若年性パーキンソン病とは?初期症状・原因・進行・寿命・仕事への影響を解説

「まだ若いのに、パーキンソン病になることがあるの?」「若年性パーキンソン病と診断されたら、この先の仕事や生活はどうなるのだろう」と不安を感じる方もいるかもしれません。
パーキンソン病は高齢者に多い病気として知られていますが、比較的若い年代で発症することもあり、一般に若年性パーキンソン病と呼ばれます。若い年代での発症では、症状そのものだけでなく、仕事や子育て、将来の生活、病気の進行や寿命など、長期的な不安を抱えやすいことも特徴です。
一方で、若年性パーキンソン病であっても、薬物治療や運動・リハビリを取り入れながら、仕事や日常生活を続けている方は少なくありません。
大切なのは、病気を必要以上に恐れるのではなく、症状や特徴を正しく知り、早い段階から自分に合った治療や身体づくりに取り組んでいくことです。
この記事では、若年性パーキンソン病とはどのような病気なのか、初期症状や原因、進行、寿命、仕事への影響、治療やリハビリについて、できるだけわかりやすく解説します。
ご本人はもちろん、ご家族が今後の生活を考える際にも参考にしていただければと思います。
若年性パーキンソン病とは?
若い年代で発症するパーキンソン病
若年性パーキンソン病とは、一般的なパーキンソン病よりも若い年代で発症するパーキンソン病です。
パーキンソン病では、脳の黒質にあるドパミンをつくる神経細胞が減少し、動作が遅くなる「動作緩慢」、筋肉のこわばり、手足の震えなどの症状が現れます。
年齢が高くなるほど発症しやすい病気ですが、20代、30代、40歳前後など若い年代で発症する方もいます。
若年性だからまったく別の病気というわけではなく、基本的な症状や診断の考え方は通常のパーキンソン病と共通しています。
一方、若い年代では仕事や子育て、家庭生活などを続けている方も多いため、病気そのものだけでなく、これからの長い生活をどう組み立てていくかという視点はとても重要になります。
一般的には40歳以下での発症を若年性と呼ぶ
日本の難病情報センターでは、40歳以下で発症するパーキンソン病を若年性パーキンソン病としています。
ただし、若年性パーキンソン病の年齢について、世界共通の明確な境界が決められているわけではありません。
海外では「50歳未満で発症したパーキンソン病」をYoung-Onset Parkinson's Disease(YOPD)として扱う場合もあります。
そのため、40代で症状が現れたからといって「若年性ではないのでパーキンソン病ではない」と判断することはできません。
高齢で発症するパーキンソン病との違い
若年性パーキンソン病でも、動作緩慢、振戦、筋固縮などの基本的な運動症状は共通しています。
一方、若年発症では、集団としてみると運動症状の進行が比較的ゆるやかで、認知機能が保たれる期間が長い傾向が報告されています。
その反面、病気と付き合う期間や薬物治療を受ける期間が長くなるため、ジスキネジアやウェアリングオフなどの運動合併症が問題になりやすい傾向があります。
ただし、これはあくまで全体としての傾向です。
「若年性なら必ずゆっくり進行する」という意味ではなく、症状や進行速度には大きな個人差があります。
若年性パーキンソン病はどのくらい珍しい?
若年性パーキンソン病は、パーキンソン病全体の中では少数です。
そのため、20代や30代で手の震えや身体の動かしにくさを感じても、
「この年齢でパーキンソン病になるはずがない」
と考えてしまうことがあります。
ただし、若い年代でも発症する可能性はあります。
一方で、震えや身体のこわばりがあるだけでパーキンソン病と決まるわけでもありません。気になる症状が続いている場合には、自己判断せず専門医による評価を受けることが重要です。
若年性パーキンソン病の初期症状

若年性パーキンソン病の初期症状は、基本的には一般的なパーキンソン病と共通しています。
代表的なのは、手足の震え、動作の遅さ・小ささ、筋肉のこわばり、歩き方や腕振りの左右差などです。
また、疲れやすさ、睡眠の問題、便秘、気分の変化など、身体の動き以外の「非運動症状」がみられることもあります。
手足の震え
パーキンソン病の代表的な症状の一つが振戦(しんせん)です。
初期には左右どちらか一方の手や足から現れることが多く、手を膝の上に置いているときなど、力を抜いている状態でみられる「安静時振戦」が特徴的です。
例えば、
- 座っていると片方の手が震える
- 歩いているときに手が震える
- 緊張や疲労で震えが目立つ
などの変化がみられることがあります。
ただし、パーキンソン病だから必ず震えが出るわけではなく、震えには本態性振戦などほかの原因もあります。

