パーキンソン病で運動しないとどうなる?身体機能・歩行・日常生活への影響を理学療法士が解説

パーキンソン病では、運動や身体活動を続けることが大切だといわれています。
一方で、「運動しないと病気が進んでしまうの?」「数日休んだだけでも悪くなる?」「運動が苦手でも大丈夫?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
運動をしないことが、そのままパーキンソン病そのものの進行を意味するわけではありません。しかし、活動量が少ない状態が続くと、筋力や体力、柔軟性、バランス能力などが低下し、歩行や立ち上がり、外出などの日常生活にも影響しやすくなります。
また、動きにくさから活動量が減り、さらに身体機能が低下するという悪循環につながることもあります。
この記事では、パーキンソン病で運動しない状態が続くと身体にどのような影響が起こりやすいのかを、病気そのものの進行との違いも整理しながら、理学療法士の視点でわかりやすく解説します。
パーキンソン病で運動しないとどうなる?

運動しないことが病気の進行を直接意味するわけではない
パーキンソン病で運動をしないからといって、それだけで病気そのものの進行が早くなると断定することはできません。
運動には、パーキンソン病の運動症状や身体機能、生活の質(QOL)などを改善・維持する効果が報告されています。一方、「運動によって神経変性そのものを抑え、病気の進行を遅らせることができるか」については研究が続いており、現時点では確実に証明されたとはいえません。
そのため、
「運動しない=病気そのものが早く進行する」
と考えるのではなく、病気の進行と身体活動の影響は分けて考えることが大切です。
活動量が少ない状態が続くと身体機能が低下しやすい
一方で注意したいのが、身体を動かさない状態が続くことによる二次的な身体機能の低下です。
パーキンソン病では、動作緩慢や筋強剛(筋固縮)、バランス障害などによって身体を動かす機会が減りやすくなります。
そこに活動量の低下が重なると、筋力や持久力、柔軟性、バランス能力などが低下し、歩行や立ち上がりといった日常動作にも影響することがあります。
これはパーキンソン病そのものの症状とは別に起こる可能性があるため、区別して考えることが重要です。

「動かない→さらに動きにくい」という悪循環に注意
パーキンソン病では、症状による動きにくさをきっかけに、
動きにくい
↓
活動量が減る
↓
筋力・体力・バランス能力などが低下する
↓
歩行や日常生活動作がさらに大変になる
↓
さらに活動量が減る
という悪循環につながることがあります。
理学療法士としても、筋力やバランスだけでなく、「最近外出が減っていないか」「歩く距離が短くなっていないか」「以前していた家事や趣味をやめていないか」といった生活の変化を確認することが重要だと考えます。
運動は病気を治すものではないが身体機能を保つために重要
現在のところ、運動によってパーキンソン病そのものを治すことはできません。
一方、有酸素運動や筋力トレーニング、バランストレーニングなどによって、筋力、持久力、歩行、バランスなどを改善・維持できることには多くの研究があります。
大切なのは、「運動すれば病気が治る」「運動しなければ必ず進行する」と考えることではありません。
できるだけ長く自分らしい生活を続けるために、身体機能を保つ手段の一つとして運動を取り入れることが重要です。
パーキンソン病で運動しない状態が続くことで起こりやすい変化

パーキンソン病では、運動不足や活動量の低下が続くと、病気そのものの症状とは別にさまざまな身体機能が低下することがあります。
筋力が低下しやすくなる
身体を動かす機会が減ると、筋肉を使う頻度も少なくなり、筋力が低下しやすくなります。
ただし、パーキンソン病では単純な筋力低下だけでなく、動作緩慢によって素早く力を発揮しにくいことや、身体を大きく動かしにくいことも動作に影響します。
そのため、「脚の筋力が弱いか」だけではなく、椅子から立ち上がれるか、階段を上れるか、歩くときに十分に足を出せているかなど、実際の動作を見ることが大切です。

体力が低下して疲れやすくなる
活動量が少ない状態が続くと全身持久力が低下し、以前と同じ距離を歩いたり、買い物や外出をしたりするだけでも疲れやすくなることがあります。
ただし、パーキンソン病の「疲労」は体力低下だけで起こるわけではありません。病気そのものに伴う非運動症状、睡眠、薬など、さまざまな要因が関係します。
「疲れる=運動不足」と決めつけず、どのような場面で疲れるのか、1日の中で変化するのかなどを確認することも大切です。

身体が硬くなり動かしにくくなる
身体を動かす範囲が小さい状態が続くと、筋肉や関節、その周囲の組織の柔軟性が低下し、身体を大きく動かしにくくなることがあります。
ここで注意したいのが、パーキンソン病の代表的な症状である筋強剛(固縮)と、身体を動かさないことで起こる柔軟性低下は同じではないということです。
リハビリでは、単に「身体が硬い」と判断するのではなく、どの関節が動きにくいのか、姿勢の影響があるのか、筋強剛との関係はどうかなどを分けて考えます。

