パーキンソン病の運動を家族はどう支える?声かけ・見守り・注意点

パーキンソン病の方が運動を継続するためには、ご本人の意欲だけでなく、ご家族の理解やサポートも大切です。
しかし、「運動を勧めてもなかなか取り組んでくれない」「どのように声をかければよいかわからない」「転倒が心配で、どこまで見守ればよいのか迷う」といった悩みを抱えるご家族も少なくありません。
パーキンソン病では、動作の緩慢さや筋肉のこわばり、バランス能力の低下などによって、日常生活の動作や運動が難しくなることがあります。また、疲労や意欲の低下、薬の効果による体調の変動なども、運動への取り組み方に影響します。
そのため、ご家族が一方的に運動を促したり、必要以上に手助けしたりすることが、必ずしもよい結果につながるとは限りません。
大切なのは、ご本人の意思を尊重しながら、安全に、無理なく運動を続けられる環境を整えることです。
この記事では、パーキンソン病の方の運動をご家族が支えるために知っておきたい、適切な声かけの方法、見守りと介助の考え方、転倒予防などの注意点について、理学療法の視点を交えながら解説します。
ご本人とご家族の双方が負担を感じすぎず、安心して運動に取り組むための参考にしてください。
1.パーキンソン病の運動に家族のサポートが大切な理由

パーキンソン病の方が運動を継続するためには、ご本人の努力だけでなく、ご家族の理解や適切なサポートも重要です。
特に、運動を始めることが難しい場合や、症状によって運動への不安がある場合には、ご家族の関わり方が運動への取り組みやすさに影響することがあります。
運動を継続することが難しくなる理由
パーキンソン病では、運動の必要性を理解していても、思うように体を動かせず、運動を継続することが難しくなる場合があります。
その背景には、運動症状だけでなく、意欲や気分、睡眠などに関わる非運動症状も影響しています。
特に、次のような要因が運動を続けるうえでの障壁となります。
- 動作緩慢(動きが遅くなる):運動を始めたり、体を大きく動かしたりすることが難しくなる。
- 筋固縮(筋肉のこわばり):体が硬く感じられ、動作に負担を感じやすくなる。
- 疲労感:疲れやすさによって、運動に取り組みにくくなる。
- アパシー(意欲の低下):運動の必要性を理解していても、自分から行動を始めることが難しくなる。
- 薬の効果による体調の変動:時間帯によって体の動かしやすさが変化することがある。
- 転倒への不安:ふらつきや歩行の不安定さから、運動を避けるようになる。
特に、アパシーは単なる怠けや努力不足ではなく、パーキンソン病に関連して生じる症状の一つです。
ご家族から見ると「運動をする気がない」「何度言っても動いてくれない」と感じられる場合でも、ご本人にとっては運動を始めること自体が難しくなっている可能性があります。
運動が続かない理由をご本人の意欲だけの問題と捉えず、症状や体調、生活環境などを含めて考えることが大切です。
家族の声かけや関わり方が運動習慣に与える影響
パーキンソン病の方が運動を続けるうえで、ご家族の声かけや日常的な関わり方は重要な役割を担います。
例えば、一人では運動を始めるきっかけがつかみにくい方でも、ご家族から「今日は少し体を動かしてみる?」と声をかけられることで、運動に取り組みやすくなる場合があります。
また、散歩や体操を一緒に行うことは、運動を日常生活に取り入れるきっかけにもなります。
2024年に発表されたパーキンソン病の方、家族、理学療法士を対象とした質的研究では、家族の支援や本人の希望に合った運動内容が、運動の継続に関わる重要な要素として挙げられています。
一方で、ご家族の考える運動目標とご本人の希望が一致しない場合には、支援が負担につながる可能性も指摘されています。
そのため、家族のサポートでは、一方的に励ますのではなく、ご本人の性格や希望、その日の体調に合わせた関わり方を考えることが重要です。
大切なのは「やらせること」ではなく「本人の意思を支えること」
パーキンソン病の運動を支える際に、ご家族が意識したいのは、運動を強制するのではなく、ご本人が主体的に取り組めるようにすることです。
リハビリでは、ご本人が何をできるようになりたいのか、どのような生活を送りたいのかという目標を大切にします。
例えば、「歩く力を維持したい」「家族と買い物に行きたい」「自分で身の回りのことを続けたい」など、日常生活に結びつく目標があると、運動に取り組む目的も明確になります。
ご家族は、その目標を共有しながら、必要なときに声をかけたり、一緒に運動したりすることで、ご本人の取り組みを支えることができます。
ご家族の役割は、運動を管理することではなく、ご本人の意思を尊重しながら、安心して運動を続けられる環境を整えることです。
2.パーキンソン病の方への適切な声かけとは?