動作が遅くなる・動きが小さくなる
動作緩慢は、パーキンソン病の診断でも重要となる代表的な運動症状です。
単に動くスピードが遅くなるだけでなく、繰り返し動いているうちに動作が小さくなったり、細かな動作が行いにくくなったりすることがあります。
日常生活では、
- ボタンを留めるのに時間がかかる
- パソコンやスマートフォンの操作が遅くなった
- 文字がだんだん小さくなる
- 歯磨きや着替えに時間がかかる
- 片方の手を使う作業がぎこちない
などの変化として気づくことがあります。

筋肉のこわばり
パーキンソン病では、筋強剛(筋固縮)と呼ばれる筋肉の緊張の高まりがみられることがあります。
本人の感覚としては、
- 肩や首がこる
- 片側の腕が動かしにくい
- 身体が硬くなった感じがする
- 腕や脚が重く感じる
などとして現れる場合があります。
若い方の肩こりや身体の硬さの多くがパーキンソン病によるものではありません。
ただし、左右差を伴うこわばりや動作の遅さなど、複数の変化が続いている場合には注意が必要です。

歩き方や腕振りの左右差
パーキンソン病では、初期に身体の左右どちらか一方に強く症状が現れることがあります。
歩行では、
- 片方の腕だけ振りが小さい
- 左右で歩幅が違う
- 片方の足が出にくい
- 以前より歩くスピードが遅い
といった変化がみられる場合があります。
理学療法士が歩行を評価するときには、単に「歩けるかどうか」だけではなく、腕振り、歩幅、足の運び、体幹の動き、左右差、方向転換なども確認します。
疲れやすさや睡眠など運動以外の症状
パーキンソン病では、震えや動作の遅さだけでなく、さまざまな非運動症状がみられることがあります。
例えば、
- 疲れやすい
- 睡眠の質が低下する
- 便秘
- 嗅覚の低下
- 立ちくらみ
- 気分が落ち込む
- 不安を感じやすくなる
などです。
こうした症状の一部は運動症状より前から現れることもあります。
ただし、疲労や不眠、便秘だけで若年性パーキンソン病と判断することはできません。

若い年代では気づかれにくいこともある
若い年代では、「疲れているだけ」「肩や腰の問題だろう」と考え、パーキンソン病に結びつかないことがあります。
また、パーキンソン病は高齢者の病気というイメージが強いため、診断までに時間がかかるケースもあります。
片側の手足だけ動かしにくい、腕振りが減った、安静時の震えが続く、細かな作業が明らかに遅くなったなどの変化が持続している場合には、年齢だけを理由に可能性を否定せず、脳神経内科へ相談することが大切です。
若年性パーキンソン病の原因
パーキンソン病では脳内のドパミンが減少する
パーキンソン病では、脳の中脳にある黒質という部分のドパミン神経細胞が徐々に減少します。
ドパミンは身体をスムーズに動かすために重要な神経伝達物質です。
ドパミンが減少すると、動作緩慢、筋固縮、振戦などの運動症状につながります。
ただし、ドパミンが減ることは病気の仕組みであり、それ自体が発症原因というわけではありません。

若年性でも原因を一つに特定できないことが多い
「若くして発症したのは何か原因があったのではないか」と考える方もいるでしょう。
しかし、若年性パーキンソン病でも、一人ひとりの発症原因を一つに特定できないケースは少なくありません。
現在では、遺伝的な要因や環境要因など、複数の要素が複雑に関係して発症すると考えられています。
そのため、「生活の仕方が悪かったから発症した」と単純に考えることはできません。
遺伝的な要因が関係することがある
若年発症では、高齢で発症する場合と比べて、遺伝的要因が関係する割合が高い傾向があります。
パーキンソン病との関連が知られている遺伝子には、PRKN、PINK1、LRRK2、SNCAなどがあります。
ただし、遺伝子の変化が見つかったからといって、すべてのケースで同じように発症するわけではありません。
家族にパーキンソン病がいると必ず発症するわけではない
家族にパーキンソン病の方がいる場合でも、本人や子どもが必ず発症するわけではありません。
パーキンソン病の多くは、単純な遺伝形式だけでは説明できません。
若い年代での発症や家族内に複数の患者がいる場合などには、必要に応じて遺伝について詳しく検討されることがあります。
若年性パーキンソン病は遺伝する?