バランス能力が低下し転倒しやすくなる
パーキンソン病では、病気の進行に伴って姿勢やバランス能力が低下することがあります。
さらに、活動量が減って立つ・歩く機会が少なくなると、方向転換や重心移動など、実際の生活の中でバランスを使う機会も減ります。
転倒予防では、脚の筋力だけでなく、立位や歩行、方向転換などを含めたバランス能力を見ることが重要です。
歩行や立ち上がりなどの動作が難しくなる
筋力、体力、柔軟性、バランス能力などが低下すると、歩行や立ち上がりなどの日常生活の基本動作にも影響します。
たとえば、
- 椅子から立つのに時間がかかる
- 歩く距離が短くなる
- 階段を避けるようになる
- 外出することが負担になる
といった変化です。
理学療法士としては、身体機能を個別に評価するだけでなく、「実際の生活で何がしにくくなってきたのか」を見ることが重要です。
運動不足は日常生活にも影響する

活動量の低下による影響は、身体機能だけにとどまりません。外出や家事など、日常生活そのものにも影響する可能性があります。
外出する機会が減りやすくなる
歩くことに時間がかかる、疲れやすい、転倒するのが怖いといった変化があると、散歩や買い物、友人との外出などを避けるようになることがあります。
外出が減ると、歩く距離や立っている時間も減り、結果としてさらに活動量が少なくなることがあります。
「週に何回運動しているか」だけでなく、以前と比べて外出する機会が減っていないかも大切なポイントです。
家事や身の回りの動作が負担になりやすい
掃除、洗濯、料理、着替え、入浴、買い物などは、立つ・歩く・方向転換する・物を持つといった複数の動作を組み合わせて行っています。
そこに筋力や持久力の低下が加わると、これまで行えていた家事や身の回りの動作を負担に感じることがあります。
活動範囲が狭くなることでさらに運動量が減ることもある
「歩きにくいから外出しない」「疲れるから家事をしない」「転ぶのが怖いから座って過ごす」といったことが増えると、日常生活そのものから身体を動かす機会が減っていきます。
運動というと、ウォーキングや筋力トレーニングなどを想像しやすいですが、買い物、家事、趣味なども身体活動です。
日常生活の中で身体を使う機会を保つことも、運動と同じように大切です。
運動できないときは「できない理由」を考えることも大切

パーキンソン病では、「運動した方がよい」とわかっていても、思うように身体を動かせないことがあります。
そのため、「運動できていないから頑張らなければ」と考えるだけではなく、なぜ運動できないのかを整理することも大切です。
OFF時間で動きにくい
薬の効果が弱くなるOFF時間では、動作緩慢や筋強剛、すくみ足などが強くなり、運動しにくくなることがあります。
この場合は、動きにくい時間帯に無理をせず、薬が比較的効いて動きやすい時間に活動する方法があります。
OFF時間が長くなったり、日常生活への影響が大きかったりする場合は、運動だけで対応せず主治医への相談も必要です。

