パーキンソン病で疲れやすいのはなぜ?疲労感の原因・対処法・治療を解説

パーキンソン病では、「以前より疲れやすくなった」「それほど動いていないのに疲れる」「休んでも疲れが抜けない」と感じることがあります。
疲労は、震えや動きにくさとは異なりますが、パーキンソン病でみられる代表的な「非運動症状」のひとつです。
ただし、疲労の原因は一つではありません。パーキンソン病そのものによる影響だけでなく、睡眠、抑うつ、薬の効き方、ON・OFF、活動量、体力など、複数の要因が重なっていることがあります。
この記事では、パーキンソン病で疲れやすくなる理由から、眠気や抑うつとの違い、日常生活での対処法、運動との付き合い方、医療機関へ相談する目安まで、分かりやすく解説します。
パーキンソン病では疲れやすくなることがある?

パーキンソン病では、強い疲労感を感じることがあります。
研究では、パーキンソン病のある方のおよそ半数に疲労がみられると報告されており、日常生活や生活の質(QOL)にも影響することが分かっています。
一方で、「疲れる=体力がない」とは限りません。
疲労はパーキンソン病の非運動症状のひとつ
パーキンソン病というと、震え、筋肉のこわばり、動作の遅さ、歩きにくさなどの運動症状がよく知られています。
しかし、疲労、睡眠障害、便秘、抑うつなど、身体の動き以外にもさまざまな症状がみられます。これらを非運動症状と呼びます。
疲労は病気が進行してからだけではなく、比較的早い段階からみられることもあります。
そのため、運動症状が軽いからといって「疲れるはずがない」とは限りません。

「休んでも抜けにくい疲れ」を感じることがある
一般的な疲労であれば、忙しい一日を過ごしたあとに休息や睡眠をとることで回復することが多いでしょう。
一方、パーキンソン病に伴う疲労では、十分に休んでも疲れが残ったり、あまり活動していなくても身体や頭のエネルギーが不足しているように感じたりすることがあります。
また、疲労は必ずしも「眠い」という感覚と同じではありません。
「年齢のせいだから仕方がない」「もっと体力をつけなければ」と決めつけず、疲労が生活に影響している場合には、その背景を整理することが大切です。
パーキンソン病で疲労感が起こるのはなぜ?

パーキンソン病で疲労感が起こる理由は、一つではありません。
パーキンソン病そのものによる影響に加えて、動きにくさ、睡眠、気分、薬の効き方、活動量などが複雑に関係していると考えられています。
パーキンソン病そのものによる疲労
パーキンソン病の疲労は、単に身体をたくさん動かした結果だけで起こるわけではありません。
脳内の神経伝達や神経回路の変化そのものが、疲労感に関係している可能性も指摘されています。
ただし、その仕組みについては、まだ完全には解明されていません。
動作により多くの努力が必要になる
パーキンソン病では、動作緩慢や筋肉のこわばりによって、歩く、着替える、家事をするといった日常動作にも時間や努力が必要になることがあります。
見た目にはそれほど動いていなくても、本人にとっては一つひとつの動作に集中しながら身体を動かしていることもあります。
そのため、日常生活そのものが身体的・精神的な負担となり、疲れを感じやすくなることがあります。
リハビリでは、「何分歩けたか」だけではなく、その動作にどの程度努力が必要だったのか、活動後に疲れが残るのかも確認します。
睡眠不足や睡眠障害の影響
パーキンソン病では、寝つきにくい、夜中に何度も目が覚める、夜間に身体を動かしにくいなど、睡眠に関する問題がみられることがあります。
睡眠の質が低下すると、翌日の疲労感が強くなることがあります。
ただし、疲労と眠気は同じではありません。
睡眠については原因や症状が多岐にわたるため、別の記事で詳しく解説します。
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抑うつ・不安・アパシーとの関係
疲労は、抑うつ、不安、アパシー(意欲の低下)などの非運動症状とも関連します。
ただし、
疲労=抑うつ
疲労=アパシー
というわけではありません。
気分は落ち込んでいなくても強い疲労を感じる方もいます。