結論からいうと、若年性パーキンソン病のすべてが遺伝するわけではありません。
一方で、若年発症では一部に遺伝子が深く関係するケースがあります。
一部では遺伝子変異との関連が知られている
若年発症ではPRKNやPINK1など、一部の遺伝子との関連が知られています。
ただし、
「パーキンソン病に関連する遺伝子を持っている」=「必ず発症する」
とは限りません。
遺伝子によって遺伝形式や発症しやすさは異なり、将来の発症年齢や症状の程度まで正確に予測できるわけではありません。
家族歴がなくても発症することはある
家族にパーキンソン病の方がいなくても、若年性パーキンソン病を発症することはあります。
また、遺伝形式によっては両親に症状がなくても、子どもに病気が現れる場合があります。
そのため、家族歴がないことだけで遺伝的要因を否定することはできません。
遺伝子検査が検討される場合もある
非常に若い年代で発症した場合や、家族内に複数のパーキンソン病患者がいる場合などには、遺伝子検査が検討されることがあります。
ただし、遺伝子検査はパーキンソン病を診断するために全員が受ける一般的な検査ではありません。
検査によって分かることと分からないことがあり、結果が本人だけでなく家族にも関係する可能性があります。
遺伝について心配な場合は専門医へ相談する
「子どもにも遺伝するのか」「兄弟姉妹も検査した方がよいのか」などについては、一人ひとりの家族歴や遺伝形式によって答えが異なります。
心配がある場合には、主治医や脳神経内科医に相談し、必要に応じて臨床遺伝専門医や遺伝カウンセリングにつないでもらうことが大切です。
若年性パーキンソン病はどのように診断される?
若年性パーキンソン病も、一つの血液検査や画像検査だけで診断する病気ではありません。
症状や経過、神経学的な診察、必要に応じた検査を組み合わせて総合的に判断します。
症状や経過をもとに診断する
診断では、手足の震え、動作の遅さ、筋肉のこわばり、歩き方の変化などを確認します。
特に動作緩慢はパーキンソン病の診断で重要な症状です。
症状が片側から始まったか、徐々に進行しているか、レボドパなどの治療に反応するかといった経過も重要な手がかりになります。
神経学的な診察を行う
脳神経内科では、
- 指や手を繰り返し動かす
- 筋肉のこわばりを確認する
- 震えを確認する
- 立ち上がりや姿勢を見る
- 歩幅や腕振りを確認する
などの診察を行います。
パーキンソン病では、こうした病歴の確認と神経学的診察が診断の中心となります。
MRIやDATスキャンなどが行われることもある
必要に応じて、頭部MRIやDAT SPECT(ダットスキャン)などが行われることがあります。
MRIはパーキンソン病そのものを直接診断する検査というより、似た症状を起こすほかの病気を調べるために使用されます。
DATスキャンでは、脳内のドパミン神経機能の低下を評価できます。
ただし、DATスキャンで異常があるだけでパーキンソン病と確定できるわけではありません。
似た症状を起こす病気との区別も重要
若い年代で震えや動作の遅さがある場合には、
- 本態性振戦
- ジストニア
- 薬剤性パーキンソニズム
- ウィルソン病
- その他のパーキンソン症候群
などとの区別が必要になることがあります。
「若くて震えている=若年性パーキンソン病」とは限らないため、専門的な評価が重要です。
若い年代で気になる症状が続く場合は脳神経内科へ
片側の手足の震えや動かしにくさ、腕振りの減少、身体のこわばりなどが続く場合には、脳神経内科(神経内科)への相談を検討してください。
若年性パーキンソン病はどのように進行する?
若年性パーキンソン病と診断されると、「急速に悪くなるのではないか」と不安になる方もいるでしょう。
しかし、発症年齢だけから将来の状態を正確に予測することはできません。
症状の進み方には個人差がある
パーキンソン病は進行性の病気ですが、すべての方が同じ速さ、同じ順番で進むわけではありません。
初期には身体の片側を中心に症状が現れ、経過とともに反対側にも広がることがあります。
その後、歩行やバランス、日常生活動作などにも変化が現れる場合がありますが、その時期や程度には個人差があります。
若年性では長期間病気と付き合うことになる
若い年代で発症するため、若年性では結果として病気と付き合う期間が長くなりやすくなります。
そのため、現在の症状を改善するだけでなく、将来に向けて身体機能や活動量を維持していく視点が重要です。
若年発症だから急速に悪化するとは限らない
若年発症だから病気が重く、急速に悪化するとは限りません。
研究では、高齢発症と比べて運動症状の進行が比較的ゆるやかな傾向も報告されています。
ただし、「若年性なら進行しない」という意味ではありません。
必要以上に将来を悲観することも、反対に症状を放置することも避け、定期的に状態を確認していくことが重要です。
長期経過では運動合併症にも注意が必要
若年性では長期間の治療経過の中で、
- ウェアリングオフ
- オン・オフによる変動
- ジスキネジア
- ジストニア
などが問題となる場合があります。
若い年齢での発症は、ジスキネジアや運動症状の日内変動が生じやすい要因の一つとされています。
ただし、これは「レボドパを使わない方がよい」という意味ではありません。
症状や生活への影響に応じて、主治医と治療を調整していくことが大切です。

