パーキンソン病で足・ふくらはぎが痛い原因は?下肢の痛みと対処法

パーキンソン病の方から、「ふくらはぎが痛い」「足が張って歩きにくい」「太ももや足首まで痛くなる」といった相談を受けることがあります。
パーキンソン病では、筋肉がこわばる「筋固縮」によって足やふくらはぎに痛みを感じることがあります。しかし、下肢の痛みの原因はそれだけではありません。
足の指が曲がる、足が内側にねじれるなどの「ジストニア」、薬の効果が弱くなるOFF(オフ)時間、前かがみ姿勢や小刻み歩行による筋肉・関節への負担なども、足の痛みに関係することがあります。また、腰や膝などの整形外科疾患をはじめ、パーキンソン病とは別の原因が隠れている場合もあります。
そのため、「パーキンソン病だから足が痛い」と決めつけず、どこが痛むのか、いつ痛むのか、服薬との関係はあるのか、歩き方や姿勢に変化はないかを整理することが大切です。
この記事では理学療法士の視点から、パーキンソン病で足・ふくらはぎが痛くなる主な原因、痛みを見分けるポイント、自宅でできる対処法、医療機関へ相談したほうがよい症状についてわかりやすく解説します。
パーキンソン病で足・ふくらはぎが痛くなるのはなぜ?
パーキンソン病では、筋固縮やジストニア、姿勢・歩行の変化、OFF時間などが関係して、足やふくらはぎに痛みが生じることがあります。
一方、すべての痛みがパーキンソン病そのものによって起こるわけではありません。腰、膝、足部などの整形外科疾患や、神経・血管などの病気が原因となっている場合もあります。

パーキンソン病では「痛み」もみられる
パーキンソン病というと、ふるえ、動きにくさ、筋固縮などの運動症状が知られていますが、痛みも比較的よくみられる症状のひとつです。
パーキンソン病の痛みには、筋肉や関節に由来する筋骨格系の痛み、ジストニアに伴う痛み、神経に関連した痛みなど、さまざまなタイプがあります。なかでも筋骨格系の痛みは代表的なものとされています。
足・ふくらはぎの痛みは原因が1つとは限らない
足・ふくらはぎの痛みは、複数の要因が重なって生じていることがあります。
たとえば、筋固縮に加えて歩幅が小さくなっている、前かがみ姿勢になっている、活動量が減っているなど、いくつかの変化が重なることで特定の筋肉や関節へ負担が集中することがあります。
リハビリの視点でも、痛い場所だけを見るのではなく、姿勢・関節の動き・歩行・左右差・服薬による変化などを含めて考えることが重要です。
パーキンソン病で足・ふくらはぎが痛くなる主な原因

パーキンソン病で足やふくらはぎが痛くなる原因として、主に筋固縮、ジストニア、OFF時間、姿勢や歩行の変化、活動量の低下などが考えられます。
①筋固縮による筋肉のこわばり・張り
筋固縮は、足やふくらはぎに張りや痛みを感じる原因のひとつです。
筋固縮があると筋肉がこわばり、関節を滑らかに動かしにくくなります。その結果、ふくらはぎや太ももなどに「張っている」「重い」「動かしにくい」と感じることがあります。
さらに、動作が小さくなったり同じ姿勢が続いたりすると、一部の筋肉へ負担が集中する場合があります。パーキンソン病では筋固縮や動きの減少、姿勢の変化などが筋骨格系の痛みに関係すると考えられています。

②ジストニアによる足指や足首の痛み
足指が強く曲がる、親指が反り返る、足首が内側にねじれるといった痛みには、ジストニアが関係していることがあります。
ジストニアとは、自分の意思とは関係なく筋肉が持続的または反復的に収縮し、身体の一部がねじれたり不自然な姿勢になったりする症状です。
足に生じると、足指や足の裏、足首、ふくらはぎなどに「つるような痛み」「引っ張られるような痛み」を感じる場合があります。
③OFF時間に症状や痛みが強くなる
「薬が切れてくると足が痛くなる」という場合は、OFF時間との関連を確認することが大切です。
OFF時間とは、パーキンソン病治療薬の効果が弱くなり、動きにくさや筋固縮などの症状が再び強くなる時間帯です。
OFF時間には、運動症状だけでなく、筋肉のけいれん、ジストニア、痛みや不快感などがみられることがあります。