パーキンソン病の方への声かけでは、言葉の内容だけでなく、伝えるタイミングや言い方にも配慮が必要です。
特に、動作が遅くなったり、運動を始めることが難しくなったりしている場合には、焦らせず、ご本人のペースに合わせた声かけを心がけましょう。
運動への意欲を引き出す声かけのポイント
運動を勧める際には、「運動しなければならない」と感じさせるよりも、ご本人が自分の意思で取り組めるようにすることが大切です。
例えば、「運動してください」と一方的に伝えるのではなく、「今日は少し体を動かしてみませんか?」「座ったままできる体操から始めてみましょうか?」と、選択できる形で声をかける方法があります。
また、運動への負担を軽くするために、最初から大きな目標を設定しないことも重要です。
「30分運動しましょう」と伝えるよりも、「まずは椅子に座って、腕をゆっくり動かしてみましょう」と具体的な動作を提案するほうが、取り組みやすい場合があります。
運動を行った後には、成果だけでなく、取り組もうとしたことや、実際にできたことを共有するとよいでしょう。
例えば、「今日は自分から体操を始められましたね」「昨日と同じように続けられましたね」といった声かけが考えられます。
ただし、励まし方の好みは人によって異なります。ご本人がどのような言葉をかけられると取り組みやすいのか、普段から確認しておくことも大切です。
避けたい声かけ・プレッシャーになりやすい言葉
パーキンソン病の方に対して、運動の必要性を強く伝えすぎることは、かえって心理的な負担につながる場合があります。
特に、動きにくさや疲労、意欲の低下がある方に対して、努力不足を指摘するような言葉は避けたいところです。
ご家族が日常生活で使いやすい声かけの例を、次の表にまとめました。
| 避けたい声かけ | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「どうして運動しないの?」 | 「今日は体を動かすのがつらいですか?」 |
| 「もっと頑張らないとダメだよ」 | 「無理のない範囲で、少しずつやってみましょうか」 |
| 「早く動いて!」 | 「急がなくて大丈夫ですよ」 |
| 「昨日はできたのに、なぜ今日はできないの?」 | 「今日は少し動きにくそうですね」 |
| 「運動しないと、どんどん悪くなるよ」 | 「できる運動を一緒に考えてみませんか?」 |
パーキンソン病では、同じ運動でも、日によって取り組みやすさが異なることがあります。
そのため、昨日できた運動が今日できなかったとしても、必ずしも本人の努力不足とは限りません。
大切なのは、できなかったことを指摘するよりも、できない理由を一緒に考えることです。
動作が遅いときや体が動きにくいときの声かけ
パーキンソン病では、動作緩慢や、すくみ足によって、歩き始めや方向転換などが難しくなることがあります。
このような症状がある場合、単に「早く歩いて」「足を動かして」と声をかけても、思うように動けないことがあります。
リハビリでは、動きを始めるきっかけとして、外部からの合図を利用する「キューイング(Cueing)」という方法が用いられます。
例えば、歩き始めるときに「1、2、3」と数を数えたり、一定のリズムに合わせたりすることで、足を踏み出しやすくなる方がいます。
また、「少し大きく一歩を踏み出しましょう」など、具体的な動作を短い言葉で伝える方法もあります。
ただし、声かけによる効果には個人差があり、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。
特に、すくみ足が生じているときには、無理に歩かせようとするのではなく、まず動作を止め、安全を確認することが重要です。
ご家族が焦って体を引っ張ったり、背中を押したりすると、バランスを崩して転倒する危険があります。
動きにくいときほど、急がせず、一度に多くの指示を出さないことが大切です。
すくみ足を繰り返す方や転倒の危険が高い方は、理学療法士などに相談し、ご本人に適した声かけや動作方法を確認しておきましょう。
運動を嫌がる・やりたがらないときの対応方法
パーキンソン病の方が運動を嫌がったり、勧めても取り組もうとしなかったりすることがあります。
このような場合には、無理に運動を始めさせるのではなく、まずは運動をしたくない理由を確認することが大切です。
例えば、体の痛みや疲労がある場合、転倒への不安を感じている場合、薬の効果が弱く動きにくい場合など、さまざまな理由が考えられます。
ご家族は、「今日は体がつらいですか?」「どんな運動ならできそうですか?」と、ご本人の状態や希望を確認するとよいでしょう。