若年性パーキンソン病の寿命は短くなる?
結論として、若年性パーキンソン病だから寿命が極端に短くなるとは限りません。
一方で、パーキンソン病が長期的な健康状態に影響する可能性はあるため、「一般の人とまったく変わらない」と一律にいうこともできません。
若年性だから寿命が極端に短いとは限らない
若年性では、診断後に20年、30年と病気と付き合う可能性があります。
そのため、「若くして発症した=すぐに命に関わる」と考える必要はありません。
寿命は発症年齢だけでは決まらない
生命予後には、
- 症状の進行
- 認知機能
- 転倒
- 嚥下機能
- 自律神経症状
- ほかの病気
など、さまざまな要因が関係します。
「若年性パーキンソン病ならあと何年生きられる」と一律に示すことはできません。
症状・合併症・生活習慣などさまざまな要因が影響する
病気が進行すると、転倒・骨折や嚥下障害、誤嚥性肺炎などが健康状態に影響する場合があります。
ただし、これらが診断後すぐに起こるという意味ではありません。
その時々の症状に応じて、治療やリハビリ、生活環境を調整していくことが大切です。
長期的に身体機能を維持していくことが大切
運動によって寿命が延びるとまでは断定できません。
一方、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習などは、身体機能や生活の質を維持・改善するために推奨されています。
若年性では寿命という数字だけを見るのではなく、これからの長い時間をどう生活していくかという視点も大切です。
若年性パーキンソン病の治療
若年性パーキンソン病の治療は、薬物療法を中心に、必要に応じて手術療法や運動・リハビリを組み合わせて行います。
現時点ではパーキンソン病そのものを完全に治す治療は確立していませんが、適切な治療によって症状を軽減し、仕事や日常生活を続けやすくすることは可能です。
薬物療法が治療の中心となる
主に使用される薬には、
- レボドパ
- ドパミンアゴニスト
- MAO-B阻害薬
- COMT阻害薬
- アマンタジン
などがあります。
どの薬を使用するかは、年齢だけではなく、症状の程度、仕事や生活への影響、副作用のリスクなどを踏まえて判断します。
レボドパなどの薬が使用される
レボドパは、パーキンソン病の運動症状に対して最も効果の高い薬の一つです。
以前は若い方ではレボドパをできるだけ遅く開始する考え方もありましたが、現在は年齢だけを理由に必要な治療を先延ばしにする考え方は一般的ではありません。
症状や生活への影響を踏まえて治療方法を選択します。
若年性では長期的な治療計画が重要
若年性では治療期間が長くなりやすいため、その時点の症状だけでなく、長期的な治療計画が重要です。
薬の効果や副作用、仕事・生活への影響を確認しながら、必要に応じて治療内容を調整します。
DBSなどの治療が検討される場合もある
薬物療法を続けてもウェアリングオフやジスキネジア、震えなどのコントロールが難しくなった場合には、DBS(脳深部刺激療法)が検討されることがあります。
ただしDBSは、パーキンソン病を治したり、進行そのものを止めたりする治療ではありません。
薬への反応や認知機能、精神症状、生活上の目標などを含めて適応を判断します。
治療内容は症状や生活に合わせて調整する
若年性では、
「夕方になると仕事がつらい」
「薬が切れると通勤時に歩きにくい」
「仕事中のジスキネジアが気になる」
など、生活に即した情報を主治医に伝えることが大切です。
治療の目的は診察室で症状を抑えることだけではなく、仕事、家庭、趣味を含めた自分の生活をできるだけ続けられるようにすることです。
若年性パーキンソン病でも仕事は続けられる?