④前かがみ姿勢・歩行の変化による負担
姿勢や歩き方の変化によって、足やふくらはぎへの負担が増えることがあります。
パーキンソン病では、前かがみ姿勢、歩幅の減少、小刻み歩行などがみられることがあります。
こうした変化によって身体の重心や下肢の使い方が変わり、ふくらはぎや太もも、膝、足部など特定の場所へ負担が集中する場合があります。
理学療法士としては、痛む場所だけでなく、身体の傾き、重心、歩幅、足の着き方、左右差などを確認することが重要です。
⑤活動量低下による筋力低下・柔軟性低下
動く機会が少なくなることも、足の痛みに影響する要因のひとつです。
動きにくさや転倒への不安などから活動量が減ると、筋力や持久力が低下したり、筋肉や関節を十分に動かす機会が減ったりします。
その状態で急に長時間歩いたり外出したりすると、足やふくらはぎに疲労や痛みを感じることがあります。
⑥腰・膝・足など整形外科疾患による痛み
パーキンソン病の方でも、腰・膝・足などの整形外科疾患によって下肢に痛みが生じます。
腰椎の病気による神経症状、変形性膝関節症、足部や足首の問題などによって、太ももやふくらはぎ、足に痛みが広がることがあります。
特に、腰から足にかけて痛みやしびれがある、膝や足首そのものが痛いといった場合は、パーキンソン病だけではなく整形外科的な原因も考える必要があります。

⑦パーキンソン病以外の病気が原因の場合もある
足・ふくらはぎの痛みを、すべてパーキンソン病によるものと考えないことが重要です。
神経や血管の病気などでも足の痛みは起こります。
特に、片方のふくらはぎが急に腫れる、赤くなる、熱をもつ、急に強く痛むといった場合は、深部静脈血栓症(DVT)などを含め、パーキンソン病とは別の原因を確認する必要があります。
足・ふくらはぎの痛みの原因を見分けるポイント