運動への負担が大きい場合には、本人の同意と安全を前提に、座ったままできる運動に変更したり、短時間の運動から始めたりすることも選択肢になります。
一方で、運動を嫌がる状態が長く続く場合や、以前は楽しんでいた活動にも関心を示さなくなった場合には、アパシーや抑うつなどが関係している可能性もあります。
そのような場合には、主治医などに相談し、背景にある原因を確認することが大切です。
運動をしない日があっても、ご本人を責める必要はありません。
その日の体調や気持ちに合わせて、長い目で取り組める方法を一緒に考えていきましょう。
3.家族はどこまで見守る?運動中の適切なサポート
パーキンソン病の方が自宅で運動を行う際、ご家族が「どこまで手伝えばよいのか」「一人で運動させても大丈夫なのか」と迷うことがあります。
大切なのは、ご本人の身体機能や転倒リスクに合わせて、見守り・声かけ・介助を適切に使い分けることです。
本人ができる動作はなるべく見守る
パーキンソン病の方が運動を行う際には、安全を確保できる範囲で、ご本人が自分の力で体を動かすことを大切にします。
例えば、椅子に座って腕を上げる、体をゆっくりひねる、足を持ち上げるといった運動は、姿勢が安定していて安全に実施できる場合には、必ずしも家族が体を支える必要はありません。
また、動作緩慢によって運動に時間がかかる場合でも、動作が遅いからといってすぐに手助けするのではなく、ご本人が動作を完了できるかを確認することが大切です。
理学療法では、身体機能の維持や日常生活動作の自立を目指すために、ご本人が主体的に体を動かす機会を重視します。
ただし、「自分でできること」と「安全にできること」は必ずしも同じではありません。
以前は問題なく行えていた運動でも、ふらつきや体調の変化によって転倒の危険が高まることがあります。
ご家族は、できるだけ本人に任せながらも、安全面に不安がある場合には無理をさせず、適切な支援を行いましょう。
介助が必要な場面と見守りでよい場面の違い
パーキンソン病の方への運動支援では、ご本人の動作能力に応じて、見守りや介助の程度を調整する必要があります。
一般的には、次のような考え方が参考になります。
| 状況 | 家族のサポート方法 |
|---|---|
| 安全に一人で運動できる | 本人のペースに任せ、必要に応じて見守る |
| 動作に時間がかかるが安全に行える | 急がせず、必要に応じて声をかける |
| ふらつきがある | 運動を中断し、安全を確認する |
| 立ち上がりや歩行に身体的な支えが必要 | 専門職に確認した方法で介助する |
| 転倒を繰り返している・立位保持が難しい | 家族だけで立位運動を行わず、専門職の評価を受ける |
※上記は一般的な目安です。必要な介助の程度は、症状や身体機能、運動内容によって異なります。
特に注意したいのが、立ち上がりや方向転換、歩行を伴う運動です。
パーキンソン病では、体の向きを変える際や歩き始めにバランスを崩すことがあり、ご本人が「大丈夫」と感じていても転倒する可能性があります。
理学療法士は、姿勢の安定性や立ち上がり能力、歩行状態などを評価し、必要な介助方法を検討します。
ご家族だけで介助の必要性を判断することが難しい場合には、専門職に相談し、適切な支援方法を確認しておきましょう。
転倒の危険がある運動での見守り方
パーキンソン病では、姿勢反射障害(バランスを崩した際に姿勢を立て直しにくくなる症状)などによって、転倒の危険が高まることがあります。
特に、立った状態で重心を前後左右に移動させる運動や、片足立ち、歩行を伴う運動では注意が必要です。
ご家族は、体が大きく傾く、足が出にくくなる、ふらつきが強くなるなどの変化に注意しましょう。
転倒リスクがある方では、ご家族が近くにいるだけで必ず転倒を防げるとは限りません。
また、バランスが崩れそうになったときに、慌てて腕を引っ張ったり、体を強く支えようとしたりすると、かえって転倒につながる可能性があります。
立位や歩行に介助が必要な場合には、理学療法士などから安全な介助方法を教わっておくことが大切です。
転倒の危険が高い運動については、無理に自宅で行わず、専門職の指導や適切な見守りのもとで実施しましょう。
過剰な介助が本人の活動機会を減らす可能性
ご家族が転倒やけがを心配するあまり、必要以上に手伝ってしまうことがあります。
しかし、ご本人が安全にできる動作まで家族が代わりに行ってしまうと、日常生活の中で体を動かす機会が少なくなる可能性があります。
例えば、時間をかければ自分で椅子から立ち上がれる方に対して、毎回家族が体を引き上げてしまうと、ご本人が立ち上がる動作を行う機会が減ってしまいます。