薬の効き方やOFFとの関係
パーキンソン病では、薬が効いて症状が比較的落ち着いている時間を「ON」、薬の効果が弱まり症状が出やすくなる時間を「OFF」と呼びます。
OFFでは、動作の遅さやこわばりだけでなく、疲労感、不安、気分の変化などの非運動症状が強くなることがあります。
「次の薬を飲む前になると疲れる」「動きにくくなる時間と疲労が重なる」という場合には、OFFとの関連も考えられます。
活動量・体力・筋力の低下
疲れやすいと、できるだけ身体を動かさないようになることがあります。
しかし、活動量が少ない状態が長く続くと、持久力や筋力が低下し、以前より少ない活動でも疲れやすくなることがあります。
一方で、無理に活動量を増やしすぎても疲労は強くなります。
そのため、現在の体力や症状に合った活動量を見つけることが重要です。
脱水や栄養状態などほかの要因
すべての疲労がパーキンソン病によるものとは限りません。
水分不足、食事量の低下、貧血、低血圧、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸など、ほかの身体的な問題が疲労の原因になることもあります。
特に、これまでなかった強い疲労が急に現れた場合には、「パーキンソン病だから」と決めつけないことが大切です。

「疲労」と眠気・抑うつ・アパシーはどう違う?

パーキンソン病では、疲労だけでなく、日中の眠気、抑うつ、アパシーなどがみられることがあります。
どれも「動きたくない」「横になっていたい」といった状態につながるため、区別しにくいことがあります。
疲労と日中の眠気の違い
疲労は「身体や頭にエネルギーがない感覚」、日中の眠気は「眠りたい・眠ってしまいそうな感覚」が中心です。
そのため、疲れていても眠くないことがあります。
反対に、疲労感がそれほど強くなくても、日中に眠ってしまうことがあります。

疲労と抑うつの違い
抑うつでも疲労感やエネルギーの低下がみられることがあります。
一方、抑うつでは、気分の落ち込み、楽しめない、希望が持てないなどの気分の変化を伴うことがあります。
疲労では、「やりたい気持ちはあるけれど、疲れてできない」ということがあります。
疲労とアパシーの違い
アパシーとは、物事を始めようとする意欲や関心が低下した状態です。
疲労では「やりたいけれど疲れてできない」のに対し、アパシーでは「そもそも始めようという気持ちが起こりにくい」という違いがあります。
ただし、これらは同時に起こることもあります。
理学療法士としても、「動いていない」という結果だけを見るのではなく、疲れて動けないのか、眠いのか、気分が落ち込んでいるのか、意欲が低下しているのかを確認することが重要です。
パーキンソン病の疲労が強くなりやすいタイミング
パーキンソン病の疲労は、一日中同じ強さで続くとは限りません。
薬の効き方、睡眠、活動量、その日の体調などによって変化することがあります。
薬が切れてOFFになっているとき
OFFになると、運動症状だけでなく、疲労感などの非運動症状が強くなることがあります。
「薬を飲む前になると疲れる」「動きにくさと疲労が同じ時間に出る」といった傾向がある場合には、服薬時間と疲労を記録してみましょう。
睡眠が十分にとれていないとき
夜間に何度も目が覚めたり、十分な睡眠がとれていなかったりすると、翌日の疲労が強くなることがあります。
「睡眠が悪かった翌日は特に疲れる」という場合には、疲労だけでなく睡眠の状態も確認してみましょう。
活動量が多すぎたとき
体調がよい日に家事や外出、運動などをまとめて行うと、その後に強い疲労が出ることがあります。
その場で動けたかだけでなく、数時間後や翌日に疲労が残っていないかまで確認することが大切です。
活動量が少なすぎるとき
一方で、疲れることを恐れて長期間ほとんど身体を動かさなくなると、持久力や筋力が低下し、少しの活動でも疲れやすくなることがあります。
大切なのは、「休む」「頑張る」のどちらかに偏るのではなく、活動と休息のバランスをとることです。
体調を崩しているとき
感染症、発熱、食欲低下、脱水などで体調を崩した場合には、普段より疲労が強くなることがあります。
急にこれまでとは違う疲労が現れた場合には、パーキンソン病だけの影響と考えず、ほかの原因がないか確認しましょう。
疲れやすいときの日常生活での対処法