パーキンソン病と診断されたからといって、すぐに仕事を辞める必要があるわけではありません。
症状や仕事内容、薬の効き方、職場環境によっては、診断後も仕事を続けることができます。
症状があっても仕事を続けている方はいる
症状が軽い時期には、治療を受けながらこれまでと同じ仕事を続けられる方もいます。
また、勤務時間や仕事内容を調整しながら就労を継続する方法もあります。
症状や職種によって必要な工夫は異なる
デスクワークでは手指の操作や長時間の姿勢、身体を使う仕事では疲労、歩行、バランスなどが問題になる場合があります。
リハビリでは、筋力だけでなく、通勤、立ち座り、階段、長時間の立位、物を運ぶ動作など、実際の仕事で必要な身体機能を確認することがとても重要です。実際のリハビリ場面でも、
薬が効きやすい時間帯を活用する
病気の経過に伴ってオンとオフが現れる場合には、
- 動きやすい時間帯に重要な業務を行う
- オフになりやすい時間を把握する
- 適切に休憩を取る
などの工夫が役立つことがあります。
薬の効き方や仕事で困る時間帯を主治医に伝えることも大切です。
職場環境や働き方を調整する
症状に応じて、
- 勤務時間の調整
- 休憩時間の確保
- 在宅勤務
- 身体的負担の大きい業務の調整
- 作業環境の工夫
などを検討できます。
「働ける・働けない」の二択ではなく、どうすれば現在の能力を生かしながら仕事を続けられるかを考えることが重要です。
一人で抱え込まず専門職や制度を利用する
主治医だけでなく、理学療法士・作業療法士、医療ソーシャルワーカー、産業医、人事担当者などに相談する方法があります。
難病相談支援センター、ハローワークの難病患者就職サポーター、地域障害者職業センターなどの支援もあります。
若年性パーキンソン病では運動・リハビリも重要

若年性パーキンソン病では、薬物療法とともに運動やリハビリを早い段階から生活に取り入れることが重要です。
運動で病気そのものを治したり、進行を確実に止めたりできるとは現時点では言えません。
一方、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習などは、身体機能や移動能力、生活の質の維持・改善に役立つことが示されています。
症状が軽いうちから運動を始める意味
リハビリは「できなくなってから始めるもの」だけではありません。
症状が軽い段階から、
- 歩行や腕振りの左右差
- 歩幅や歩行速度
- 柔軟性
- 筋力
- 体力
- バランス
- 日常の身体活動量
などを確認しておくことで、その後の変化にも気づきやすくなります。
若年性では、今できている身体機能をできるだけ長く維持するために取り組むという考え方が重要です。
筋力・体力・柔軟性を維持する
動きにくさから身体活動量が低下すると、筋力や体力が二次的に低下することがあります。
そのため、
- ウォーキングや自転車などの有酸素運動
- 筋力トレーニング
- ストレッチや柔軟性運動
などを組み合わせることが大切です。
運動量や強度は、症状、体力、運動経験、ほかの病気などに合わせて調整します。できる限り、ウォーキングやゴルフなどの趣味は継続することをAXIS-PDでは推奨しています。