リハビリでは、運動の時間だけでなく、立ち上がりや歩行、着替えなど、日常生活で体を動かすことも重要な活動機会として捉えます。
ただし、安全を確保するために必要な介助を減らすことが望ましいわけではありません。
必要なところは手伝い、安全にできるところは本人に任せるという柔軟な関わり方が大切です。
4.家族が知っておきたい運動中の注意点

パーキンソン病の方が自宅で安全に運動するためには、その日の体調や薬の効果、周囲の環境などを確認する必要があります。
運動を継続することは重要ですが、体調が悪いときや転倒の危険が高いときに、無理をして行う必要はありません。
薬の効果や体調によって運動しやすい時間帯が異なる
パーキンソン病では、薬の効果によって体の動かしやすさが変化することがあります。
特に、レボドパなどの薬を服用している方では、薬が効いて症状が比較的落ち着いている「オン(ON)」の時間帯と、薬の効果が弱まり動きにくくなる「オフ(OFF)」の時間帯がみられる場合があります。
オフの時間帯には、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、歩き始めに足が出にくくなるなどの症状が強まることがあります。
そのため、立位での運動や歩行練習などは、薬の効果が安定し、体を動かしやすい時間帯に行うと、安全に取り組みやすい場合があります。
ただし、オンの時間帯であっても、不随意運動(ジスキネジア)や立ちくらみなどが生じることがあり、必ずしも安全とは限りません。
ご家族は、薬を服用してからの時間や、ふらつき、疲労、眠気などの変化を確認するとよいでしょう。
また、運動しやすい時間帯を記録し、主治医や理学療法士と共有することも役立ちます。
なお、運動する時間に合わせて、ご自身の判断で薬の服用量や服用時間を変更しないようにしてください。
すくみ足・ふらつき・姿勢の崩れに注意する
パーキンソン病では、すくみ足や姿勢反射障害などによって、運動中にバランスを崩しやすくなることがあります。
すくみ足とは、歩こうとしても足が床に張り付いたように感じられ、一時的に足を踏み出せなくなる症状です。
特に、歩き始めや方向転換、狭い場所を通るときなどに生じやすいことが知られています。
また、歩幅が小さくなり、歩行中に徐々にスピードが速くなって止まりにくくなる場合や、体が前方・左右に大きく傾く場合にも注意が必要です。
すくみ足が生じた際には、まず動作を止め、安全な姿勢を確保することが大切です。
姿勢が安定していれば、数を数える、一定のリズムに合わせるなど、ご本人が普段から練習している方法を試すことが考えられます。
また、立ち上がった直後のめまいや立ちくらみには、起立性低血圧が関係している可能性もあります。
起立性低血圧とは、座った状態や寝た状態から立ち上がった際に血圧が低下し、めまいや立ちくらみなどが生じる状態です。
すくみ足やふらつきが繰り返しみられる場合には、運動方法を見直し、主治医や理学療法士などに相談することが重要です。
運動前に確認したい自宅の環境と転倒リスク
パーキンソン病の方が自宅で運動する際には、運動を行う場所の安全性を確認することが大切です。
自宅は普段から生活している慣れた環境ですが、床に置かれた物や段差、滑りやすいマットなどが転倒の原因になる場合があります。
運動を始める前には、次の項目を確認しましょう。
自宅で運動する前の安全チェック
- 床にコードや荷物など、つまずきやすい物が置かれていないか
- マットやカーペットが滑ったり、めくれたりしないか
- 運動する場所に十分な明るさがあるか
- 椅子や手すりなど、必要な支持物が安定しているか
- 滑りやすい靴下や、脱げやすい履物を使用していないか
- 運動に必要なスペースが確保されているか
- 転倒リスクに応じて、必要な見守りや介助を確保できているか
特に、椅子を使って運動する場合には、キャスターのない安定した椅子を選びましょう。
また、椅子の背もたれは必ずしも体重を支えるために設計されているわけではありません。立位で体を支える必要がある場合には、固定された手すりなど、十分な安定性のある支持物を使用することが重要です。
ご本人の身体機能に合った運動環境を整えることが、安全に運動を続けるための基本です。
痛み・めまい・強い疲労など、運動を中止すべきサイン
パーキンソン病の方が運動を行う際には、体調の変化に注意し、必要に応じて運動を中止することが大切です。
特に、普段とは異なる痛みやめまい、強い疲労などがみられる場合には、無理に運動を続けないようにしましょう。
| 症状 | 対応の目安 |
|---|---|
