次の薬の直前に強くなる」「薬を飲んだ後に軽くなる」といった時間的な関係は、治療を考えるうえで重要な情報です。
数日間、服薬時間と症状が出た時間を記録しておくと診察に役立ちます。
動画を撮影して診察時に見せる方法もある
診察室では症状が出ない場合があります。
安全に撮影できる場合には、ジストニアが出ている足や身体の状態、立位や歩行などを動画に残しておくと、医師やリハビリ専門職が症状を把握する参考になります。
パーキンソン病のジストニアの治療
パーキンソン病のジストニアでは、症状が出る時間帯や部位、服薬との関係、痛みや歩行への影響などに応じて治療方法を検討します。
パーキンソン病治療薬の調整
OFF時や早朝にジストニアが起きている場合には、レボドパなどの薬の量や服薬間隔を調整することで症状が軽減することがあります。
一方、薬が効いている時間帯に起こるジストニアもあるため、単純に薬を増やせばよいとは限りません。
薬の調整は自己判断で行わず、症状と服薬時間を記録して主治医に相談しましょう。
ボツリヌス療法
足の指、足首、首など、特定の筋肉が過剰に収縮している場合には、ボツリヌス毒素を筋肉に注射する治療が検討されることがあります。
過剰に働いている筋肉の収縮を弱めることで、ジストニアや痛みの改善を目指します。
ただし、対象となる筋肉や治療の適応は個別に判断する必要があります。また、日本での保険適用は疾患や部位などによって異なるため、専門医療機関への確認が必要です。
DBS(脳深部刺激療法)が検討されることもある
DBSは、脳の特定の部位に電極を留置し、電気刺激によって運動を調節する神経回路に働きかける治療です。
パーキンソン病では、薬だけでは十分にコントロールできない運動合併症などに対して検討されます。
ジストニアが改善する場合もありますが、「ジストニアがあるからDBSを行う」という治療ではありません。年齢、認知機能、レボドパへの反応、運動症状、日常生活への影響などを総合的に評価して適応を判断します。
症状や原因に合わせて治療方法を選ぶ
パーキンソン病のジストニアは、すべての人に同じ治療が適するわけではありません。
OFFとの関係、症状が出る部位、痛み、歩行への影響などを確認し、薬物療法、局所治療、リハビリなどを組み合わせて治療を検討します。
パーキンソン病のジストニアに対するリハビリ

リハビリでは、ジストニアそのものを運動だけで治すのではなく、痛みや関節の動かしにくさを防ぎ、立つ・歩くなどの日常動作への影響を減らすことが重要です。
ジストニアが起きる姿勢や動作を確認する
ジストニアは、座っているときには目立たなくても、立つ・歩くといった特定の動作で強くなることがあります。
リハビリでは、座位、立位、歩行、方向転換などで症状がどう変化するか、足の接地やバランスにどう影響しているかを確認します。
筋肉を無理に伸ばしすぎない
ジストニアが続くことで、筋肉や関節が動かしにくくなることがあります。必要に応じてストレッチや関節可動域運動を行うことがありますが、強くねじれている足や指を力任せに伸ばせば改善するわけではありません。
痛みを我慢して無理に伸ばすことは避けましょう。

姿勢や歩き方を調整する
足部ジストニアによって足を床につけにくい場合には、歩幅、歩行速度、身体の向き、足の接地などを調整し、安全に歩ける方法を検討します。
ジストニアだけでなく、パーキンソン病による歩行障害やバランス低下も含めて評価することが重要です。
装具や靴などを検討することもある
足の指が靴に当たって痛い、足がねじれて歩きにくいといった場合には、靴、インソール、装具などを検討することがあります。
ただし、ジストニアに対して一律に適した装具があるわけではありません。
理学療法士などの専門職が、足の形だけでなく、痛み、足の接地、歩行、転倒リスクまで確認したうえで選ぶことが大切です。
薬が効いている時間帯を活用して運動する
OFF時にジストニアや動きにくさが強くなる場合には、薬が効いて身体を動かしやすいONの時間帯を活用して運動する方法があります。
ただし、ON時にジストニアが出る人もいるため、「薬が効いている時間=必ず運動しやすい」とは限りません。
一日の中で最も安全に身体を動かしやすい時間帯を確認し、運動やリハビリを組み込むことが大切です。

