パーキンソン病で腰痛が起こるのはなぜ?原因・リハビリ・マッサージの効果と注意点を理学療法士が解説

パーキンソン病の方から、「腰が痛くて歩きにくい」「マッサージを受けた方がよいのか」「腰痛が強くなったのは病気が進行したからなのか」と相談されることがあります。
パーキンソン病の腰痛には、筋肉のこわばりや前かがみ姿勢、歩き方の変化などが関係します。ただし、すべての腰痛がパーキンソン病によって起こるわけではありません。腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折など、別の病気が隠れていることもあります。
この記事では、パーキンソン病で腰痛が起こる原因や特徴、リハビリ、ストレッチ、マッサージの効果と注意点について、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。
パーキンソン病で腰痛が起こる7つの原因

パーキンソン病の腰痛には、筋肉や姿勢だけでなく、薬が効きにくい時間帯の症状、痛みの感じ方、腰そのものの病気など、複数の原因が関係します。
筋固縮によって腰や背中の筋肉がこわばる
筋固縮とは、力を抜いても筋肉の緊張が残りやすい状態です。
腰や背中の筋肉がこわばると、寝返りや立ち上がり、歩き始めなどで身体をなめらかに動かしにくくなります。その結果、同じ筋肉や関節に負担が集中し、腰痛につながることがあります。
筋固縮は、パーキンソン病の方にみられる慢性的な腰痛と関係する要因の一つです。

前かがみ姿勢や腰曲がりで腰への負担が増える
パーキンソン病では、立っているときや歩いているときに、上半身が前へ傾くことがあります。
前かがみ姿勢が続くと、身体が前へ倒れないように、腰や背中の筋肉が働き続けます。そのため、筋肉が疲れやすくなり、腰痛や背中の張りにつながることがあります。
ただし、腰曲がりの程度だけで痛みの強さが決まるわけではありません。姿勢が大きく曲がっていても痛みが少ない方もいれば、見た目の変化が小さくても痛みが強い方もいます。
体幹のひねりが小さくなり腰だけで動作を補う
通常の歩行や方向転換では、胸郭と骨盤が互いにひねられるように動きます。
パーキンソン病では、この体幹の回旋が小さくなりやすく、身体全体を一つのかたまりのように動かすことがあります。
胸や股関節が十分に動かないと、腰だけをひねったり反らしたりして動作を補うことがあります。その結果、腰の一部に負担が集中し、痛みにつながる可能性があります。
歩き方や立ち上がり方の変化が腰に負担をかける
パーキンソン病では、歩幅が小さくなる、前方へ重心が偏る、腕振りが小さくなるなど、歩き方が変化することがあります。
また、椅子から立ち上がるときに勢いをつけたり、腰を大きく曲げたりすることもあります。
このような動作を繰り返すと、腰への負担が増える場合があります。理学療法では、腰だけでなく、足の位置、股関節の動き、椅子の高さ、重心の移し方なども確認します。
オフ症状やジストニアに伴って痛みが強くなる
パーキンソン病の薬の効果が弱まる時間を「オフ時間」と呼びます。
オフ時間には、身体の動かしにくさや筋固縮が強くなり、腰痛や筋肉のつっぱりが増すことがあります。
また、筋肉が自分の意思とは関係なく持続的に縮むジストニアによって、腰やお腹、足などに痛みが出る場合もあります。
腰痛が起こる時間と服薬時間を記録しておくと、主治医が薬の効き方を確認する際に役立ちます。
痛みを感じる仕組みが変化することがある
パーキンソン病では、筋肉や関節の問題だけでなく、脳内で痛みを調整する仕組みが変化する場合があります。そのため、画像検査では大きな異常がみられなくても、強い痛みを感じることがあります。
反対に、画像検査で腰の変形が見つかっても、それだけでは痛みの強さを説明できない場合があります。痛みは、身体の状態だけでなく、睡眠、疲労、気分、活動量などにも影響されます。
腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折など別の病気が隠れている
腰痛をすべてパーキンソン病のせいにするのは危険です。加齢に伴う腰部脊柱管狭窄症や椎間板の変化、転倒による圧迫骨折などが原因となることもあります。
パーキンソン病の方は、転倒や骨折のリスクが高くなる傾向があります。転倒後から急に痛くなった、足のしびれがある、安静にしていても痛い場合は、医療機関へ相談しましょう。

パーキンソン病による腰痛の特徴
パーキンソン病の腰痛の現れ方には個人差があります。痛む場面や服薬との関係を確認すると、原因を考える手がかりになります。
動き始めや歩行中に痛みが出ることがある
筋固縮や動作の遅さがあると、立ち上がりや歩き始めに腰や背中の筋肉がうまく伸びず、痛みを感じることがあります。また、前かがみ姿勢や小さな歩幅で歩き続けることで、腰への負担が増す場合もあります。
同じ姿勢を続けると痛みやこわばりが強くなる