| 普段と異なる強い痛み | 運動を中止し、症状に応じて医療機関に相談する |
| めまい・立ちくらみ | すぐに中止し、安全に座るか横になる |
| 強い疲労・脱力感 | 運動を中止して休息し、改善しない場合は医療機関に相談する |
| 強いふらつき・転倒しそうな状態 | 運動を中止し、安全を確保する |
| 発熱・明らかな体調不良 | 運動を控え、必要に応じて医療機関に相談する |
| 胸の痛み・突然の強い息苦しさ・意識障害 | 直ちに中止し、119番通報など緊急対応を行う |
※上記は一般的な目安であり、症状の程度や持病によって必要な対応は異なります。
理学療法では、運動中の症状だけでなく、運動後の疲労の残り方や翌日の体調なども確認しながら、運動量や負荷を調整します。
また、パーキンソン病の方に生じる痛みやめまいが、すべて病気そのものによるものとは限りません。
運動を中止した後も症状が改善しない場合や、普段と異なる症状が繰り返される場合には、主治医などに相談してください。
運動を続けること以上に、ご本人の安全を確保することが優先されます。
5.家族と一緒に運動を続けるための工夫
パーキンソン病の方にとって、運動を継続することは、身体機能や日常生活の活動を維持するうえで重要です。
しかし、毎日決まった時間に運動することが難しかったり、体調の変化によって予定どおりに取り組めなかったりすることもあります。
そのような場合には、運動を特別なものとして考えるのではなく、日常生活の中に無理なく取り入れる工夫が役立ちます。
日常生活の中に短時間の運動を取り入れる
パーキンソン病の方が運動を習慣にするためには、最初から長時間の運動を目標にするのではなく、短時間の運動から始めることも一つの方法です。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- 朝食後に、椅子に座って腕や足をゆっくり動かす
- テレビを見る前に、数分間のストレッチを行う
- 体調のよい時間帯に、家族と短い距離を散歩する
- 普段の生活の中で、安全にできる家事や身の回りの動作を続ける
こうした活動は、特別な運動器具を必要とせず、日常生活に取り入れやすいという特徴があります。
リハビリでは、短時間の活動から始め、身体機能や疲労の程度に応じて、徐々に運動量や難易度を調整することがあります。
ただし、数分間の運動だけで必要な運動量が満たされるとは限りません。
体力や身体機能に合わせて、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動、ストレッチなどを組み合わせることも大切です。
まずは取り組みやすい運動から始め、無理なく続けられる習慣をつくることを意識しましょう。
AXIS-PDでは、ご自宅で気軽に行える運動動画を無料で提供しています。AXIS-PD運動動画ライブラリを是非ご活用ください。
家族も一緒に体を動かす
パーキンソン病の方が運動を続けるためには、ご家族が声をかけるだけでなく、一緒に体を動かすことも支援方法の一つです。
一人で運動することに抵抗がある方でも、家族と一緒であれば、運動に取り組みやすくなる場合があります。
例えば、家族と散歩をする、椅子に座って一緒に体操をする、音楽に合わせて無理のない範囲で体を動かすなど、ご本人が楽しめる活動を選ぶことが考えられます。
また、一緒に運動することで、ご家族がご本人の体調や動きの変化に気づくきっかけにもなります。
ただし、ご本人と家族が必ずしも同じ回数や速さで運動する必要はありません。
それぞれの体力や身体機能に合わせ、無理のない方法を選ぶことが大切です。
また、一人で運動することを好む方の場合には、その意思を尊重することも必要です。
家族が一緒に運動する目的は、本人を頑張らせることではなく、安心して体を動かせる時間を共有することです。
小さな目標を設定し、できたことを共有する
パーキンソン病の方が運動を継続するためには、ご本人に合った目標を設定することも大切です。
運動の目標が高すぎると、達成できなかったときに負担や焦りを感じる場合があります。
そのため、最初は日常生活の中で達成できそうな、小さく具体的な目標から考えるとよいでしょう。
例えば、「毎日30分歩く」という目標が負担になる場合には、「体調のよい日に、家族と5分程度散歩する」といった目標に調整することが考えられます。
米国理学療法士協会の診療ガイドラインでも、身体活動を促すための方法として、目標設定や行動計画、フィードバックなどを含む行動変容へのアプローチが推奨されています。