疲れやすいときは、単純に活動を減らすのではなく、1日の活動と休息のバランスを調整することがポイントです。
1日の活動量を分散する
掃除、買い物、運動、外出などを一度に行わず、時間帯や日にちを分けてみましょう。
例えば、買い物をした日は家事を少し減らすなど、負担の大きい活動を集中させない工夫が役立ちます。
ONの時間を活用する
薬が効いて身体を動かしやすいONの時間が分かっている場合には、買い物、入浴、外出、運動などをその時間帯に行う方法があります。
ただし、ONだからといって予定を詰め込みすぎないことも大切です。
休憩を入れながら活動する
疲れ切ってから休むのではなく、疲労が強くなる前に短い休憩を入れます。
散歩の途中で座る、家事の合間に休むなど、活動と休息を組み合わせてみましょう。
水分・食事・生活リズムを整える
水分不足や食事量の低下は、だるさや疲れやすさにつながることがあります。
こまめな水分摂取、規則的な食事、起床・就寝時間を整えるなど、基本的な生活習慣も大切です。
疲労が強い時間帯を記録する
「何時ごろ疲れたか」「何をしたあとか」「薬をいつ飲んだか」「休むと回復したか」などを簡単に記録してみましょう。
疲労のパターンが分かると、活動量や予定を調整しやすくなり、主治医へ相談するときの情報としても役立ちます。
疲れているときも運動した方がいい?
疲労感があると、「運動を休んだ方がよいのでは?」と思うことがあります。
しかし、疲れているからといって、すべての運動を控えた方がよいとは限りません。
適切な運動は、体力や筋力を維持するだけでなく、パーキンソン病に伴う疲労を軽減する可能性も報告されています。
疲れているからといって動かない方がよいとは限らない
強い体調不良がなければ、短い散歩や軽い体操など、できる範囲で身体を動かすことも選択肢です。
無理に運動量を増やす必要はありませんが、長期間ほとんど動かない状態も避けたいところです。
活動量低下がさらに疲れやすさにつながることもある
活動量が減る
↓
体力や筋力が低下する
↓
少しの活動でも疲れる
↓
さらに動かなくなる
という悪循環が起こることがあります。
リハビリでは、「もっと運動しましょう」と単純に考えるのではなく、現在の活動量が多すぎるのか、少なすぎるのかを確認します。
運動後と翌日の疲労まで確認する
運動量は、運動中だけで判断しないことが大切です。
運動後に強い疲労が出たり、午後からほとんど動けなくなったり、翌日まで疲労が強く残ったりする場合には、運動量を見直す必要があります。
一方、運動後も普段の生活を続けられているのであれば、その運動量を継続できる一つの目安になります。
運動時間や強度を調整する
「30分運動しなければ意味がない」と考える必要はありません。
短時間から始めたり、休憩を挟んだり、その日の体調に応じて運動時間や強度を調整しましょう。
たくさん運動することより、自分に合った量を継続することが重要です。

パーキンソン病の疲労感にはどのような治療がある?
パーキンソン病の疲労に対して、「これを行えば必ず改善する」という治療法は現時点では確立していません。
そのため、疲労の背景にある要因を確認し、それぞれに対応することが基本になります。
疲労の背景にある原因を確認する
睡眠障害、抑うつ、薬の効き方、OFF、活動量低下などが関係していないか確認します。
また、貧血、低血圧、甲状腺疾患など、パーキンソン病以外の原因がないか確認することも重要です。
薬やON・OFFについて医師に相談する
疲労がOFFの時間帯に強くなる場合には、薬の効き方が関係している可能性があります。
反対に、一部の薬では眠気などがみられることもあります。
服薬時間と疲労の関係を記録し、気になる場合は主治医に相談しましょう。自己判断で薬を変更しないことが大切です。