長時間座ったり立ったりしていると、腰や背中の筋肉が動かされないまま緊張し、こわばりや痛みが強くなることがあります。こまめに座り直す、立ち上がる、短い距離を歩くなど、無理のない範囲で姿勢を変えることが大切です。
服薬の効いている時間と切れている時間で変化することがある
薬が効いて動きやすいオン時間と、薬の効果が弱まるオフ時間で、腰痛の強さが変化することがあります。オフ時間に筋固縮やジストニアが強くなると、腰痛も増す場合があります。
ただし、腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折などによる腰痛では、服薬時間との関係がみられないこともあります。
腰だけでなく背中やお尻にも痛みが広がることがある
筋肉のこわばりや姿勢の崩れによる痛みは、腰だけでなく背中やお尻にも現れることがあります。
ただし、腰からお尻、足へ広がる痛みやしびれは、腰の神経が圧迫される病気でも起こります。足のしびれや力の入りにくさを伴う場合は注意が必要です。
姿勢を変えると痛みが軽くなる場合がある
座り直す、横になる、背中を軽く伸ばすなど、姿勢を変えることで痛みが軽くなる場合があります。理学療法では、どの姿勢や動作で痛みが増減するかを確認し、腰だけでなく胸郭や股関節の動きも含めて対処法を考えます。
姿勢を変えても強い痛みが続く場合は、医療機関へ相談しましょう。
腰痛の原因を考えるためのチェックポイント

パーキンソン病の方に起こる腰痛は、姿勢や筋固縮だけでなく、薬の効き方や腰そのものの病気が関係することもあります。次の項目を記録しておくと、医師や理学療法士が原因を考える際の手がかりになります。
腰痛が始まった時期ときっかけ
「いつから痛いか」「急に始まったか、徐々に強くなったか」を確認します。
運動、長時間の外出、重い物を持った後など、思い当たるきっかけも記録しましょう。
動作中・安静時・夜間のどの場面で痛むか
立ち上がりや歩行中だけ痛むのか、横になっていても痛むのかを確認します。
安静にしても強い痛みが続く、夜間に痛みで目が覚める場合は、自己判断で運動やマッサージを続けず医療機関へ相談してください。
前かがみや歩行で痛みが変化するか
前かがみ、腰を伸ばす、歩く、座るなどで、痛みがどのように変わるかを確認します。理学療法では、痛む場所だけでなく、姿勢、股関節の動き、歩幅、方向転換なども合わせて評価します。
服薬時間やオン・オフによって変化するか
薬が効いているオン時間と、効果が弱まるオフ時間で痛みが変わる場合があります。服薬時刻、痛みの強さ、動きやすさを一緒に記録すると、主治医への相談に役立ちます。
足のしびれや力の入りにくさを伴っていないか
腰痛とともに、お尻や足のしびれ、足に力が入りにくい、歩きにくさが急に強くなったなどの症状がないか確認します。急な変化や進行する筋力低下がある場合は、早めの受診が必要です。
転倒や尻もちをついた後から痛くなっていないか
転倒後に腰痛が始まった場合は、打撲だけでなく背骨の圧迫骨折も考える必要があります。強い痛みがなくても、転倒後の腰痛が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
腰痛があるときに医療機関への相談を優先すべき症状
パーキンソン病の方の腰痛も、多くは筋肉や姿勢などに関係します。
しかし、骨折や神経の圧迫、感染症などが隠れている場合もあります。次の症状があるときは、ストレッチやマッサージを行う前に医療機関へ相談してください。
転倒後から急に腰が痛くなった
転倒や尻もちの後に腰痛が始まった場合は、打撲だけでなく背骨の圧迫骨折も考えられます。強い痛みがある、立ち上がれない、寝返りが難しい場合は、早めに受診しましょう。
足のしびれや筋力低下が強くなった
腰痛とともに、足のしびれが広がる、足に力が入らない、急に歩けなくなる場合は、腰の神経が圧迫されている可能性があります。特に両足の症状や、短時間で悪化する筋力低下は、速やかな受診が必要です。
排尿・排便に普段と違う変化がある
尿が出にくい、尿や便を漏らす、肛門や陰部周辺の感覚が鈍いといった症状は、重い神経障害の可能性があります。腰痛や足の症状と一緒に現れた場合は、早急に医療機関へ相談してください。
安静にしていても強く痛む
横になっても改善しない、夜間に痛みで目が覚める、急に強い痛みが出た場合は、通常の筋肉痛とは異なる原因も考えます。自己判断で運動を続けず、医師へ相談しましょう。
発熱や体調不良を伴っている
腰痛に発熱、寒気、強いだるさなどを伴う場合は、背骨や尿路などの感染症が関係することがあります。できるだけ早く医療機関へ連絡してください。
腰痛が続き日常生活に支障が出ている
腰痛が続き、寝返り、立ち上がり、歩行、外出などが難しくなっている場合も相談の目安です。痛みを避けて動かなくなると、筋力や体力が低下し、さらに動きにくくなることがあります。

パーキンソン病の腰痛はどのように治療する?