ご家族は、運動を行った日をカレンダーに記録したり、できたことを一緒に振り返ったりするとよいでしょう。
ただし、運動の成果を歩行距離や回数などの数字だけで判断する必要はありません。
「自分から運動を始められた」「体調に合わせて運動を調整できた」「疲れたときに無理をせず休めた」といったことも、大切な取り組みです。
目標は家族が一方的に決めるのではなく、ご本人と相談しながら設定することが重要です。
運動を義務にせず、楽しめる環境をつくる
パーキンソン病の方が長く運動を続けるためには、運動の必要性だけでなく、ご本人が楽しめるかどうかも大切な要素です。
「毎日運動しなければならない」と考えることが、かえって心理的な負担につながる場合もあります。
そのため、ご家族は運動を義務として管理するのではなく、ご本人の趣味や興味に合わせた活動を一緒に考えるとよいでしょう。
例えば、散歩が好きな方であれば、季節の花を見に行くことを目的に歩く方法があります。
音楽が好きな方であれば、好きな曲に合わせて座ったまま体を動かすことも考えられます。
また、家族との買い物や外出など、日常生活の楽しみと体を動かす機会を組み合わせることも一つの方法です。
ただし、歩行中に音楽へ注意を向けたり、複数の動作を同時に行ったりすることが、すべての方に安全とは限りません。バランスが不安定な方やすくみ足がある方では、活動内容を慎重に選ぶ必要があります。
リハビリでは、運動そのものを目的とするだけでなく、「どのような生活を続けたいのか」という本人の希望を重視します。
運動を継続するために大切なのは、毎日完璧に行うことではなく、ご本人が無理なく続けられる方法を見つけることです。
6.家族だけで抱え込まないことも大切
パーキンソン病の方が運動を続けるためには、ご家族のサポートが大切ですが、すべてを家族だけで支える必要はありません。
運動を勧めてもご本人が取り組もうとしなかったり、安全な介助方法がわからなかったりするなど、ご家族が対応に悩む場面もあります。
そのような場合には、主治医や理学療法士、介護支援専門員(ケアマネジャー)などに相談し、必要な支援を受けることが大切です。
本人と家族で運動への考え方が異なるとき
パーキンソン病の方とご家族では、運動に対する考え方や目標が異なることがあります。
例えば、ご家族は「歩けなくならないように、もっと運動してほしい」と考えていても、ご本人は「疲れるので、あまり運動したくない」と感じている場合があります。
また、ご本人が自分のペースで運動したいと思っていても、ご家族が運動の回数や時間を管理しすぎることで、意見が合わなくなることもあります。
2024年の質的研究では、本人と家族、理学療法士の運動に対する目標や考え方が一致しないことが、運動への取り組みに影響する場合があると報告されています。
リハビリの視点では、運動の回数や時間を増やすことだけでなく、ご本人がどのような生活を送りたいのかを確認し、その目標に合わせて運動内容を考えることが重要です。
本人と家族だけで意見をまとめることが難しい場合には、理学療法士などの専門職に相談し、第三者の立場から運動の目的や方法を一緒に整理してもらうことも一つの方法です。
ご本人の意思と安全性を大切にしながら、双方が納得できる方法を探していきましょう。もしこのようなお悩みがあるのであれば、お気軽にAXISまでお問い合わせください。無料相談を随時実施しています。
運動方法や介助に迷ったら専門職に相談する
パーキンソン病では、症状や身体機能に個人差があるため、すべての方に同じ運動方法や介助方法が適しているわけではありません。
特に、転倒を繰り返している方や、すくみ足が強い方、立ち上がりや歩行に介助が必要な方では、専門職による評価や指導が重要です。
ご家族が運動や介助について悩んだときには、次のような専門職に相談することが考えられます。
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 主治医・神経内科医 | 症状の変化、薬の効果、運動時の体調について |
| 理学療法士 | 運動方法、歩行・バランス、転倒予防、身体的な介助方法について |
| 作業療法士 | 着替えや入浴などの日常生活動作、生活環境の調整について |
| 看護師・訪問看護師 | 日常の体調管理、症状の変化、療養生活の不安について |
| ケアマネジャー | 介護保険サービスの利用や、家族の介護負担を軽減する方法について |
※利用できる専門職やサービスは、医療機関、介護保険の認定状況、地域によって異なります。
また、自宅での生活や介護に関する相談は、地域包括支援センターや難病相談支援センターなどでも受け付けています。