睡眠や抑うつなど関連症状への対応
睡眠障害や抑うつが疲労に重なっている場合には、それらの症状を評価し、必要な治療を行うことが重要です。
「疲労だけ」を治療するのではなく、背景にある問題を一つずつ確認していきます。
リハビリや運動による活動量の調整
運動は、パーキンソン病に伴う疲労を軽減する可能性があります。
ただし、「疲れているからもっと運動する」という意味ではありません。
リハビリでは、体力、活動量、ON・OFF、運動後や翌日の疲労、日常生活への影響まで確認しながら、活動と休息のバランスを調整します。
疲労感が強いときに医療機関へ相談した方がよいケース
パーキンソン病では疲労がみられることがありますが、すべての疲れをパーキンソン病によるものと考えるのは適切ではありません。
急に疲労感が強くなった
これまで安定していたのに、短期間で急に疲労が強くなった場合には、感染症、脱水、貧血、薬の変更など、別の原因がないか確認する必要があります。
「病気が進行したのだろう」と決めつけず、医療機関へ相談しましょう。
日常生活に大きな支障が出ている
疲労によって、買い物、家事、外出、運動などが大きく制限されるようになった場合も相談の目安です。
理学療法では、疲労の強さだけでなく、疲労によって何ができなくなっているのかを確認します。
息切れ・発熱・体重減少などほかの症状がある
疲労とともに、息切れ、発熱、原因の分からない体重減少、動悸などがみられる場合には、ほかの病気が隠れていないか確認する必要があります。
突然の強い息切れや胸痛、急な手足の力の入りにくさなどがある場合には、通常の疲労として様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
薬の服用時間と疲労が明らかに関連している
「次の服薬前に毎回疲れる」「動きにくくなる時間と疲労が重なる」という場合には、OFFとの関連が考えられます。
服薬時間、疲労が出た時間、同時に現れた症状を記録し、主治医へ伝えましょう。
理学療法士が「疲れやすい方」をみるときに確認していること
パーキンソン病の方から「最近とても疲れやすい」と相談されたとき、疲労の強さだけで判断するのではなく、どのような状況で疲れが起きているのかを整理することが重要です。
例えば、次のような点を確認していきます。
- どの時間帯に疲労が強くなるのか
- 何をしたあとに疲れるのか
- ON・OFFとの関係
- 前日や当日の活動量
- 睡眠状態
- 休憩すると回復するのか
- 運動や外出後、翌日まで疲労が残るのか
- 活動量が少なすぎないか、負荷が大きすぎないか
同じ「疲れやすい」という訴えでも、背景は人によって異なります。
活動量が多すぎて疲れている方と、活動量が減ったことで体力が低下し、少しの活動でも疲れやすくなっている方では、必要な対応も変わります。
そのため、リハビリでは「疲れているから休む」「疲れているから運動する」と単純に決めるのではなく、その方の生活、症状、活動量、疲労が出るタイミングを確認しながら、適切な活動と休息のバランスを考えることが大切です。
パーキンソン病の疲労に関するよくある質問
はい。疲労はパーキンソン病でみられる非運動症状のひとつです。病気そのものだけでなく、睡眠、薬の効き方、抑うつ、活動量などが関係することがあります。
薬が関係する場合もありますが、すべての疲労が薬の副作用とは限りません。服薬との関係が気になる場合は主治医に相談しましょう。
必ずしもすべて休む必要はありません。体調に合わせて時間や強度を下げる方法もあります。ただし、体調不良や強い疲労がある場合は無理をしないようにしましょう。
同じではありません。疲労は「エネルギーがなく疲れ切っている感覚」、眠気は「眠りたい・眠ってしまいそうな感覚」が中心です。
まずはパーキンソン病を診てもらっている脳神経内科や主治医に相談しましょう。原因によっては、ほかの診療科と連携することもあります。
まとめ|疲労の原因を整理して無理のない活動量を見つけよう
パーキンソン病では、疲労が非運動症状のひとつとしてみられることがあります。
疲労の背景には、パーキンソン病そのものだけでなく、睡眠、抑うつ、薬の効き方、ON・OFF、活動量、体力など、複数の要因が関係することがあります。
大切なのは、「疲れるから休む」「疲れていても頑張る」と単純に考えず、自分がいつ・どのようなときに疲れやすいのかを確認することです。
活動と休息のバランスを調整しながら、無理なく続けられる運動量を見つけていきましょう。疲労が急に強くなった場合や、日常生活への影響が大きい場合は、主治医などに相談することも大切です。
参考文献・参考資料
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