パーキンソン病の腰痛は、筋固縮、姿勢、オフ症状、腰そのものの病気などで治療が異なります。まず原因を確認し、薬、リハビリ、痛みへの対処を組み合わせることが大切です。
パーキンソン病の薬を調整する
オフ時間に腰痛や筋肉のつっぱりが強くなる場合は、薬の効果が切れることが関係している可能性があります。服薬時間と痛みの変化を記録し、脳神経内科の主治医に相談しましょう。
薬は自己判断で増やしたり、減らしたり、中止したりしないでください。
腰の病気に対する検査や治療を受ける
足のしびれ、筋力低下、転倒後の痛みなどがある場合は、整形外科での診察が必要になることがあります。症状や診察結果に応じて、X線やMRIなどの画像検査が検討されます。
ただし、一般的な腰痛では画像検査を一律に行うのではなく、症状や経過から必要性を判断します。
リハビリで姿勢や動作を見直す
リハビリでは、腰だけでなく、筋固縮、胸郭や股関節の動き、立ち上がり、歩行などを評価します。痛みを我慢して同じ体操を繰り返すのではなく、腰への負担が増えている原因に合わせて内容を調整します。
痛み止めや外用薬を使用する
腰痛に対して、痛み止めや湿布、塗り薬などが用いられることがあります。
ただし、薬の効果は腰痛の原因によって異なります。市販薬を含め、ほかの薬との飲み合わせや副作用について、医師や薬剤師に確認しましょう。
マッサージで筋肉のこわばりをやわらげる
マッサージは、腰や背中の筋肉の緊張をやわらげ、一時的に動きやすくする目的で行います。
ただし、姿勢や歩き方、筋力低下までマッサージだけで改善するのは難しいため、運動やリハビリと組み合わせることが基本です。
パーキンソン病の腰痛に対するリハビリ
パーキンソン病の腰痛に対するリハビリでは、腰だけを動かすのではなく、痛みの原因と日常動作を総合的に評価します。症状に合わせて、柔軟性、筋力、姿勢、歩行などを見直していくことが大切です。
腰痛の原因と痛みが出る動作を評価する
立ち上がり、歩行、寝返りなど、どの動作で痛むかを確認します。痛みの場所や強さに加え、服薬時間、筋固縮、転倒歴、生活環境なども評価し、一人ひとりに合った内容を考えます。
腰だけでなく胸郭・股関節・足の動きを確認する
胸や股関節の動きが小さいと、腰が代わりに動いて負担が集中します。理学療法では、胸郭、骨盤、股関節、足の柔軟性や、身体全体の動きのつながりまで確認します。
筋肉のこわばりをやわらげて動く範囲を広げる
呼吸やゆっくりしたストレッチを使い、腰、背中、股関節周囲の緊張をやわらげます。強く伸ばすのではなく、痛みが増えない範囲で少しずつ動きを広げます。
体幹をひねる動きを引き出す
パーキンソン病では、胸と骨盤をひねる動きが小さくなりやすいため、座位や立位で体幹を回す練習を行います。腰だけを強くひねるのではなく、胸郭や股関節も一緒に動かすことが大切です。
姿勢を保つための筋力をつける
背中、お尻、太ももなどを鍛え、姿勢や立ち上がりを支える力を高めます。
ただし、前かがみ姿勢を無理に真っすぐへ戻そうとすると、腰痛やバランスの悪化につながる場合があります。本人が安全に保てる姿勢を目指します。
立ち上がりや歩き方を見直す
椅子の高さ、足の位置、重心の移し方を調整し、腰に頼りすぎない立ち上がりを練習します。歩行では、歩幅、腕振り、姿勢、方向転換なども確認します。
服薬が効いているオン時間に合わせて運動する
オフ時間に動きにくさや痛みが強い方は、身体能力を高める運動をオン時間に行うと取り組みやすくなります。
ただし、日常生活ではオフ時間にも動く必要があります。そのため、オン時間の運動だけでなく、オフ時間を安全に過ごす方法も練習します。
自宅でできる腰痛予防のストレッチ・体操

パーキンソン病の腰痛予防では、腰だけでなく胸郭、股関節、お尻、太ももを無理なく動かすことが大切です。運動は腰痛を治す万能な方法ではありませんが、柔軟性や姿勢、立ち上がり、歩行を保つために役立ちます。
呼吸に合わせて胸や背中を動かす運動
椅子に深く座り、両手を太ももに置きます。息を吸いながら胸を軽く開き、吐きながら背中をゆっくり丸めます。呼吸を止めずに5回程度行い、胸郭と背中をやさしく動かしましょう。