ジストニアがあるときに自宅で確認してほしいこと
パーキンソン病のジストニアは、一日の中で変化することがあります。
自宅では、時間・服薬・動作・痛み・歩行の5つを確認しておくと、主治医やリハビリ専門職に症状を伝えやすくなります。
いつ症状が出るのか記録する
「朝起きた直後」「昼食前」「夕方」など、症状が出た時間を記録します。
数日間続けると、一定のパターンがみえてくることがあります。
服薬時間との関係を確認する
薬を飲んだ時間と、ジストニアが出た時間を一緒に記録しましょう。
薬を飲む前に出るのか、薬を飲んだ後に軽くなるのか、ONの時間帯にも出るのかなどが重要な情報になります。
どの動作で症状が強くなるか確認する
「立つと出る」「歩き始めに強い」「長く歩くと出る」「方向転換で強くなる」など、どの動作で変化するかを確認します。
痛みや歩行への影響も記録する
痛みがあるか、足を床につけられるか、歩幅が変化するか、ふらつきや転倒につながっていないかも記録しましょう。
ジストニアが気になる場合は主治医に相談を
急に症状が強くなった場合
これまでなかった症状が急に現れたり、ジストニアが急に強くなったりした場合には主治医に相談しましょう。
薬の効き方だけでなく、体調変化などが影響している場合もあります。
また、突然の麻痺や脱力、ろれつが回らない、意識がおかしいなど、これまでにない急な神経症状を伴う場合には、ジストニアと自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。
痛みや歩行障害が強い場合
強い痛みがある、足を床につけにくい、歩くことが難しくなった、転びそうになることが増えたなど、日常生活への影響が大きい場合には相談が必要です。
薬の効き方と症状に関連がありそうな場合
「薬を飲む前に毎回症状が出る」「朝だけ強い」「薬を飲んだ後に変化する」など一定のパターンがある場合には、記録した内容を主治医に伝えましょう。
薬の量や服薬時間を自己判断で変更しないことが大切です。
パーキンソン病のジストニアに関するよくある質問
パーキンソン病ではジストニアがみられることがあり、特に足や足の指に現れる場合があります。ただし、すべての患者さんに起こるわけではありません。
足の指が強く曲がる、親指が反り返る、足首がねじれる場合はジストニアの可能性があります。ただし、ほかの原因でも似た症状がみられます。
朝起きた直後や朝の薬を飲む前に、足の指が曲がる、足首がねじれるなどの症状が出ることです。早朝のOFFと関連して起こることがあります。
ジストニアは筋肉の異常な収縮によって身体がねじれたり特定の姿勢になったりする症状です。ジスキネジアは、手足や体幹などが自分の意思とは関係なく不規則に動く症状です。
必ずしも薬の副作用ではありません。パーキンソン病そのものに伴って起こる場合や、OFF時、ON時など薬の効き方と関連して現れる場合があります。
ストレッチだけでジストニアを治すことはできませんが、筋肉や関節の動かしにくさを防ぐ目的で役立つ場合があります。痛みがあるときや強くねじれているときは、無理に伸ばさないことが大切です。
まとめ
ジストニアは、パーキンソン病でみられる運動症状の一つで、足の指が曲がる、足首がねじれる、痛みや歩きにくさを伴うなど、さまざまな形で現れます。
症状が気になる場合は、どの部位に出るのか、いつ起こるのか、服薬時間と関係があるのかを確認することが重要です。
ジストニアはジスキネジアや筋固縮と区別が難しいこともあるため、自己判断せず、症状の記録をもとに主治医やリハビリ専門職へ相談しましょう。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会(監修).『パーキンソン病診療ガイドライン2018』.医学書院.
- 日本神経学会(監修).『ジストニア診療ガイドライン2018』.南江堂.
- Parkinson's Foundation. “Dystonia.”
- Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022;102(4):pzab302.
- Anandan C, Jankovic J. Use of botulinum toxin in the management of dystonia in Parkinson's disease. Frontiers in Neuroscience. 2024.



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