バランスや歩行能力を維持する
リハビリでは、
- 大きな歩幅で歩く
- 方向転換
- 前後・左右へのステップ
- バランス練習
- リズムや目印を使った歩行
- 二重課題練習
などを能力に合わせて取り入れることがあります。
パーキンソン病に対する理学療法では、バランス練習、歩行練習、外部キューを利用した練習などが推奨されています。
仕事や日常生活に必要な動作を保つ
若年性では、「歩けるか」だけでなく、何を続けたいのかを考えることが重要です。
例えば、
- 電車で通勤する
- 長時間パソコンを使う
- 階段を使う
- 子どもと外出する
- 趣味やスポーツを続ける
など、必要な動作は一人ひとり異なります。
リハビリでは、実際の生活で必要となる動作を評価し、その動作を練習することも重要です。
長く続けられる運動習慣をつくることが大切
若年性では、数週間だけ運動を頑張るよりも、何年という単位で身体を動かし続けられる習慣をつくることが重要です。
ウォーキング、自転車、筋力トレーニング、ピラティス、ヨガ、太極拳、ダンス、水泳など、自分が楽しみながら続けられる運動を選ぶ方法もあります。
理学療法士として大切だと考えるのは、症状が悪くなったときだけ運動するのではなく、運動を日常生活の一部にしていくことです。
若年性パーキンソン病と長く付き合うために
若年性では、病気だけでなく、仕事、家庭、趣味、身体づくりまで含めて長期的に生活を考えることが大切です。
病気だけを生活の中心にしすぎない
病気について正しく知ることは重要ですが、生活のすべてをパーキンソン病中心に変える必要はありません。
仕事、家族との時間、友人、趣味など、それまで大切にしてきた生活を可能な範囲で続けることも大切です。
自分の症状や体調の変化を知る
薬が効きやすい時間帯、動きにくくなる時間、疲労や睡眠との関係などを知っておくと、治療や生活を調整する手がかりになります。
毎日の小さな変化を過度に気にするのではなく、以前の自分と比べて何が変化しているかを定期的に確認するとよいでしょう。
運動を生活の一部にする
運動を一時的な治療ではなく、生活習慣として続けていくことが重要です。
無理のない範囲で、自分が楽しめて継続できる方法を見つけていきましょう。
家族や周囲と今後について話し合う
診断直後から何十年先まで決める必要はありません。
まずは、
- 今困っていること
- 仕事をどう続けたいか
- どこまで手伝ってほしいか
- 今後も続けたいこと
などを少しずつ家族と共有していくことが大切です。
必要に応じて医療・リハビリ・制度を活用する
脳神経内科、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、難病相談支援センター、就労支援など、利用できる専門職や制度があります。
すべてを自分や家族だけで抱え込む必要はありません。AXIS-PDでも無料相談窓口を準備しています。もし、運動やリハビリのことを聞きたいということであれば、いつでも遠慮なくお問い合わせください。
よくある質問
日本では一般に、40歳以下で発症するパーキンソン病を若年性パーキンソン病と呼びます。海外では50歳未満を若年発症とする場合もあります。
現時点では、パーキンソン病そのものを完全に治す治療は確立していません。ただし、薬物療法や運動・リハビリによって症状を改善し、仕事や日常生活を続けやすくすることは可能です。
すべてが遺伝するわけではありません。ただし、若年発症では一部に遺伝子が関係するケースがあります。必要に応じて遺伝子検査や遺伝カウンセリングが検討されます。
診断されたからといって、すぐに寝たきりになるわけではありません。症状の進み方には個人差があり、若年発症では比較的ゆっくり進行する傾向も報告されています。
仕事を続けている方もいます。症状や仕事内容に応じて、勤務時間、仕事内容、休憩、在宅勤務などを調整し、自分に合った働き方を考えることが大切です。
まとめ
若い年代でもパーキンソン病を発症することがある
パーキンソン病は高齢者に多い病気ですが、20代・30代・40歳前後など若い年代で発症することもあります。気になる症状が続く場合には、年齢だけで可能性を否定せず、脳神経内科へ相談することが大切です。
初期症状や進行には個人差がある
震え、動作の遅さ、筋肉のこわばり、歩き方の左右差などがみられることがありますが、症状の現れ方や進行速度は一人ひとり異なります。若年性だから急速に悪化するとは限りません。
若年性では仕事や家庭を含めた長期的な視点が重要
若年性パーキンソン病では、病気と付き合う期間が長くなりやすいため、治療だけでなく、仕事、家庭、趣味、将来の生活まで含めて考えていくことが重要です。
治療とともに早期から運動・リハビリを取り入れることが大切
薬物療法に加えて、症状が軽い段階から運動・リハビリを取り入れ、筋力、体力、柔軟性、バランス、歩行能力を維持していくことが大切です。
今できていることをできるだけ長く続けるために、無理なく継続できる身体づくりを早い段階から始めていきましょう。
参考文献・参考資料
- 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/169 - Parkinson's Foundation「Young-Onset Parkinson's」
https://www.parkinson.org/understanding-parkinsons/what-is-parkinsons/young-onset-parkinsons - Morris H, Lim SY. Monogenic Parkinson Disease Overview. GeneReviews®.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1223/ - Pringsheim T, et al. Dopaminergic Therapy for Motor Symptoms in Early Parkinson Disease Practice Guideline Summary. Neurology. 2021.
https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000012868 - Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Physical Therapy. 2022.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9046970/