座ってできる体幹のひねり運動
椅子に座って両腕を胸の前で組み、正面を向いた状態から上半身を左右へゆっくりひねります。腰だけをねじらず、胸から動かすことを意識します。椅子が動かない安全な場所で行ってください。
股関節の前側を伸ばすストレッチ
椅子に浅く座り、片足を少し後ろへ引きます。背中を反らしすぎず、骨盤を起こしたまま股関節の前側を伸ばします。立って行う場合は、転倒を防ぐため、机や手すりなど安定した場所につかまりましょう。
お尻や太ももの筋肉を動かす体操
椅子に座った状態で片脚ずつ膝を伸ばしたり、両膝を外側へ軽く開いたりします。お尻や太ももの筋肉は、姿勢の保持、立ち上がり、歩行を支える重要な筋肉です。
立ち上がりや歩行につなげる運動
足を少し後ろへ引き、上体を前へ移してからゆっくり立ち上がります。立った後は姿勢を整え、安全を確認して大きめの歩幅で数歩進みます。
ふらつきやすい方は一人で行わず、家族や理学療法士に相談してください。
痛みを我慢して腰を反らしたりひねったりしない
腰痛が強くなる、足にしびれが広がる、力が入りにくい場合は運動を中止します。痛みを我慢して大きく反らしたり、勢いよくひねったりする必要はありません。新しい運動を始める際は、主治医や理学療法士に確認すると安心です。
パーキンソン病の腰痛にマッサージは効果がある?
マッサージは、パーキンソン病の腰痛を根本的に治す方法ではありませんが、筋肉の緊張をやわらげ、痛みを一時的に軽減する目的で活用できます。
ただし、パーキンソン病の腰痛に対するマッサージの研究はまだ限られているため、運動やリハビリと組み合わせることが大切です。
筋肉のこわばりや緊張をやわらげる効果が期待できる
腰や背中、お尻の筋肉をやさしくほぐすことで、筋緊張が低下し、こわばりが楽になることがあります。ただし、筋固縮はパーキンソン病による神経症状でもあるため、マッサージだけで完全に取り除くことはできません。
一時的に痛みが軽くなり動きやすくなることがある
マッサージを受けた後に、腰痛が軽くなったり、身体を動かしやすくなったりすることがあります。一方で、効果の現れ方や持続時間には個人差があります。マッサージを受けても痛みを繰り返す場合は、姿勢や動作、腰の病気など、別の原因を確認する必要があります。
リハビリや運動前の準備として活用できる
マッサージによって身体が動かしやすくなった後に、ストレッチや立ち上がり、歩行練習を行う方法があります。マッサージだけで終わらせず、その後の運動や日常動作につなげることが重要です。
姿勢や筋力低下をマッサージだけで改善するのは難しい
マッサージでは、前かがみ姿勢、歩幅の低下、体幹の動かしにくさ、筋力低下などを十分に改善できません。姿勢や歩行、立ち上がりに問題がある場合は、理学療法士による評価や運動療法が必要です。
腰痛にマッサージを行うときの注意点
パーキンソン病の腰痛にマッサージを行う場合は、強い刺激を避け、痛みの原因や体調を確認することが大切です。マッサージは単独で続けるのではなく、必要に応じて運動やリハビリと組み合わせます。
腰を強く押せばよいわけではない
強く押すほど筋肉のこわばりが改善するとは限りません。
痛みを我慢すると身体に力が入り、かえって筋肉の緊張が強くなることがあります。気持ちよく感じる程度のやさしい刺激から始めましょう。
腰だけでなく背中やお尻をやさしくほぐす
前かがみ姿勢や歩き方の変化による負担は、腰だけでなく背中やお尻にも及びます。痛む場所だけを集中的に押すのではなく、筋肉の張りや姿勢を確認しながら、広い範囲をやさしくほぐします。
急な腰痛や転倒後の痛みには行わない
転倒や尻もちの後に急な腰痛が出た場合は、打撲や圧迫骨折の可能性があります。マッサージを行わず、まず医療機関へ相談してください。
しびれや筋力低下がある場合は先に受診する
足のしびれ、力の入りにくさ、急な歩行能力の低下がある場合は、神経が圧迫されている可能性があります。特に両足の症状や排尿・排便の変化を伴う場合は、速やかな受診が必要です。