パーキンソン病で足やふくらはぎが痛むときは、「どこが・いつ・どんなときに痛むのか」「薬との関係はあるのか」を整理してみましょう。
これだけで原因を自己判断することはできませんが、医師やリハビリ専門職へ症状を伝えるための重要な情報になります。
痛む場所を確認する
ふくらはぎ全体が張るのか、膝や足首が痛いのか、腰から足まで痛みやしびれが広がるのかなど、痛む場所を具体的に確認します。
左右どちらなのか、片方だけなのか、複数の場所に痛みがあるのかも記録しておくとよいでしょう。
痛みが出る時間帯を確認する
「朝起きたとき」「夕方」「夜間」など、痛みが出る時間帯を確認します。
毎日ほぼ同じ時間に痛みが現れる場合には、服薬や活動量との関係を考える手がかりになります。
薬を飲む前後で痛みが変わるか確認する
「次の薬を飲む前になると痛い」「薬が効いている時間帯は楽に感じる」など、服薬時間と痛みの変化を確認してみましょう。
OFF時間には痛みやジストニアが強くなることがあります。一定の傾向がある場合は記録して主治医に伝えることが重要です。
薬の量や服用時間を自己判断で変更することは避けてください。
歩行時と安静時のどちらで痛むか確認する
歩いているときに痛むのか、座ったり寝たりしていても痛むのかを確認します。
歩行時に痛みが強くなる場合は、姿勢や歩き方、筋肉・関節への負担などが関係している可能性があります。
足指や足首にねじれ・曲がりがないか確認する
痛みと一緒に、足指が強く曲がる、親指が反り返る、足首が内側にねじれるといった変化がないか確認します。
このような症状が繰り返される場合には、ジストニアとの関連も含めて主治医へ相談しましょう。
パーキンソン病の足・ふくらはぎの痛みへの対処法
足やふくらはぎが痛む場合は、原因を確認しながら、無理のない運動やストレッチ、姿勢・歩き方の見直しなどを行うことが基本です。
無理のない範囲で体を動かす
パーキンソン病では、身体機能を維持するために継続的な運動が推奨されています。2026年に更新されたParkinson’s FoundationとAmerican College of Sports Medicineの推奨でも、有酸素運動、筋力運動、バランス・敏捷性運動、ストレッチなどを組み合わせることが示されています。
ただし、痛みを我慢して運動する必要はありません。身体の状態に合わせて無理のない範囲で動くことが大切です。
ふくらはぎ・太もも・足首をストレッチする
筋肉のこわばりや柔軟性の低下がある場合は、ふくらはぎや太ももをゆっくり伸ばしたり、足首を動かしたりする方法があります。
ただし、ジストニア、神経に関連する痛み、整形外科疾患などでは対応が異なります。
「ふくらはぎが痛い=ストレッチをすればよい」とは限らないことを理解しておきましょう。
姿勢や歩き方を見直す
歩行時に痛みがある場合は、身体の傾き、歩幅、足の着き方、股関節や膝の動きなどを確認します。
パーキンソン病によるバランスや運動機能の問題に対しては、パーキンソン病に特化した理学療法が推奨されています。
長時間同じ姿勢を続けない
長時間座ったままなど同じ姿勢が続くと、身体を動かす機会が少なくなります。
体調に問題がなければ、ときどき立ち上がる、足首を動かす、短い距離を歩くなど、こまめに姿勢を変えることを意識しましょう。
痛みと服薬時間を記録する
痛みが出る時間、服薬した時間、痛む場所などを簡単に記録しておくと、OFF時間との関係を確認しやすくなります。
診察時には、単に「足が痛い」と伝えるだけでなく、「いつ痛むのか」まで伝えることが重要です。
リハビリで動き方や筋肉の状態を評価してもらう
足やふくらはぎの痛みが続く場合は、理学療法士などに身体を評価してもらうことも選択肢です。
理学療法では、筋固縮、関節の動く範囲、筋肉の柔軟性、筋力、姿勢、歩行、バランスなどを確認します。
ふくらはぎが痛い場合でも、原因がふくらはぎだけにあるとは限りません。
「痛い場所」だけを見るのではなく、「なぜその場所に負担がかかっているのか」を身体全体から考えることが大切です。
ふくらはぎが痛いときにできる簡単な運動・ストレッチ