疲労や痛みがある
疲労や痛みも運動を続けにくくする原因になります。
特にパーキンソン病の疲労は、単なる体力不足だけでは説明できません。睡眠や気分、薬などさまざまな要因が関係します。
痛みや強い疲労がある場合は無理をせず、運動量や時間帯を調整することが大切です。
転倒するのが怖い
「運動したいけれど転びそうで怖い」という不安から、身体活動を控える方もいます。
重要なのは、危険を冒して運動することではなく、安全に身体を動かせる方法に変更することです。
歩行が不安定な場合はウォーキングにこだわらず、座って行う運動や自転車運動などを検討することもできます。
何をすればよいかわからない
パーキンソン病の運動には、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習、ストレッチなどがあります。
ただし、病期や症状、体力、転倒リスクによって適した運動は異なります。
理学療法士としては、「パーキンソン病だからこの運動」と一律に決めるのではなく、現在困っている動作や身体機能、生活環境に合わせて選ぶことが大切だと考えています。
理学療法士として「運動量が減っている方」をみるときに確認していること
パーキンソン病の方をみるとき、単に「週に何回運動していますか?」と確認するだけでは、実際の身体活動量を十分に把握できないことがあります。
普段どのくらい身体を動かしているか
運動習慣だけでなく、
- 1日にどのくらい歩いているか
- 買い物や散歩に出かけているか
- 家事をしているか
- 趣味や地域活動を続けているか
- 座って過ごす時間が増えていないか
などを確認します。
理学療法士としては、「運動をしているか・していないか」ではなく、1日の生活全体の中でどの程度活動しているかを見ることが重要です。
以前できていたことが減っていないか
活動量の低下は、「歩けなくなった」といった大きな変化だけではありません。
「以前は毎日買い物に行っていた」「庭仕事をしていた」「友人と出かけていた」など、以前行っていた活動をしなくなっていないかを確認します。
半年・1年前と比べて、生活の中でやらなくなったことがないかを振り返ることも大切です。
筋力だけでなく実際の動作を確認する
パーキンソン病では、「脚の筋力が弱いから動けない」と単純に判断できないことがあります。
動作緩慢、姿勢、バランス、すくみ足など、複数の要因が動作に影響します。
そのため、
- 椅子からの立ち上がり
- 歩幅や歩行速度
- 方向転換
- 狭い場所での歩行
- 立位バランス
など、実際の動作も確認します。
薬の効き方や1日の活動リズムも確認する
パーキンソン病では、同じ人でも1日の中で動きやすさが変わることがあります。
そのため、
- 薬を飲む時間
- 動きやすい時間
- 動きにくい時間
- 疲れやすい時間
- 外出や運動をしている時間
なども確認します。
理学療法士としては、「何をするか」だけでなく「いつ行うか」も重要だと考えます。
パーキンソン病ではどのくらい運動すればよい?
パーキンソン病では、一度にたくさん運動することより、自分の状態に合った運動を継続することが大切です。
毎日激しい運動をする必要はない
毎日すべての運動を高い強度で行う必要はありません。
現在の運動推奨では、有酸素運動、筋力、柔軟性、バランス・敏捷性などを1週間の中で組み合わせることが勧められています。
運動習慣がない方や体力が低下している方は、短時間・低強度から始めても構いません。
有酸素運動・筋力・バランス・柔軟性を組み合わせる
主な運動には、
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
- バランス・敏捷性の運動
- 柔軟性運動
があります。
一つの運動だけに偏るのではなく、1週間の中で複数の運動を組み合わせていくことが推奨されています。
自分の状態に合わせて続けることが大切
年齢や病期だけでなく、症状、体力、転倒リスク、薬の効き方などには個人差があります。
そのため、「パーキンソン病ならこの運動をこの回数」と一律に決めることはできません。
理学療法士として大切だと考えるのは、理想的な運動量を一度こなすことより、安全に継続できる運動量を見つけることです。
運動するときに無理をしない方がよいケース
運動は大切ですが、安全性を優先する必要があります。
転倒の危険が高い
過去に転倒したことがある、歩行中にふらつく、すくみ足が頻繁に起こる場合などは注意が必要です。
一人で不安定なバランス運動を行うのではなく、手すりや椅子を使用する、座って行える運動に変更するなど、安全な方法を選びましょう。
めまいやふらつきがある
立ち上がったときにめまいやふらつきがある場合は、起立性低血圧が関係していることがあります。
パーキンソン病そのものや治療薬などが影響する場合もあるため、無理に立って運動を続けず、症状を繰り返す場合は主治医に相談しましょう。
強い痛みや体調不良がある
強い痛みや発熱など、普段とは違う体調不良があるときに無理をして運動する必要はありません。
軽い運動に変更する、時間を短くする、休息するなど、その日の状態に合わせることが大切です。
運動方法がわからない場合は専門家へ相談する
「何をすればよいかわからない」「転びそうで怖い」「以前より歩きにくくなった」という場合は、医師や理学療法士などに相談することも選択肢です。
運動は、たくさん行えばよいものではありません。
自分の身体の状態に合わせ、安全に続けられることが重要です。
パーキンソン病と運動についてよくある質問
運動しないことだけで、パーキンソン病そのものの進行が早くなると断定することはできません。ただし、活動量が少ない状態が続くと身体機能が低下し、日常生活が大変になる可能性があります。
数日休んだからといって、すぐに身体機能が大きく低下するわけではありません。体調が悪いときは無理をせず、回復してから少しずつ再開しましょう。
散歩も有酸素運動の一つです。歩行が安定していれば、体力維持や身体活動量を増やす方法として役立ちます。筋力やバランス、柔軟性の運動も組み合わせるとよいでしょう。
毎日激しい運動をする必要はありません。1週間の中で有酸素運動、筋力、バランス、柔軟性の運動を無理なく組み合わせることが大切です。
歩きにくい場合でも、身体の状態に合った運動を続けることは大切です。ただし、転倒リスクが高い場合はウォーキングにこだわらず、安全な運動方法を選び、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
まとめ
大切なのは無理なく身体を動かす習慣を続けること
パーキンソン病では、運動しないことがそのまま病気の進行を意味するわけではありません。
ただし、活動量が少ない状態が続くと、筋力や体力、バランス能力などが低下し、歩行や日常生活に影響することがあります。
大切なのは無理をして運動することではなく、自分の体調や症状に合わせて身体を動かす習慣を続けることです。
散歩や家事などの日常的な活動も含め、できる範囲から続けていきましょう。運動方法や安全面に不安がある場合は、医師や理学療法士などに相談することも大切です。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会 監修.「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会 編.パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院,2018.
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