骨粗しょう症や骨折歴がある人は強い刺激を避ける
骨粗しょう症や背骨の圧迫骨折歴がある方は、背骨に強い圧迫やひねりを加えないよう注意します。施術前に骨折歴や骨粗しょう症について伝え、必要に応じて医師へ確認しましょう。

マッサージ中に痛みが強くなったら中止する
痛みの増加、しびれ、吐き気、冷汗などが出た場合は、すぐにマッサージを中止します。終了後も痛みが残る、または症状が悪化する場合は、自己判断で繰り返さず医療機関へ相談してください。
リハビリとマッサージはどちらを選べばよい?

パーキンソン病の腰痛では、リハビリとマッサージのどちらが優れているとは一概にいえません。痛みの原因と改善したいことを確認し、目的に応じて選ぶことが大切です。
痛みやこわばりをやわらげたい場合はマッサージ
腰や背中、お尻の筋肉が張っている場合は、マッサージによって痛みやこわばりが一時的に軽くなることがあります。
ただし、効果には個人差があり、腰痛の原因によってはマッサージが適さない場合もあります。
姿勢や歩行・立ち上がりを改善したい場合はリハビリ
前かがみ姿勢、歩幅の低下、立ち上がりにくさなどがある場合は、理学療法士によるリハビリが適しています。胸郭や股関節の動き、筋力、バランス、動作方法を評価し、腰への負担を減らします。
原因を確認したうえで両方を組み合わせる方法もある
マッサージで筋肉の緊張をやわらげた後に、ストレッチや立ち上がり、歩行練習を行う方法もあります。腰痛の原因を確認し、マッサージとリハビリの役割を分けて組み合わせることが大切です。
痛みが続く場合はマッサージだけで対応しない
マッサージを受けても痛みが繰り返す場合は、姿勢や動作、薬の効き方、腰の病気などを確認する必要があります。足のしびれや筋力低下、転倒後の痛みがある場合は、マッサージを続ける前に医療機関へ相談しましょう。
日常生活で腰への負担を減らすポイント
パーキンソン病の腰痛を予防するには、運動だけでなく、座り方や起き上がり方など毎日の動作を見直すことが大切です。痛みを我慢せず、安全に動ける方法を選びましょう。
長時間同じ姿勢を続けない
座ったままや立ったままの時間が長いと、腰や背中のこわばりが強くなることがあります。テレビや読書の途中でも、こまめに座り直す、立ち上がる、短く歩くなど、無理のない範囲で姿勢を変えましょう。
椅子の高さや座る姿勢を見直す
椅子が低すぎると、立ち上がるときに腰へ負担が集中します。足裏が床につき、膝がお尻と同じ高さか、少し低くなる椅子が目安です。深く座り、必要に応じて背もたれやクッションを使います。
ベッドから起き上がるときは体をひねりすぎない
仰向けから勢いよく上半身だけを起こすと、腰に負担がかかります。まず横向きになり、両脚をベッドの外へ下ろしながら、腕で身体を押し起こします。
動きにくい場合は、理学療法士に安全な方法を確認しましょう。
荷物を持つときは腰だけを曲げない
荷物は身体に近づけ、膝と股関節を曲げて持ち上げます。ひねりながら持ち上げる動作は避け、方向を変えるときは足を小さく動かします。重い物は無理に一人で持たないことも重要です。
杖や歩行器が身体に合っているか確認する
高さや種類が合わない歩行補助具は、前かがみ姿勢や不安定な歩き方につながることがあります。パーキンソン病では、補助具の種類によっては歩幅が小さくなったり、すくみ足が出やすくなったりすることもあります。理学療法士や作業療法士に確認しましょう。
痛み・服薬時間・活動内容を記録する
痛みの強さ、服薬時刻、オン・オフ、歩行や外出などを記録すると、痛みが起こりやすい条件を把握できます。記録は、主治医や理学療法士が薬や運動内容を検討する際にも役立ちます。
パーキンソン病と腰痛についてよくある質問
必ずしも進行が原因とは限りません。筋固縮や姿勢、オフ症状のほか、筋肉の疲労や腰そのものの病気も関係します。痛む時間や動作、服薬との関係を記録して主治医に相談しましょう。
同じではありません。腰曲がりは姿勢の変化であり、痛みがない方もいます。一方、前かがみ姿勢によって腰や背中への負担が増え、腰痛につながることはあります。