筋肉の張りやこわばりがあり、強い痛みや腫れなどがない場合は、無理のない範囲で足首を動かしたり、ふくらはぎを伸ばしたりする方法があります。
座って行うふくらはぎのストレッチ
安定した椅子に座り、片方の足を前へ伸ばします。
膝を無理のない範囲で伸ばし、つま先をゆっくり自分の方向へ向けます。ふくらはぎが軽く伸びていると感じる範囲で行いましょう。
強く引っ張るのではなく、痛みのない範囲でゆっくり行うことがポイントです。
足首をゆっくり動かす運動
椅子に座って両足を床につけます。
かかとを床につけたままつま先を上げ、次に、つま先をつけたままかかとを上げます。
速さを求めず、一定のリズムで足首をゆっくり動かすことを意識しましょう。
立位で行うふくらはぎのストレッチ
壁や安定した台に手をつき、片方の足を一歩後ろへ引きます。
後ろ足のかかとを床につけたまま、前側の膝をゆっくり曲げると、後ろ側のふくらはぎが伸びます。
転倒を防ぐため、必ず壁や手すりなど安定したものにつかまって行いましょう。
運動するときの注意点
痛みを我慢して運動やストレッチを行わないことが大切です。
可能であれば、薬が効いて身体を動かしやすい時間帯を選びましょう。また、転倒の不安がある場合は、一人で無理に行わないようにしてください。
運動によって痛みが強くなる場合や、急な腫れ・赤み・熱感などがある場合は運動を中止し、医療機関へ相談しましょう。
足の痛みが続く場合は主治医・医療機関に相談する
足やふくらはぎの痛みが続く場合は、「パーキンソン病だから仕方がない」と考えず、主治医や医療機関へ相談することが大切です。
薬の効き目と痛みに関連がある場合
次の服薬前になると痛む、朝に痛みが強いなど、薬の効き方との関連がある場合は、服薬時間と症状を記録して主治医へ伝えましょう。
薬の量や服用時間を自己判断で変更しないようにしてください。
ジストニアが疑われる場合
痛みとともに、足指が強く曲がる、親指が反り返る、足首が内側にねじれるといった症状がある場合は、ジストニアとの関連を確認する必要があります。
いつ・どのような状態になるのか、服薬との関係があるのかを主治医へ伝えましょう。
痛みが急に強くなった場合
これまでとは違う強い痛みが突然現れた場合は、「いつものパーキンソン病の症状」と自己判断しないことが大切です。
転倒後から急に痛くなった、体重をかけられないなどの場合は骨折などの可能性もあるので、無理に運動せず医療機関へ相談しましょう。
腫れ・赤み・熱感などを伴う場合
片方のふくらはぎに急な痛みがあり、腫れ・赤み・熱感などを伴う場合は、早めに医療機関へ相談してください。
このような症状は深部静脈血栓症(DVT)などでもみられます。
さらに突然の息苦しさ、胸の痛み、血の混じった痰などがある場合は、肺塞栓症など緊急性の高い病気も考えられるため、速やかな医療対応が必要です。
歩けないほど痛みが強い場合
足をつくことができない、痛みで歩けないほど症状が強い場合は、無理に動かず医療機関へ相談しましょう。
転倒後、明らかな腫れや変形がある、強いしびれや力の入りにくさがあるといった場合も、早めの評価が必要です。
よくある質問|パーキンソン病と足・ふくらはぎの痛み
はい。筋固縮や姿勢・歩き方の変化などによって、ふくらはぎに張りやこわばりを感じることがあります。 ただし、ほかの原因が関係している場合もあります。
関係することがあります。筋肉のけいれんや、ジストニアが「足がつるような痛み」として感じられる場合があります。
早朝は薬の効果が弱くなっていることで、筋固縮やジストニアなどが強くなる場合があります。 特に毎朝同じような症状がある場合は、主治医へ伝えましょう。
はい。OFF時間には筋固縮やジストニア、痛みや不快感などが強くなることがあります。 痛みと服薬時間を記録しておくと役立ちます。
軽い筋肉の張りであれば、無理のない範囲のマッサージが心地よく感じられることがあります。ただし、急な腫れ・赤み・熱感・強い痛みがある場合はマッサージをせず、医療機関へ相談してください。
まとめ|足・ふくらはぎの痛みは原因を整理することが大切
パーキンソン病で足やふくらはぎが痛む原因には、筋固縮、ジストニア、OFF時間、姿勢や歩き方の変化、活動量の低下などがあります。一方で、腰や膝の病気、神経や血管の問題など、パーキンソン病以外の原因が関係している場合もあります。
大切なのは、「どこが・いつ・どんなときに痛むのか」「服薬との関係はあるのか」を整理することです。
無理のない運動やストレッチが役立つ場合もありますが、痛みが続く場合や、急な腫れ・赤み・熱感、歩けないほどの強い痛みがある場合は、自己判断せず主治医や医療機関へ相談しましょう。
参考文献・参考資料
- Tueth LE, Duncan RP. Musculoskeletal pain in Parkinson's disease: a narrative review. Neurodegenerative Disease Management. 2021;11(5):373-385.
- Parkinson’s Foundation. Managing “Off” Time in Parkinson’s.
- Parkinson’s Foundation / American College of Sports Medicine. Parkinson’s Disease Exercise Recommendations. Updated 2026.
- National Institute for Health and Care Excellence(NICE). Parkinson’s disease in adults: recommendations. NG71.
- University College London Hospitals NHS Foundation Trust. Deep vein thrombosis: symptoms and patient information.