理学療法士に相談する際には、普段の運動内容だけでなく、「どのような場面でふらつくのか」「家族がどの動作を手伝っているのか」「運動後に疲れが残っていないか」などを伝えると、具体的な支援方法を検討しやすくなります。
ご家族だけで判断が難しい場合には、無理に運動を続けさせず、専門職の評価や助言を受けることが大切です。
家族自身の負担を増やしすぎないために
パーキンソン病の方を支えるご家族は、日常生活の介助や通院の付き添い、服薬の確認、運動の見守りなど、さまざまな役割を担うことがあります。
また、ご本人の運動を支えたいという思いが強いほど、「もっと運動させなければならない」「自分が見守らなければ運動できない」と、責任を感じてしまうこともあります。
しかし、ご家族が無理を続けることで、身体的な疲労や精神的なストレスが蓄積する可能性があります。
ご家族自身の負担を減らすためには、ほかの家族と役割を分担したり、訪問リハビリテーションや通所サービスなど、利用可能な支援を検討したりすることも大切です。
また、安全に一人でできる運動はご本人に任せ、必要な場面でサポートすることも考えられます。
ただし、転倒リスクが高い場合には、専門職の評価に基づいた見守りや介助が必要です。
ご家族自身に強い疲労や不眠、気分の落ち込みなどが続いている場合には、ご自身の医療機関への相談も考えましょう。
パーキンソン病の運動を支えることは、ご家族だけの責任ではありません。
必要な支援を専門職や周囲の人と分担し、ご家族自身も無理なく関わり続けられる環境を整えていきましょう。
7.まとめ|家族の役割は運動を強制することではなく、安心して続けられる環境をつくること
パーキンソン病の方が運動を継続するためには、ご本人の意思を尊重しながら、ご家族が適切にサポートすることが大切です。
特に、次のポイントを意識しましょう。
- 本人の意思を尊重する:運動を強制せず、体調や気持ちに合わせた声かけを心がける。
- 見守りと介助を使い分ける:安全を確保しながら、本人ができる動作はなるべく自分で行ってもらう。
- 転倒や体調の変化に注意する:薬の効果や症状の変動を考慮し、無理のない運動を選ぶ。
- 運動を生活習慣に取り入れる:短時間の運動や家族との活動を通じて、楽しみながら続けられる工夫をする。
- 家族だけで抱え込まない:運動方法や介助に迷ったときは、主治医や理学療法士などの専門職に相談する。
ご家族の役割は、運動を無理に続けさせることではなく、ご本人が安心して、自分のペースで取り組める環境を整えることです。
ご本人とご家族の双方が負担を感じすぎず、必要に応じて専門職の支援を受けながら、長く運動を続けられる方法を見つけていきましょう。
参考文献・参考資料
- Osborne JA, et al.(2022)
Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association.
Physical Therapy, 102(4), pzab302.
https://doi.org/10.1093/ptj/pzab302 - National Institute for Health and Care Excellence(NICE)(2017)
Parkinson's Disease in Adults: Diagnosis and Management. NICE Guideline NG71.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng71 - Ahern L, et al.(2024)
“Exercise… to Me, It's Freedom”: Motivation, Support, and Self-Management to Keep Physically Active with Parkinson's Disease: A Qualitative Study.
Geriatrics, 9(4), 92.
https://doi.org/10.3390/geriatrics9040092 - Parkinson's Foundation
Fall Prevention in Parkinson's.
https://www.parkinson.org/library/fact-sheets/fall-prevention - Parkinson's Foundation
Care Partner Guide.
https://www.parkinson.org/library/books/care-partner-guide