軽い腰痛であれば、痛みが悪化しない範囲で身体を動かすことが基本です。ただし、急な強い痛み、転倒後の痛み、足のしびれや筋力低下がある場合は、運動せず先に受診してください。
回数だけでなく、刺激の強さと身体の反応を確認することが重要です。マッサージ後に痛みやだるさが強くなる場合は、刺激や頻度を見直してください。毎日受けても根本的な改善につながるとは限らないため、運動やリハビリと組み合わせましょう。
腰痛の状態によっては、一時的にコルセットが使用されることがあります。ただし、自己判断で長期間使い続けると、動きにくさや筋力低下につながる可能性があります。医師や理学療法士に相談し、目的と使用時間を確認しましょう。
オフ時間や筋固縮と腰痛が連動する場合は、脳神経内科へ相談します。転倒後の痛み、足のしびれ、筋力低下などがある場合は、整形外科での確認が必要です。判断に迷う場合は、まずパーキンソン病を診てもらっている主治医へ相談しましょう。
まとめ
パーキンソン病の腰痛には複数の原因がある
パーキンソン病の腰痛には、筋固縮、前かがみ姿勢、体幹の動かしにくさ、歩き方の変化、オフ症状などが関係します。一方で、腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折など、パーキンソン病以外の原因が隠れていることもあります。
リハビリとマッサージは目的が異なる
マッサージは、筋肉のこわばりや痛みを一時的にやわらげる目的で活用できます。リハビリは、姿勢、筋力、立ち上がり、歩行などを見直し、腰への負担を減らすことが目的です。原因に応じて両方を組み合わせることも大切です。
急な痛みやしびれがある場合は医療機関へ相談する
転倒後の急な腰痛、足のしびれや筋力低下、排尿・排便の変化、発熱などがある場合は、マッサージや運動を行わず医療機関へ相談してください。腰痛の状態を記録し、主治医や理学療法士と相談しながら、無理のない対策を続けましょう。
参考文献・参考資料
- 日本神経学会監修「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編.パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院,2018.パーキンソン病の薬物療法、運動療法、症状変動などを確認する基礎資料です。(日本神経学会)
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修.腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版.南江堂,2019.腰痛の評価、危険な症状、画像検査、薬物療法、運動療法などの根拠として使用できます。(Mindsガイドラインライブラリ)
- Osborne JA, Botkin R, Colon-Semenza C, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022;102(4):pzab302. パーキンソン病に対する筋力・バランス・歩行・柔軟性運動など、理学療法の推奨をまとめたガイドラインです。(PubMed)
- Buhmann C, Kassubek J, Jost WH. Management of Pain in Parkinson's Disease. Journal of Parkinson’s Disease. 2020;10(Suppl 1):S37-S48. パーキンソン病に伴う筋骨格系疼痛、ジストニア関連痛、オフ時の痛み、痛覚変化などを整理した総説です。(PubMed)
- Ozturk EA, Kocer BG. Predictive risk factors for chronic low back pain in Parkinson's disease. Clinical Neurology and Neurosurgery. 2018;164:190-195. パーキンソン病の慢性腰痛と、筋固縮・姿勢変化などとの関連を調べた研究です。(PubMed)





